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十六章 ピピ物語 193 朝になって

・・・五・・・


 朝になった。コレディノカはベッドの中で目を覚ました。テーブルをみると小さな卵がぽつんと置いてあった。目を開けショルタの天井を見ながら、コレディノカは昨夜のことを思い出していた。ピピが自分と同じ大きさに感じられ、ベッドの中でピピに教えられるままに裸で愛しあったことが夢のようだった。

・・・そうだ。早くピピをヘドロバ様のところに返さなくては。別れはつらいけど、ピピにはまた会うこともできるんだ・・・

 コレディノカはピピの卵に合図を送ると、蓋を開けようと卵を持ち上げた。小さく回しながら、今度は違った意味で緊張していた。愛した時のピピの顔を見ることがなかったが、今朝は顔を会わせなくてはならなかった。

 蓋を開けると、ピピがいつものように立っていた。今日のピピはより美しく見えた。

「ピピ、おはよう」

「コレディノカ、おはよう」

 二人は顔を見合わせた。ピピは恥かしいのか下を向いた。

「ピピ、ヘドロバ様のところに送って行くよ」

「ええ、お願い。昨夜のことは忘れないわ。あなたは私の大切な人よ。ヘドロバ様以上よ。私の命だわ」

「僕も君が好きだよ。離れて暮らすけど、いつも君を想っているよ」

「嬉しいわ。ねえ、コレディノカ。もう聞きたいことはないのね」

 コレディノカはまだ聞きたいことはいっぱいあったが、時間が迫っていた。

「一つだけ・・・どうして僕と君が愛しあえたのかなあ?こんなに大きさが違うのに」

「わからないわ。目を閉じていたから、本当に同じ大きさで愛し合ったかわからないわ。でも、私はあなたを感じたのよ」

「僕も目を閉じていたよ。君の声だけじゃあ物足りなかったけど、目を開けると全てが消えるきがしたからね」

「あなたに抱かれて嬉しかったわ」

 ピピは目を拭った。別れの涙を拭いていた。コレディノカはピピの持物の何かを欲しくなった。

「ピピ、君が大切な物があれば僕の物と交換しよう。いつでも身に付けておきたいよ」

「いいわ。でも私はあなたにもう大切なものをあげたけど・・・」

「そうだった。僕は君の大切なものを貰ったんだ」

 コレディノカは一人で納得したようだった。ピピはコレディノカの考えていることはわかったが、敢えてそれとは違うと説明はしなかった。コレディノカはピピに何を持って行かそうかと考えた。サービアの屋敷に帰れば色々渡したい物はあったが、今回の遠征で持ち込んだものは少なかった。

「ピピ、今回の遠征でこんに素適な娘に会えるなど考えてなかったから、気に入る物はないかもしれない」

「コレディノカ、私は今望む物をくれるのね」

「いいよ。何でも・・・」

「そうね・・・」

 ピピはコレディノカを見ていたが、そんなに欲しい物も思い浮かばなかった。そうはっきり言えばコレディノカががっかりする気もして返事に窮していたが、

「コレディノカ、今度会う時に私に指輪を頂戴。あなたはコーランデリアのヘドロバ様に会いにくるんでしょう。その時に持って来て欲しいの。それまでは、あなたの匂いのする服を預からせて」

「いいけど、卵の中に入るの?」

「大丈夫よ。この卵の中は広いのよ」

「さあそろそろ行こうよ」

「はい」

 ピピが入った卵をそっとポケットに入れると、コレディノカはヘドロバのセルタに向かった。ヘドロバから預かったことで有頂天になって帰ってきた道を、今は返すために歩いていた。卵の中でピピは何を思っているのだろうか?コレディノカはヘドロバのセルタへの道がもっと遠くであればいいと願っていた。出発の準備をする兵士達は本国へ入ることで高揚した表情だったが、コレディノカの気持ちは打ち沈んでいた。


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