Prologue
ーーその昔、人間は皆同じだった。
違う容姿をしていようと、違う言語を話していようと、違う生き方をしていようと、平和に暮らしていた。
そんな日々が続いたある時、人間は気付いてしまった。
《普通》である者と、《異種》である者の違いに。
人数的にも《普通》の者達は圧倒的に多かった為、《異種》の者達は恐れられ、蔑まれ、差別され、殺された。
それから《異種》の者達が受ける地獄の日々が始まった。
そんな中、一人の《普通》であり《異種》である人間が見かねてとある事を決意した。
《普通》か《異種》かで争いが起きてしまうのであれば、空間をねじ曲げて別々にしてしまおうという考えだ。
しかし、その人間には空間をねじ曲げるまでの力は無かった。
その為、《異種》の者達の中でも空間を操る事に特化している星ビトを探した。
やっと見つけ出したのは探してから一年後。
世界は《普通》と《異種》で戦争を目前にしていた。
星ビトはもうほとんど殺されており、見つけ出した一人は数少ない貴重な生き残りだった。
計画の事を話すと、その星ビトは渋った。
地上を空間で隔離するなど、自分の、体が消滅してしまう程の力が必要らしい。
当たり前である、星ビトはほぼ絶滅寸前なのだから。
最終的に、その星ビトは力を貸してくれる事になった。
その星ビトの弟もこの計画に志願をして来た為、監視ともしもの時のに為について来て貰った。
そして、計画の日。
力を最大限引き出すには月の力が必要になるので、地上の空真ん中に、白く大きな宮殿を造った。
ここで、儀式をするのだ。
早速計画は始まった。
大きな範囲の空間は本当の空間と遮断され、《異種》の者達は強制的にそちらに移した。勿論、この宮殿もだ。
その代償として、月ビトの体は消滅しつつあった。
泣く彼の弟をよそに、《普通》であり、《異種》でもある彼はまた、強大な魔法を唱えた。
それは相手を自分の思い描く道具にする能力だった。
消滅しつつあった彼を一つの竪琴に変え、弟に使用法を伝えると彼も力の放出により消滅した。
その二人の想いが籠もった竪琴は、この空間の管理人が認めた者を新しい管理人として受け入れ、認めた者が触れると月ビトとなり、空間を操る能力を手に入れる事が出来る物だった。
無論最初の管理人は弟である。
弟はこの空間にグリモワールと名を付け、《異種》の者達にこれらの計画の内容を告げた。
《異種》の者達は喜び合い、また平和になった。
しかし、当然その能力を使用して空間を自分の手にしようとする者も現れる。
それらを一人で裁くのには流石に無理があり、弟は《異種》の者の中から共に裁きグリモワールを護る守護者を選んだ。
その者達はしっかりと務めを果たし、弟子を取り、次々と歴史を刻んでいった。
そして、世界は今に至る。