十二章 スレディノカ&コスミオ 150 甘い道行き
・・・二・・・
争いは短時間で終わった。日頃鍛えた腕と昼間戦えなかった鬱憤が爆発し、血の嵐が吹き荒れる一方的な結末となった。スレディノカは相手の血しぶきを浴びて、顔を真っ赤に染めていた。
「もう安心です」
娘を安心させようと微笑みかけたが、娘は兵士達に囲まれた時以上に蒼白な顔で固まっていた。その顔を見て、スレディノカは娘の気持ちがわかった。
・・・目の前で惨劇を見せられて、私を無慈悲な人殺しと思っているのだろう・・・
「私を怖い男と思っているのだろう。でもこうしないと、私達がコンボット舘の生き残りだとわかってしまう」
「私のせいですわ。陛下のことを口走ってしまったから」
「終わったことです。気にしないで下さい」
スレディノカは少しでも発見を遅らせようと、兵士達の死体を道から離れた場所に隠した。
「私はサービアに急がなければならないが、貴女をここに残すわけにはいかない。私と一緒に来るがいい」
そう言うと、スレディノカは馬を取りに引き返した。彼が戻った時には、娘は幾分か生気を取り戻した顔に戻っていた。
「さあ、手を伸ばして下さい」
娘を馬に乗せようと手を伸ばした。だが娘は無言のまま俯いていた。
「どうしました?さあ早く」
いつ何時新たな敵兵が現れるかも知れない。背負った王子の命を、そう何度も危険な目にさらすことも出来ない。彼の使命は大きなものであった。
「これ以上ここにはいられません」
これ以上待つわけにはいかなかった。両足で合図をすると、ゆっくりと馬を進めさせた。
しばらく進んで振り返った。娘はまだその場に佇んでいる。
・・・何が気に入らないのだ?・・・
スレディノカは馬を返した。
「おい、いい加減にしろ。あまり手を焼かせるな」
馬上から体を傾けて片手で娘の細い腰に手を回すと、そのまま力を入れて娘を抱え上げた。そして自分の前に横向きで座らせた。背中は王子を入れた膨らみがあって、座らせることは出来ない。娘は抗うこともなく、スレディノカのされるままになっていた。
「しっかり掴まっていろ」
両手で手綱を持つと、馬を駆けさせ始めた。娘は落馬しないように自然にスレディノカの首に手を回した。
無言のまま二人は時間が過ぎていく。二人に月光が降り注ぎ、関係を知らない者達から見ると恋人同士の甘い道行きに見えた。




