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十七章 トーリア 201 ポレルの直感

・・・七・・・


 カイデンを囲んで一同は今日の宴会の余韻を楽しんでいた。カイデンはデュユングに頼んで作ってもらった軽い食事をとっていた。宴会の間中招待客の相手をしていて、並んだ食べ物に手がつけられなかった。若者達は町の娘に囲まれて大満足な時間を過ごし、いかに多くの娘達に囲まれたかを自慢しあった。中でもキトは飛び抜けて人気があった。知らない間に服のポケットには娘達の手紙が数多く入っていた。

「キト、お前達は楽しんだようだが、カイデン様と私はお客の相手ばかしで、食べる間もなかったぞ」

 コレディノカがからかうようにキト達に話し掛けた。カイデンの傍で、招待客の持って来た贈り物の仕分けに没頭していた。コレディノカ自身にも言寄って来そうな娘もいたが、ピピの顔を思い浮かべ、笑顔さえ見せなかった。コレディノカを好ましく思っていた娘達も最後にはあきらめ、その分キト達がいい思いをしたわけだった。

「ねえ、サイノス。あなたはどうしていたの?」

 ポレルは自慢し合うキト達に対抗するつもりではなかったが、サイノスの行動が心配・・・いや、興味があって様子を聞いた。誰かが返事をする前にサイノスは、

「ポレル、俺はキト達のような娘達への接し方はできなくて、席に戻って誰も手をつけない御馳走を食べまくっていた。食べている男のところには娘も近寄ってこないよ」

 サイノスは無難に説明したが、酔っ払っていたキトはポレルに全く違う話を始めた。

「ポレル、サイノスの話は半分本当で、半分は嘘だ。確かにサイノスは途中から俺達から離れ、豚のように食べ物を流し込んでいた。俺達は呆れ、サイノスに注目することもなかった。ところがいつの間にか娘を横に座らせて話し込んでいた。なあ・・・みんな」

「そうだ、そうだ」

「あの場面を思い出すと・・・眠れないよ、今日は・・・」

「美しい光景と言っていいのか悪いのか・・・なあ・・・」

 キトの話につられて仲間達が口を開いた。サイノスは無関心な様子だったキト達にしっかり見られていたのに驚いたが、敢えて話を止めさせようとはしなかった。トーリアのことを隠す気持ちはなかった。

「キト、それでサイノスはどうしたの?」

 ポレルは話に興味を持った。サイノスの性格を知っているだけに、見知らぬ娘に対してはちゃんとした理由がなければ横に座らせないと思った。男女関係においてはサイノスが口に出して言う大雑把な言葉は、照れ隠しが理由であり、本当は臆病であるのを知っていた。いざとなると、弱々しいと見られているバーブルの方が大胆になると思っていた。

「サイノスの横に座った娘は・・・サイノス、殴るなよ・・・よし、今頷いたな。約束だぞ・・・その娘は、デュユング母さんと同じ様に立派な、病気もしそうにもない体つきだった。俺はてっきりデュユング母さんがサイノスと話していると思ったほど似ていた。それで俺が様子を見ていると、実に楽しそうに話しているんだ」

「そうなの・・・で、その後は・・・」

 キトはその後の光景を話し続けた。キトの話の中でポレルが驚いたのは、トーリアの母親を抱きしめたことだった。これはキト以外の者も大勢見ており、隠しようもない事柄だった。美しい夫人を抱きしめたサイノスが耳打ちしたのを、夫人の耳に口づけをしたと見ていた者がほとんどだった。

「サイノス、あなたを嫌いにさせないで」

 ポレルも形のいい眉をひそめた。サイノスはポレルへの言い訳もあったが、皆にトーリアの母親が突然見せた抱擁の理由を説明してやった。勿論母親が自分を抱きしめさせて相手の心を知る話は伏せて、戦いで消息不明になった息子に似ている理由の方だった。ポレルの顔は明るくなったが、まだ何か納得いかないのかサイノスの目を覗き込んだ。

「どんな人?可愛い人?」

 キト達は現場を見ていたから、ポレルの質問にすぐに答えられた。話し相手はデュユングそっくりの太目の娘だったが、抱きしめた母親は細身の美しい女性であると皆が口々に言った。デュユングはキト達から格好の話題にされてむくれていたが、ポレルはキト達のようにデュユングそっくりな体型を思い浮かべないで、むしろ内に秘められた心の強さ、優しさを考えていた。

・・・サイノスが肩に力を入れないで自然に話せる娘は、きっと素適な娘だわ。もうサイノスが冗談でも私に求婚しないわ・・・

 サイノスの恋心を素直に祝う気持ちと、少し寂しい気持ちが同居していた。純真な幼馴染の恋心を、見知らぬ娘に奪われて僅かではあるが、悔しい思いを感じていた。娘心とは実に難しいものなのである。


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