Ep1-part2:「オタ活について」
高校生の趣味は多岐にわたる。
同じスポーツでも、選手としてやるのが好きな人と、観戦するのが好きな人がいる。ゲームでも、操作性を重視する人とキャラクターを好む人もいる。
ゲームや漫画、映画にスポーツ。趣味が多様化する中で、一つ一つの趣味のなかでも枝分かれしているため、自分と趣味が完全に合致する人を探すのはかなり難しい。
麻奈は昨日徹夜してしまった。栗林が入れていたゲームを試しにやってみたところ、思いの外はまってしまったのだ。
3時間睡眠は久々だ。まだ脳から快楽物質が出ている感覚がする。今日の一限は歴史の授業。とりあえず60分間の睡眠は確保できる。ありがたい。二限は…あぁ、覚えてない。とりあえず遅刻する前に学校に行かねば。
麻奈の乗る電車は都市部と真逆の方向。席もガラガラなので学校の最寄りまでは座ることができる。最初は寝過ごしそうで居眠りはできなかったが、いつの間にか15分ぴったりで起きられるようになっていた。
駅についてから約20分。バスも通っているが、運動不足解消のために最近は歩いている。ただもう暑さにやられてしまいそうなので、そろそろバスを使おうと思い始めていた。
学校に着く頃には汗だくだった。服がベタついて気持ち悪い。おまけに学校の冷房が壊れてしまっている。なんの拷問かっつーの。
麻奈はいつも2番乗りに学校に来ていた。1番乗りはいつも栗林だった。
「おはよ!」
「あ、あぁ…どうも」
昨日あんなに話したのに、他人行儀な態度に少しムッとしながら、画面を見せつける。
「ねっ!栗林がやってたゲーム私も入れてみたんだ!」
栗林は、驚いたように目を見開き、画面をまじまじと見つめた後に安堵の表情を浮かべていた。それもそのはず。他のゲームには年齢制限がかけられてるようなもの、つまり大人向けゲームがあったからだ。しっかり調べてからダウンロードした私の配慮が効いている。
「ど、どうだった?」恐る恐る聞いてくる。
「うーん、まぁストーリーは難しくてわからなかったけど、キャラクターが可愛くて良かったよ!」
「そ、そっか」
話しているが、向こうがかなり消極的だ。まあそんな急に打ち解けられるわけないか。
「おはよー」
そんな他愛もない会話をしていると、麻奈の友達の優佳が教室に入って来た。
「あれー?今日なんか人少なくね?」
見渡しても、麻奈と栗林、そしてクラスメイト数人しか教室にはいない。
「たしかどっかの路線が遅延してたと思う。」
「まじ?麻奈は平気だったの?」
「うん。最寄り別だからねー」
「えーラッキーガールやん」
まあ、麻奈の使っている路線から来ている人はほぼいないので、行き帰りは毎回ぼっちなのだが。
と、そんなこんなで話しているうちに遅延組も学校に着き、朝のHRが始まった。麻奈は寝た。
結局一日中寝てしまった。体育の無い日はずっと机の上に頭を乗せて眠ることができるのがいい。腕を枕代わりにすると痺れてしまうので、最近は教科書を枕にしている。
帰りのHRは流石に起きていたが、なにやら隣の栗林がそわそわしている。そういえば今まで気付かなかっただけで栗林が大急ぎで帰ることもしばしばあった気がする。
HR終了後、身支度をする彼に話しかけた。「結構急いでる感じだけど今日何かあるの?」
栗林は帰宅部。それにあの様子だと外部でも何か活動しているわけではなさそうだ。
「ああ、えっと、ライブに行くんだ。」
ライブ。いわゆるコンサートというものだろう。正直ライブとコンサートの何が違うのかわからないが、栗林もその類のものが好きということだ。これは共通の趣味かもしれない。
と言っても、麻奈の推していたロックバンドはメンバーの不祥事により無期限活動休止中だ。不祥事を起こしたメンバーの復活は絶望的と言われている。
