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二章 カイデン 18 不吉の兆し

・・・二・・・


 夜明けの鐘から二ジータ(二時間)毎に時を知らせる役目。ポレルの胸をときめかせた鐘の音を誰もが父親以上と褒めるようになった。夜明け前に起き出すのはつらかったが、村人の悲しみを和らげていると思うと、不思議なもので目が自然に覚めた。時には長い螺旋階段を駆け上がるへまもやらかしたが・・・。

「バーブル、今朝は寝坊したでしょう」

「そんなことはないよ」

「賭けてもいいわよ。鐘の音が違ったもの」

 そんな時には勘のいいポレルに、小さな失敗をからかわれた。

「そうかなあ。俺はいつもと変わらない音に聞こえた」

「かばわなくてもいいわよ、サイノス。あなたが朝の鐘を聞いているはずがないわ。無理矢理起こされて山仕事に行くと友達から聞いているもの」

「参ったなあ」

 サイノスもポレルに痛いところをつかれて頭をかいた。

 父親達が村を出てから三人は毎日会っていた。昼間バーブルは鐘撞き役、サイノスは戦いに行った若者達に代わって山仕事を手伝っていたから、ポレルの家に行くのはどうしても夜になった。ポレルは二人のために夕食を作り、一日の出来事を語り合いながら食卓を囲んだ。バーブルが隠そうとした小さな過ちが、今日の格好の話題となった。三人でいれば何を話しても面白く、父親達のいない寂しさを忘れることができた。残された子供達もようやく落ち着きを取り戻していた。

 ポレルにからかわれた翌日、いつもより心を込めて朝の鐘を鳴らした。

「これなら文句が言えないだろう、ポレル」

 つい独り言が出てしまうほどの、つけいる隙を与えない自信の音だった。

 そのまま塔に残り、正午の鐘を今鳴らし終えたところだ。急いで床の汗を拭き取ると、一息つくために仰向けになった。気持ちのいい風が吹き抜けていく。天井の紐が窓から入ってくる風に合わせて、勝手な踊りをしている。秘密の部屋に行くにはまだ早過ぎる時間だ。何もしないで目を閉じると、そのまま眠り込んでしまいそうだった。

・・・お父さんは今頃どうしているのだろう?・・・

 父親を想った。めったに怒ったことのない父親。ただ役目に対しては厳格だった。父親を恨んだこともあったが、役目を引き受ける際にそのわけを知った。

・・・お父さんは本当に戦っているかなあ?それより秘密の鐘を探し、奪おうとする者がいるのだろうか?・・・

 最後に打ち明けられた代々守り続けた秘密が、時折心を重くした。親友のポレルやサイノスに打ち明ければ気持ちも楽になる。秘密は漏らさないと信じるに足りる二人なのだ。

・・・父さんとの約束と二人との友情。どちらを選べばいいのだろう?・・・

 こんなことをぼんやり考えながら時を過ごしていた。悩みは深まるばかりだ。ため息を何度かつく内に、頬に感じる陽射しが強くなった。

・・・そろそろ心ときめく時間だ。くよくよしても仕方がない。あの鐘が悩みを消し去ってくれるだろう・・・

 起きあがろうとした、その時だった。微かな雷鳴に似た響が耳に届いた。はっとして耳を澄ませた。目を閉じてしばらく待つと、さっきの低い音がまた聞こえた。立ち上がって見渡したが、雨雲のかけらさえ見えない。

 同じ頃、村人達も不安な思いでその音を聞いていた。森の小枝を細かく震わすようにして、不自然な音が止むことなく続く。夫は妻に、妻は夫に、子供は親に、親は子供に音の正体に心当たりを聞いた。しかし誰もわからなかった。聞き覚えのないその音は、国の使者が途絶えて一見平穏に見える村に、セレヘーレン・テス以上の不幸をもたらすだが・・・この時にはそう予言できる者はいなかった。




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