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十三章 キト&コレディノカ 169 小細工

・・・九・・・


 ヘドロバは各部隊長から状況報告を受けていた。報告会は定期的なものでなく、ヘドロバが気ままに開いていた。組織上ではイロガンセ将軍がその任であったが、実質的にはヘドロバの意のままになっていた。ドルスパニア王国への帰還行程もほぼ終わりに近づき、数日後には国境を越える地点まで到達していた。今回は行軍最後の報告会であった。各部隊長が自軍の状況と問題点をヘドロバに報告し、それに対して指示を受ける形で行われた。

 ザイラルの番になった。ザイラルの部隊は何の問題もなく、報告するほどの用件はないと他の部隊長は思っていた。ザイラルは簡単に部隊内の状況を説明し、ヘドロバも納得した様子で頷いていた。ところが終了間際にザイラルが問題を提起した。

「近頃部隊内で不穏な動きが出ています。由々しき事態だと思いますが、ヘドロバ様はどうお考えでしょうか?」

 各部隊長、副官、高級将校達がざわめいた。彼が口にした不穏な動き・・・自身や指揮縷々部隊を指摘されたらと思うと、もう落ち着いていられない。すぐにひそひそ話しを始める者、部下を呼んで相談する者、不安げに歩き回る者も出始め、会議の空気が一変した。

「ザイラル、不穏な動きとは何だ?」

「それは・・・・」

 ザイラルは説明し始めた。彼の説明によると、カイデンというバイトルの老人が部隊内で優遇され、本来の仕事もせずに大きな顔で酒浸りの日を送っている。それだけに留まらず、若い兵士をたぶらかして一集団を形成し、更に人数を増やす動きを見せているというものだった。

「そんな話か?ザイラル、その動きはわしも承知しておる。だがまだ参加者も数十人に過ぎず、増加する動きはないはずじゃあ」

 ヘドロバはカイデンの性格を知り、コレディノカの話で彼が今やっていることをザイラル以上に知っていた。

「ヘドロバ様も御存知でしたか・・・それならば話が早い。即刻その集まりを解散させ、首謀者たるカイデンを部隊から追放すべきかと考えます」

「その必要はない」

「何故ですか?」

「人数を見るがいい。その人数で何が出来る?」

「ヘドロバ様、今は確かに数十人に過ぎません。しかしその参加者一人が数十人の仲間を増やしたらどうしますか?短期間に数百、数千人の規模になってしまいます。火の出る前に消した方が賢明と存じます」

「私の部隊でも兵士が参加しております。カイデンに惚れこんで、仲間に参加を持ちかけている兵士もおります」

「私のところでも、カイデンに習った剣技を自慢する者もいます」

 自身に関係ないとわかると、各部隊長からもカイデンの私塾に関して意見が出てきた。得体の知れない者が、部隊内で公然と教えを広めることには、強い警戒感を抱く。

「ヘドロバ様、どうやら各部隊長も同じ考えのようです。何か事が起きる前に、カイデンを追放されたらどうでしょうか?」

 ザイラルは他の部隊長の言葉に力を得てヘドロバに進言した。コレディノカの話からヘドロバの旧知の人物だと知っていたから、尚更安易に引き下がる気など起きなかった。語気を強めて迫った。うまくいけば、カイデンを叩き出せる気がした。

「遠征軍内のことは全てわしが裁定する。カイデンの件はわしが預かる。お前達もよいな。下手な小細工をすればわしが許さぬ」

 こう結論付けて、ヘドロバはこの案件を終わらせた。ザイラルはヘドロバの決定にそれ以上異議を唱えなかった。口に出せば目的は達せられる。今の段階ではそれで十分なのである。


「ザイラル様、カイデンの件をあの場で取り上げられる必要があったのですか?ヘドロバ様もいい顔をされていませんでした」

 宿営地に帰るとすぐにレヨイドが問い掛けた。コレディノカの話からヘドロバとカイデンの関係は察したが、そんなに深いものとは感じなかった。それをわざわざ公の場で口にする必要があるとは思えないのだ。

「レヨイド、お前はまだ経験不足だな。コレディノカが全て話したとは思うな」

「そうでしょうか・・・・」

「わしはどうしてもカイデンが気になる。もう少し詳しく掴む必要がある」

「カイデンの様子を探る間者の数を増やしましょうか?」

「駄目だ。信頼するに足りない者ばかりだ。もっと優れた者を張り付けないと・・・」

 ザイラルは目を閉じて考え込んだ。そして、ぽんと手を打つとレヨイドの顔を見て、

「お前がいい。カイデンの傍に張り付くんだ」

「えっ!私が・・・ですか?駄目ですよ、ザイラル様に近すぎて却って警戒されますよ」

「それについてはわしにいい考えがある。わしに任せろ」

 ザイラルはレヨイドにカイデンに近づく方法を耳打ちした。レヨイドは頷きながらその方法を聞いた。ザイラルの考えには全て従う気持ちだったし、カイデンという者に対しても興味があった。


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