大都市衛生管理機器
僕らは世界の中にいた。どこまでも蒼く高く澄み渡る世界に僕らはいた。何時だって真面目に、何時だって愚直に、何時だって馬鹿のように、僕らはその美しい世界の中を生きていた。
だのに、僕らは一体何処で道を違えてしまったのだろう。何時までも美しい世界の中で生きていることだって出来た筈なのに、僕らは一体どうして、こんなにも遠く遠く、離れてしまったのだろう。
愛する人、大切なアナタ、この身もアナタと共に有れたらば、どんなにか幸せだったろうに……。
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澄んだ空気が草木からではなく『大都市衛生管理機器』という世紀の発明品から排出されるようになって数十年後、地球人はようやく地球外惑星生命体との接触に成功した。地球人は未知の技術との邂逅に歓喜し、嬉々として彼らとの会談を試みる。
しかし、地球外惑星生命体はこれを拒否。両者間に亀裂が生じて以降、『第一次宇宙植民化計画』と命名された宇宙戦争が勃発。なお、この侵略作戦は現在『第二次』『第三次』と引き続き続行中である。
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地球という惑星の話を聞いた。蒼く蒼く、何処までも続くかのような海と、艶やかな緑溢れる恒久の大地。驚くことに、そこでは空気が『原初』の状態で作られるらしい。
それはまるでおとぎ話のようだった。私たちの知る植物とは、街路の端に植林された景観を整える為だけの要素であって、呼吸するに十分な量の酸素を作る物ではなかったから。
私は地球に憧れた。機械の空ではない突き抜けるような碧空を望んだ。管理された混じりけのない空気では無く、瑞々しい潤いに富んだ大気を夢見た。私はまだ見ぬ地球の幻想に囚われてしまったのだ。
来る日も来る日も私は魅入られたように地球の写真を見つめ、遠く遥かな大地へ思いを馳せた。人口太陽の強くない光に目を焼くという太陽を重ね、緩やかな丘陵に降り立つ自分の姿を夢想した。地球は私にとって夢であり、そして到達すべき目標であった。
月日は飛ぶように過ぎていった。地球に関する本を読みあさり、狂うような切望の中で私はただただ人類の故郷へ向かう事だけを願い続けていた。
幼かった私にとって、何光年先にある生命の故郷は決して触れられない彼方の存在では無かった。
そうして年齢を重ね年を経るごとに、何時しか憧憬は形を変えて手の届く現実にまで成ろうとしていた。
ほら、もうすぐソコに……。
こんな話書きてえなぁ、誰か代わりに書いてくんねぇかなあ、割と本気で。