第九話之七「合宿するの?」
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「……えっ!? おりべっち!?」
おりべっちの頭がおかしくなったと思ったら、今度は急に気絶してしまった。何……? ほんとに……。
おりべっちのデリカシーの無い発言や、さっきまでのトイレでの出来事なんて、全部どこかに飛んで行ってしまうくらいのおりべっちの奇行に、私の脳は、思考を諦めてしまった。
……もう、寝ようかな、うん。そうだ、現実逃避しよう。今日の出来事は、全部夢だったんだ。こういう時は、ぐっすり寝て全部忘れるのが一番良いよね。
「……おやすみ、おりべっち。今日はよく分からなかったけど、色々ありがとう。お弁当、美味しかったよ」
おりべっちが用意してきた寝袋に、試行錯誤しつつも、どうにかおりべっちを潜り込ませることができた。……疲れた顔。今日は、自分のことばっかり考えてたけど、おりべっちの負担も、すごい大きかったんだね。最後のは本当によく分からなかったけど、一つだけ、私のことを守ろうとしてくれたことだけは、何となく分かったよ。
「ありがとね、おりべっち」
「……玲奈、可愛いぞ」
……えっ? おりべっち、起きてたの? というか、えええっ……!
「玲奈……」
「はっ……はい!」
「……ムニャ」
はい、お決まりの寝言パターンですかい。……ま、でも、可愛いって、うん。うひひ……。
その後も、時折、おりべっちは私の名前を呼んだ。それが気になって、私は一睡もできませんでしたね(後日談)。
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朝。俺が起きると、浅川さんは既に起きていた。
昨日何があったのか、いまいち思い出せない。どこからが現実で、どこからが夢なのか、酷くぼんやりしている。
時計を見ると、既に十時を回っていて、外からは、部活動に勤しむ運動部の声が響いていた。もう、俺達が外に出ても、特に怪しまれることはない時間帯。西校舎の鍵も、既に開けられているだろう。
「……帰るか」
「うん、そだね」
外は、太陽の日差しがカンカンに降り注がれ、よくもまあこんな中で運動部は、走ったりできるなと感心する。俺は外に出て十秒もしないうちに、さっさと家に帰ってアイスを食べたくなったというのに。
「……合宿、どうだった、浅川さん」
「んー……。まあ、もう十分かな」
だよね。俺ももういいや。まさかあんな……、あれ、なんだったっけ。
そうこう言ってる間に、いつもの分かれ道に到着した。
「じゃあまたね、浅川さん」
「はい、またね~」
『つギはニガサなイかラナ』
「ん?なんて?」
「ん?またねって」
「……あ、そう。うん、気を付けてね」
「うん。ばいばい~」
思った以上に、色々あったような気がする校内合宿。学んだこと、浅川さんの下着が可愛くなったということだけ。ま、たまにはこんな日もいいでしょ!




