十五章 コボスの復活 182 レヨイドの穴
・・・三・・・
ザイラルは朝からいらついていた。朝からというより最近は毎日だった。
今日も朝から機嫌が悪く、回りの兵士達に当り散らしていた。ザイラルはその原因がわかっていたが、それは口に出してもすぐには解決できないものであった。
「ザイラル様、コレディノカ様が見えましたが、お会いになりますか?」
セルタの中で一人だけで昼食をとっていたザイラルに、警護の兵士が恐る恐る聞きに来た。兵士達にもザイラルの不機嫌さは伝わっており、セルタに入る時には極度の緊張を感じていた。
「コレディノカか?すぐに通せ」
ザイラルは彼の訪問を喜んだ。話し相手のいない時間の長さを、少しでも埋められると思った。
ほどなくセルタの外で待たされていたコレディノカが入ってきた。
コレディノカは親しい兵士からザイラルの不機嫌さを聞いていた。
「ザイラル様、お久し振りです。最近は殊の外御機嫌な様子と伺っております」
案内の兵士は飛び上がるほど驚いた。自分達にはとても言えない痛烈な皮肉だった。
ザイラルは苦虫をかみつぶしたような顔をしたが、コレディノカに昼食を食べたかを聞いて、食べてないと知ると、部下に自分と同じ食事を持って来るように命じた。
「お前は相変わらず嫌な奴だ」
「は?何かお気に障ることを申しましたか?」
「わしが不機嫌なのは聞いておろう」
「そうでしたか・・・それは、それは・・・危うく首が飛ぶところでした」
「ふん、お前の首を斬って、後々まで祟られるのも面倒だ」
「それを聞いて安心しました」
「全く敵わんよ、お前には・・・」
「恐れ入ります。今日はお土産をお持ちしました」
コレディノカは懐から一通の手紙を取り出して、ザイラルにちらつかせた。レヨイドの手紙だった。
「お前はわしの喜ばせ方を心得ているようだ」
「恐れ入ります」
「全く・・・怪しいものだ」
ザイラルの機嫌は良くなった。軽妙なコレディノカとのやり取りは心地よかった。
コレディノカはレヨイドから預かってきた手紙をザイラルに渡した。彼が予想したように、レヨイドは最初からザイラルに手紙を出していた。本人は部隊の友人宛と頼んできたが、コレディノカは宛名書きを無視して、手紙をそのままザイラルに届けていた。
最初に受け取った時ザイラルはコレディノカの目を覗き込んだが、二度目からは受け取るとすぐに目の前で読んだ。レヨイドはその都度手紙の宛先を変えていたが、コレディノカはザイラル以外には届けなかった。中には明らかにザイラル以外への手紙もあったが、その処理はザイラルがすると考えていた。ザイラルが読むのを止めて、部下に手渡すものがその類だった。




