225. 掲示板の助言
“もう帰りたい”
――仕事が納まらなかった千聖
『掲示板2』を見るとレスが増えていた。千聖が弱いと選択肢が限られるのだが、未だにその解決策は見えていない。
「まだ解決してないよっと。パラメータが8才の女の子だから【縮地】を使っても今一なんだよ。【発光】はフラッシュみたいに使えば逃げるときにはいいかも?」
少しずつではあるが、『掲示板2』のレスも増えてきた。色々なアドバイスを貰えるようになると千聖もひとりで考えているよりは良い方法が見つかりやすい。
【発光】メソッドと【聖別】メソッドを合わせれば対吸血鬼戦ではどんなに人数が多くても対処できるだろう。
『上書き』との補完関係にあるスキルなのだと改めて思った。
男爵との話し合いはシモンに任せて、千聖はドラゴンたちとの連絡を取る方法を考える。チユに渡したブレスレットは別のドラゴンに渡ったと思われるが、そのログから得られた情報でドラゴンの何体かはヴァルハー神国へ来ることが分かっている。
吸血鬼をリストアップした方法を使えば、人間形態になったドラゴンも見つかることだろう。
早速、書き換えを行い、ドラゴンが引っ掛かるのを待つ。センサーの座標と合わせれば、大体どこら辺に居るのかわかるはずだ。
「そう言えば……」
ドラゴンが何処を調べるか、簡単に予測できるではないか。ドラゴンたちは狙撃を繰り返していたのだから、街のどの辺に吸血鬼がいるのかを知っているのだ。
「よく考えたらヤバくないかな」
吸血鬼の根城である神殿の近くにある孤児院にはドラゴンの天敵である『チェンジリング(巨人)』のヨゼフがいる。巨人族は歴史的にドラゴンから狙われている。吸血鬼が居なくともヨゼフが神殿に居たら狙われる可能性は高いだろう。
焦りが次第に早足にしていく。
金木犀商会は街の西の端。神殿は東の端だ。道は整備されてはいるが、真っ直ぐに延びているわけではない。必然に遠回りを強いられることになる。千聖は『空飛ぶ靴』を使うことで騒ぎになるのを避けたかった。
身に付けている雪狐のコートに【光学迷彩】メソッドを実装していく。周囲の風景に同化する光学迷彩装置だ。とは言っても完全に透明になれるわけではなく、下から見上げれば空や雲の模様に見える映像を写すだけだ。反対に上から見下ろせば街並みに見える映像を投影する。
【縮地】メソッドを使い速度をあげて神殿へ急ぐ。この時間だと神殿の読書室で本を読んでいるかもしれない。いや、吸血鬼を警戒しているのだから、それはないか。
走りながら考えると、どうも大事なことを見落としてしまう気がした。ヨゼフが居そうな所は3ヶ所しかないのだから、全部調べればいい。幸いにもまだ東地区でドラゴンは見つかっていなかった。
神殿、銭湯と回ったがヨゼフはおらず、孤児院に来た。入り口には人型のトカゲ、二人がプレートメイルを身につけて立っていた。すわドラゴンかと思ったが【種族】タグを確認すると『リザードマン』と書かれていた。リザードマンなんて、雪が降るような高原国にいる種族ではない。
「こんにちは~」
…千聖は心の中で「私はここの子」と呟きながら入っていく。リザードマンたちは軽く頭を下げただけでなにもしないようだ。足早にその場を去る。
「なに、ギヨームの手先?」
リザードマンなら下位吸血鬼ともいい勝負になるかもしれない。あくまでも寒くなければだが。寒いと爬虫類であるリザードマンは動きが鈍る。冬の高原国では本来の力を出すことは難しいだろう。
「あ、千聖。お帰りなさい。お客様が来てるわよ」
入り口を何度も振り替えって確認する千聖にマリアが声をかける。お客様用のカップにお茶を入れてきたようだ。焼き菓子もお盆の上に乗っている。
「お客様?」
「なんでも千聖の知り合いだとか」
高原国で千聖をたずねてくるような心当たりはチユしかいない。急いで応接室に向かうと、そこにもリザードマンがドアを守るようにふたり立っていた。
「こ、こんにちは」
声をかけるとやはり軽く会釈するだけで、なにもしないようだ。
ドアをノックし、中へ入る。マリアも千聖の後ろから入った。
椅子に腰かけて足をブラブラさせているのは間違いなくチユだった。
「チユ!」
「千聖! 久しぶりなのじゃ!」
ふたりの少女はお互いに歩みより抱き締めあった。
「心配したよ~。ブレスレットから何の連絡もないし……」
「悪かったのじゃ。あれは偉い人に取り上げられてしまってな。さあ、千聖。ここに来るまでの話を聞かせるのじゃ」
「チユこそ、今何しているか教えてよね?」
並んで椅子に座る。マリアはお茶と焼き菓子をふたりの前に置くと「ごゆっくり」と言いながら出ていった。ふたりの様子を見て気を使ってくれたのだろう。
千聖は逸る気持ちを抑え、ここに至るまでの状況と、デザルト王国の現状を簡単に伝える。
「そうか。良かったのじゃ。父上も兄さまも」
「チユはどうしてたの?」
タカマノ帝国に連れ去られた後、下位龍が生け捕りにされていることを知り、ゼクスの助けを借りて下位龍を助け出した。そのまま、龍の住んでいる山脈の上へ逃げて今に至ると言うことだった。ゼクスに対する命令書は偽装だったようでゼクスは物凄い落ち込んだと言う。
「ゼクスも来ているの?」
「置いてきたのじゃ。ここには眷族たちと来た」
眷族と言っているのは、表にいたリザードマンたちのことだろう。
「目的は? 吸血鬼?」
千聖は本題を切り出した。ここからはドラゴンを味方につけることが出来るかどうかが決まる。チユも千聖も今の立場は異なる。昔のように仲良しだけではうまくいかない。ドラゴンにも利益がないと交渉は進まないだろう。
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■対話型掲示板連動告知
>千聖の閲覧範囲
千聖が掲示板を閲覧している時間は決まった範囲があります。範囲時間外の投稿は閲覧していません。
また作者の投稿も閲覧していません。
閲覧時間:
2018年12月19日 10:00~2018年12月29日 23:59
対象掲示板:
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1171390/blogkey/2187628/
>千聖の投稿
千聖の投稿は作者が代行します。以下の書式で投稿された発言は千聖が発言したものとして扱ってください。
【サブタイトル】は千聖が今ストーリーのどこにいるかを表しています。
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書式例)
千聖「(発言内容)」【サブタイトル】
投稿例)
千聖「今、異世界にいるんだが、何か聞きたいことある?」【207. 義妹の消息を追って見たら】
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ただし、文章そのものや名前は出しません。
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以下の書式に沿わない作者の投稿は、作者自身の投稿です。
書式例)
モブ「(発言内容)」
>読者の制限
上記ルール以外はありません。
■用語解説
>光学迷彩装置<
ヘッドフォンのノイズキャンセラーと同じ理論で実現できる透明化装置。理論は簡単だが実現はかなり困難。イイダコのような擬態化の仕組みは凄いと思う。
>プレートメイル<
鎖帷子に金属板を取り付けた鎧。少々重いが防御力が高いためタンクに最適な装備。筋力が高いドワーフやリザードマンなんかが使うと、とても効果的である。




