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十五章 コボスの復活 186 会食

・・・七・・・


 テーブルの上には、銀食器に盛られた豪華な料理が並べられていた。中央の白い花瓶の花が、より食卓を華やかにしている。もちろんピピのためにも小さなテーブルと椅子が用意されていた。ピピに合わせられた小さな食器、小さな花瓶を見ると、彼女を大切に思うヘドロバの気持ちが滲み出ていた。今まで何度か一緒に食事をしたが、ここまで念入りにされたことはなかった。

 席についたコレディノカは、大きなテーブル席に椅子が三脚用意されているのに気がついた。改めて料理をみると三人分あった。ピピの小さな料理を入れて四人分。こんなことは今までに一度もなかった。先程シュエードを奏でていた者の席であろうかと考えた。

「コレディノカ、最後の晩餐だ。本国に入るとお前にも自由に会えなくなる。それに軍を辞めると聞いている。お前はこれからどうするのだ?」

 ヘドロバは何気なく聞いたが、コレディノカは彼女の耳の早さに驚いた。

「どなたから私が辞める話を聞かれたのですか?」

「わしは部隊の中で知らない案件はない」

「ヘドロバ様はどう思われますか?」

「お前が決めたことだ。思うように歩むがいい」

 身を固くしていたコレディノカだったが、意外なヘドロバの言葉にいささか拍子抜けした。

「わしが何か忠告すると思ったのか?」

「はい」

「お前はまだ若い。自身で決めた道を歩めば、何かが見えてくる」

「そうします」

「ところで・・・今夜お前に会わせたい者がいる」

 ヘドロバは話題を変えた。

「さっきセルタからシュエードの音色が聞えていましたが、その方でしょうか?」

「あれは別の者だ。お前に会わせたいのはコボスだ」

「コボス様ですか?」

 コレディノカはコボスと面識がなかった。ヘドロバの警護役だから常に傍にいると知っていたが、不思議にも一度としてセルタで出会ったことがなかった。ヘドロバもコボスを話題に出さず、コレディノカから聞くこともしなかった。

「コボス、入ってくるがいい」

 ヘドロバの声と同時に後ろの幕が開き、コボスが現れた。仮面姿のコボスを想像したコレディノカだったが、自分と同年代と思える端正な顔立ちの男の出現には面食らった。

 コレディノカは慌てて椅子から立ち上がると自己紹介をした。コボスの透き通る目の輝きは、彼自身の性格を現しているようで、コレディノカは好感を抱いた。

「コレディノカ殿、コボスです。初めてお会いできましたね」

「そうですね。今までお会いできなかったのが不思議です」

「コレディノカ、コボスは長らく病んでいた。ずっとセルタの奥で臥せっていたが、やっと病が癒えた。お前の送別とコボスの治癒の祝いをする気になった」

 ヘドロバがコボスの代わりに説明した。

「そうでしたか・・・別れよりコボス殿の治癒の方が何倍もめでたいことです」

 コレディノカは、ヘドロバも同じ思いに違いないと気持ちを素直に言葉にした。

「そうであろう、そうであろう」

 ヘドロバが頷きながら繰り返す。彼女の表情も嬉しそうだった。しかしピピだけが無言で、その上あまり食事に手をつけず、一人浮かない顔をしていた。


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