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7.コーネリウス

※引き続き表現がグロありです

 ― 殿下が救助され、熱で寝込んでしまう少し前。呼び笛の音のした後の事―


・・・ピィイーン。・・・


 どこに居ても聞こえる様に設定されているその音に、すぐさま反応したコーネリウスは、令嬢子息らをモノの如く跳ね除けて室を出た。訓練はしているが、あの音の余韻が持つのはそう長い時間じゃない。

「どこに。」

王子の行きそうな所。あそこか。と当たりをつける。図書室のある方向。休憩といえば彼は其処に好んで行く。方向的には間違いない筈。

 コーネリウスは駆けた。多分他の騎士も向かっている。駆けて駆けて、殿下と一緒にいた筈のエリオットが目に入る。抱えるのは王子。


ぞっとした。いつも冷静なエリオットが珍しく焦った顔をしている。


エリオットが切り捨てただろう庭先の横たわる黒い躯。


赤黒い血だまりが緑の芝生を斑に染める。あいつの血じゃなければいい。


 その傍らに、見たくない柔らかな赤い髪。

「リッド。」


 先にその名を呼んでしまったので、エリオットの視線が険しくなる。しかし、リッドから目が逸らせない、大粒の涙をたたえて、ディートリヒを凝視しているその幼気な姿。

「医師を。」

エリオットの声に正気に返って、その瞬間彼はリッドの事を忘れた。エリオットと目を合わせ、踵を返す。入れ替わるように他の騎士もやってきていた。


 コーネリウスは騎士の顔になっていたと思う。リッドの存在をすっかり忘れて医師を呼び、他の騎士と連携して室に残っていた子を誘導し親に引き渡し、事件をなるべく悟らせぬ様に計らった。騎士としての職務を優先した。

 リッドの事を思いだしたのは、騎士最年少の者として隊長が休めと労ってくれた時だった。

 慌ててリッドの所在を確かめる。

「女の子を見てないか!」

「は?コーネリウス子供なら帰して、・・」

「違う!あんな雑魚じゃなく天使みたいに可愛い子だ!」

「・・・おい。失礼な奴だな。」

同期の年上の青年は若干引いていた。

先輩の騎士がやってきてコーネリウスに聞く。

「今日来てたっていうお前の妹か?特徴は?」

「誰とも比べられないぐらい可愛い!」

「いや、だから特徴。」

コーネリウスははっとした。こいつらにリッドの可愛さを吹聴している場合じゃない。

「紅い髪で琥珀色の瞳。背はこのくらい。」

冷静に手で自分の胸の下あたりを指し示す。

「うん。そういう特徴だよ。」

こい。と彼はコーネリウスを連れて行く。

「妹は宴の間、どこに居たんだ?」

「・・・。」

「コーネリウス?」

「図書室。」

憮然とした顔をしてしまう。

「ん~?お前の妹も今日呼ばれてたんじゃないのか?」

「・・・。」

「ま。いいか。ん?」

先輩コール・ベリオは立ち止まってコーネリウスを見た。

「図書室って、まさか、殿下と一緒にいたわけじゃぁ。」

コーネリウスが唇を噛みしめ拳を体の横で握りしめる。

「あ。じゃあ。医務室から先に行くか。」

コールは察したようで何も聞かずにそう言ってくれた。


 結果として、リッドはその場にやって来た騎士に保護され、家に帰されていたのだが、コーネリウスは後悔した。素直に王妃の開いた会に参加させていればと。


 後悔と使命感とで、コーネリウスは休むことなく翌日からも働いた。警備は強化され暗殺者の捜査は自分より上の人間がやるので、ただ黙々とコーネリウスは動いた。


 父も王城に詰めている筈だがコーネリウスは顔を合わせる事もなかった。


 人間の死体は始めてだったから、毎夜うなされた。そんな姿をリッドに見せたくない。リッドだって同じ筈だから、帰ってやれば良かったのに、そうしなかった。ディートリヒがまだ目覚めていなかったから。


お兄様、騎士らしくなってきた。はず。

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