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十三章 キト&コレディノカ 166 カイデンの私塾

・・・六・・・


 敵に襲われる心配もなく、到着日をさほど気にしない行軍は単調そのものだった。ただ鐘を中心にして行軍し、時間がくれば食事の準備をし、夕闇が迫れば宿営の設定をすればよかった。

 カイデン達も穏やかな日を過ごしていた。コレディノカの計らいでカイデン達は仕事から完全に解放され、部隊の中で客人扱いにされていた。最初反発した兵士達にもマヤジフがヘドロバの意向を大げさに吹聴したものだから、数日後には誰も何も言わなくなった。しかし、何かと理由をつけてカイデンに絡む者はいた。カイデンには医学、天文、地理、歴史、音楽、土木、武術など多方面に渡る知識がある。どんな難題を出されても見事に答えた。        

 自然と若い兵士やバイトルの尊敬が高まり、もっと本格的に教えを請いたいと望む者が増え始めた。彼等は昼間の任務を終えてから、毎日カイデンのところに集まって来た。そうなると元来教え好きなカイデンも断り切れなくなった。請われるまま持っている知識を教え始め、今では三十人近い若者が学ぶ一種の私塾と化していた。

 その集まる者の中にコレディノカの姿もあった。初めての出会い以降ポレルやバーブルとも気が合い、頻繁にやって来るようになっていた。酒好きのカイデンとは一層気が合うのか、酒を手土産に講義の終わる頃には姿を見せた。コレドゾのコレディノカは、カイデンの講義に立場上出席できなかった。酒の相手をする中でカイデンの知識を得ていた。カイデンもキトとかサイノスに飲ませるわけもいかず、コレディノカ相手に昔語りを交えながら夜を送るのが日課となっていた。

「カイデン様、いろいろな知識をどこで学ばれたのです?」

 コレディノカはカイデンの知識の源を知りたかった。

 コレディノカはカイデンと接する内に大いに尊敬するようになり、師弟関係を申し出た。最初は断っていたカイデンだったが、あまりの熱心さに根負けをして最後には認めた。ポレル達にはコレディノカの持ち込む酒に目が眩んだと言い訳したが、だれも信じていなかった。

「わしの場合は書物から学んだ。一度読むと全て頭に残るのだ」

「幼い頃からの力ですか?」

「いや・・・ある人から授けられた力じゃあ。その人には感謝しておる」

 コレディノカは、その人がヘドロバに違いないと感じた。ヘドロバから初恋の相手がカイデンだと聞いていたからだ。カイデンに記憶の才能があるように、コレディノカには人の話を自然に引き出せる才能があった。一方でカイデンはコレディノカと話す中で、懐かしいヘドロバの行動を知ることができた。ただしこのことは師弟関係でも打ち明けるべきものではなかった。


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