「へー、どんなの行くの?」
栗林は一度躊躇い、そしてスマホの画面を差し出してきた。なんかデジャヴ。
画面には人気二次元キャラクターのライブイベントのホームページが映し出されていた。もちろん二次元で実態はないのだが、そこをCG映像などで再現するらしい。
「え!?全部CGなんだ!すご!」と、技術革新の凄さを再認識し、やはり日本のこう言った文化は世界最先端だなと麻奈は思った。
「今から会場まで行かなきゃだから…」
ホームページを見た感じ、会場に着くまで1時間半はかかりそうだ。
「それじゃ!」と、今まで聞いたことないくらい明るい声色で言うと、栗林は颯爽と去っていった。
麻奈は優佳達と帰っていた。金曜日は友達全員が部活がない唯一の日。学校から徒歩圏内にあるショッピングモールで遊び尽くしてから帰るのが彼女達の週末の楽しみであるのだ。
カフェで新発売の飲み物を飲んでいると、話題は夏休みの予定になった。
「麻奈は彼氏と遊ぶの?」
「そうじゃん、うちらの中で唯一の彼氏持ち」
羨望の眼差しを受けつつ、別れた事実を話さねばならない現実に麻奈は直面していた。
「いやーうちら相性悪くてさ、別れちゃった」
え?まじ?え、1ヶ月もしてないよ?とか色んな言葉が飛び交う中、とりあえず何か言わねばと思い
「とにかく!夏休み何やるか決めようよ!」と思いのほか大きい声で言った。
色々言われたくなかったんだな、と友人が察してくれたのか、
「あー、でもなにやるかなー」
「んーうちほぼずっとバイト入ってる」
「そんな遠出はしたくないんだよねー」
「集まれる時適当に集まったらそれでいいんじゃね?」と、生産性がない会話をなんとか繋いでくれた。くれてるのだろうか。
そう、麻奈は忘れていたが、彼女の友人は全員が揃いに揃って適当なのである。もしかしてこいつら全員麻奈の恋バナを聴きに来たのだろうか。
「もうこれじゃあ収拾つかないよ」と麻奈はつっこんだ。
その後も中身のない会話が続き、最終的に8月1日に海に行くと言うことになった。
そのあとはゲーセン行ったり、プリクラ撮ったり、どうでも良い話をしたりして、みんな帰路に着いた。
「夏休みどうしようかな〜」
勉強すると言うことは絶対にあり得ないが、このままだと夏休みの思い出なるものがほとんど無くなってしまう。
そう言えば、栗林が今日話してたようなイベントは無いのだろうか。ふと思って検索してみた。あるにはあったが…そりゃそうだ。どのコンサートライブも数ヶ月前からチケット販売をするのが普通だ。チケットは1つ残らず売り切れていた。
「うーん…」そう言いながら画面をスクロールしていると、とある記事が麻奈の注意を引いた。
「…ポップアップストア…?」
どうやらアニメ量販店にて栗林の言っていたキャラの限定グッズが販売されるらしい。
…正直麻奈は迷った。割とオタク文化に興味を持っているのも事実だが、ほとんどミーハー状態の自分がこのような戦場に向かっても良いのか。
…いやいや、1人で行くのは危険だ。ここは衝撃を和らげるためにも誰かと行く方が…
やはり栗林と行くべきだろうか。いや、流石に男子と2人きりはハードル高い。そもそも向こうも迷惑だろう。色々迷った結果、優佳を頼った。
「えー?こう言うのあんま興味なさそうなのに」と言いつつも、優佳は快諾してくれた。
グッズの中には、結構部屋の飾り付けにうってつけの物もあった。今は寂しい自室を、より彩れるのは嬉しい。
予定ができて少しだけ安堵しながら帰宅した麻奈にメッセージが送られてきた。栗林からだ。
ライブ会場でキャラクターのTシャツやはっぴを身にまとい、サイリウムを装備した栗林が写っていた。
『もうすぐ開演です!!』
「なんだ」麻奈は呟いた
「オタクって楽しそうじゃん」




