第十一話之二「新学期」
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学校に着いた。
「やあやあ浅川さん。今日も元気いっぱいバッチグーですなぁ」
「……せっかく忘れてたのに、不自然すぎて、思い出しちゃった」
……。
部活の時間になった。
「昨日はすみませんでした」
「いや、気にしてないから、大丈夫だよ」
そういいながらもいつもとは態度が違う。気まずいよ、誰か助けて。
「あ、そなんだ、よかった。お、お茶でも、飲みま――」
「おりべっちはさ」
「はい」
「前の学校でも、あんな感じで、誰かと付き合ってたの」
「え、いや、俺は――」
「付き合えるなら、誰でもいいの」
「いや、いやいや、浅川さ――」
「聞きたくない」
……め、めんどくせえ~~~!!
なんだよ、自分から色々聞いておいて、聞きたくないとはどういうことだ。
……こんな扱いされてちゃあ、温厚な俺も怒るぞ。俺はイライラを受け止める便利な壺じゃあないんだ。
猛犬だ。狼だ。百獣の王だ! 気安く言葉の槍を投げつけてきた報いだ、受けてみろ。
「あ、浅川さん? か、勘違いしてるかもしれないんだけど、今までかかか彼女とかできたことないし、告白なんかもしたことないんだよね、ナハハ」
「……え」
「それに、誰だっていいなんて思ってないよ。昨日のは、浅川さん相手だから言ってみただけで」
「! ……そ、それって、つまり」
「ま、それくらいの冗談も言い合える仲かなって!」
「…………冗談」
「そう、冗談、あは、あはは」
「……はあ。なんかアホらしくなっちゃった」
今回の選択肢選びはうまくいったようだ。さっきよりは、浅川さんの硬さも溶けてきたように見える。
やっぱり、百戦錬磨の織部だぜ。伊達にアニメやゲームをしてないってことね。
「文化祭まであと一月だよ。そろそろ本格的に行かなきゃだめだね」
「おう、任せてくれ」
何も進んでないがな。ただ、構想はまとまってる。あとは文字に起こすだけ。
「今度は、ちゃんと聞かせてね」
「ん? 何を?」
「ん、なんでもない♪」
相変わらずよく分からないが、浅川さんが元気になったので、結果オーライとしよう。
文化祭まで一月。気合い入れていくぜ。




