表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

1

初のローファンタジーです


 気がついたら森の中にいた。


 さっきまで、家の中でゴロゴロしてたんだけどな。

 昼飯をたらふく食べて、動画サイトをずっと見ていた。

 だから、気づくのに時間がかかってしまったよ。


「空気ウマ〜イ……地面キモチイ〜〜イ……」


 澄んだ空気に、木々から漏れる太陽光。

 僕は今、大自然に囲まれているんだなぁ。

 

 ベッドじゃなくてもイケる。

 眠気を誘発されて、抗えないよ。

 久しく家から出てなかったけど、これならいつまででもゴロゴロできちゃいそう……。


「いて」


 なんか、噛まれたような?

 注射を刺された、そんな痛みだった。


「……なんかできちゃった……」


 寝転びながら腕を見た。

 しっかりと噛まれた跡が残ってる。

 なんだろう、動物の牙かなぁ?


 ちょっと体を起こしてみる。

 僕の目に入ってきたのは――


「シャ! シャ! シャ!!」


 翼の生えたヘビだった。

 中くらいのデカさで、なぜかめっちゃ光ってる。


「う〜ん……まあ、いっか。眠いし」


 僕は気にせず、また寝転がった。

 ヘビも森の奥にいっちゃったし、追わなくていいや。


 それに立ち上がる気力もないんだよね。

 今は私服だけど、まるでパジャマみたいな心地だ。

 力が入らなくて……世界がふわふわしてる。


「はあ〜〜〜〜、ねよ……」


 体を丸めて、目を閉じた。


 明日は学校だしなぁ。

 今日は一日中ダラッダラするって決めてたし。

 森の中っていうのも、きっと夢だよね。


「zzz……zzz……」



⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎



「zzz……zzz……」


「ちょっと! 起きて、ねぇってば!!」


「う……ん……? なに……」


 誰かに起こされて、目が覚めた。


 目の前に、綺麗なお姉さんがいた。

 銀髪で、すっごく美人さんだな。

 どうしてか不安そうな顔をしているけど……。


「はやく起きて! ころされちゃうよ!」

 

「お姉さんだれ? って、もう夜なんだ」


 僕は周囲を見渡した。

 辺りはすっかり暗くなっていた。

 もっと寝ていたいけど、流石に少し覚めちゃったな。


 このお姉さんは、なんでそんなに焦ってるのかな?


「こんなところで寝てるなんて正気!? はやく逃げよう、ナイトメアタイガーがくるッ!」


「ナイトメアタイガー?」


 えっと、なんのこと?


 お姉さんが肩に抱えてるお兄さんは、どうしてそんなにぐったりしているんだろう。


「お、俺を置いて逃げろ……しぬぞ……!」


「それはダメ! 帰って彼女さんに告白するんでしょう!? こんなところでしんじゃダメよ!」


「告白??」


 うーん、わからない。

 とりあえず、お兄さんの命が危なそう。

 

 それにこの人たちの格好は見覚えがある。

 たしか、ゲームで冒険者って言ったっけ?

 こんな感じだった気がする。

 

「君、名前は!?」


「僕? 僕は悠人、気軽によんで」


 悠人。僕の名前だ。

 おおらかで優しい人になってほしいって、おじいちゃんがつけてくれたんだっけ。


「ユート。この人をお願い」


 と、お姉さんがお兄さんを地面に横たわらせた。

 腰の剣を抜いて、森の奥に構えている。


「ど、どうしたの……?」


「――くるわ」


 お姉さんの視線の向こうを見た。

 

 そこには――


「キリナ! 幻術はこれで限界、突っ込んでくるよ!」


 女の子がほうきに乗って宙にいる!

 とんがり某で、いかにもな格好の女の子だ。


「すごい飛んでる! 女の子が飛んでる!」


 魔法使い? それとも魔法少女なのかな?


「ガアアアアアアアア――ッ!!」


 おっと、そっちじゃなくて。

 

 ほうきの女の子の後ろの方ね。

 大きくて禍々しい色の虎が、森の奥からどしんどしんと走ってきていた。


「あれ、ナイトメアタイガー?」


 あの虎といい、この人たちといい。

 ファンタジーの世界に紛れ込んじゃったのかな。


「……私がなんとか時間を稼ぐわ」


 キリナって、お姉さんの名前かな?


「えっと、キリナさん?」


「町に戻ったら、国に要請を出して。こんな化け物、並の冒険者じゃ歯が立たない」


 キリナさんは険しい顔で、すごく汗をかいている。

 それどころか、剣を握る手も震えてしまって――


「私の命で……食い止めるから……!」


「うーん、そんな気軽に賭けちゃダメだとおもうな」


「……え?」


 僕はあぐらをかいたまま、彼女に言った。


「僕がいたからここで止まったんでしょ? だったら、僕のことは無視していいよ」


「な、なにを言ってるの! あなたは――」


「ダラダラしたくて寝てただけだから、いいんだ」


 無意味に命を捨てる必要はない。

 ここには偶然、僕という良い囮がいるんだから。


「僕がエサになって食い止めるよ。たとえ夢の中であっても、僕のせいで人がしぬのは見たくないからね」


「ユ、ユート……あなた……」


 ずいぶんと現実味のある夢だなぁ。


 どうせなら、キリナさんの笑顔を見たかった。

 泣きそうになっているなら、せめて夢の中でくらい彼女を守ってみたいんだ。


「なぁんて、声に出しては言えないけど」


 僕は虎の進行方向に歩いていく。

 なるべく力を抜き、その場で仁王立ちした。

 リラックス、リラックス……。


「さあ、いつでもきていいよ!」


 と言っても、虎は勝手に向かってきている。

 突撃したら痛いのかな?

 でも、どうせ夢なんだし……彼女たちを守れるなら。


 虎の雄叫びが聞こえる。

 僕は棒立ちして、虎の大口に体を――


 バクンとされた。


「……あれ?」


 ちゃんと噛まれる感触がある。

 もしかしてこれ、夢じゃない?

 というか、


「かゆい」


 虎の口の中にある突起物と、唾液のようなもの。

 それらが僕の体を突いてきてくすぐったい。


 そして、食べられたといっても。

 僕の右腕は虎の口に収まっていなかった。

 

「えっと……ほっ」


 なんとなしに、虎の顔めがけてパンチした。

 まあコツン程度の威力なんだけど――


 風が生まれた。

 拳から竜巻が出てきた。

 螺旋状にうなり、同時に金色の光が溢れた。


「――ッ!!??」


 虎は紙のように吹っ飛ばされる。

 地面にバウンドして、空の彼方へバビューンと消えていってしまった。

 


「……………………え、よわい」


 

 僕はおもわず、そうつぶやいてしまった。


 この風は一体どこから?

 自分の拳を見ても、ジェット噴射器は付いてない。


「え、えーっとぉ……」


 僕は後ろを振り返ってみた。

 キリナさんと魔女っ子、怪我人のお兄さん全員が、目を丸くして口を開けていた。


「な、なんとかなりました〜……よ?」


 ただダラッダラしてた、だけなんだけど。

 夢じゃなくて現実だったわけで。

 

 どうにかなってしまって、逆に困惑してしまった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