逃走の騎士
平民出の騎士、レオン。
訓練をサボっては団長に怒られ、怒鳴られるたびに逃げ出していた。
剣の腕も弱く、仲間からも頼りにされない、半人前の青年。
そんな彼の暮らす王国に、ある日、帝国の軍勢が攻め寄せる。
為す術もなく崩れていく城壁。燃え落ちる街。
レオンは恐怖に駆られ、ただ生き延びるために逃げ出そうとした――
だが、そのとき団長が彼に下した最後の命令。
> 「姫を探せ。」
逃げてばかりだった青年が、再び立ち上がる。
これは、敗れた王国の中で“ひとつの命令”を胸に旅立つ、臆病な騎士の物語。
――燃えていた。
王都も、仲間も、誇りも。
レオンは瓦礫の陰で震えていた。
剣を握る手が汗と血で滑り、何度も落としかける。
かつて「騎士」と呼ばれたその手は、今やただの臆病者の手だった。
「もう……無理だ……」
誰に言うでもなくつぶやく。
遠くで聞こえる悲鳴も、剣戟も、もう耳に入らなかった。
ただ、生き延びたい――その一心だけが彼を支配していた。
「レオン。お前はまだ、生きているな」
重い鎧の音とともに現れたのは、騎士団長。
血に濡れた鎧の隙間から、炎の光が揺らめいて見えた。
「団長……俺は……もう戦えません」
「いい。お前に最後の命令を与える。――姫を探せ」
レオンは顔を上げた。信じられないというように。
「姫……を?」
「ああ。姫は脱出した。生きている。だが敵が追っている。お前なら見つけられるはずだ」
「なぜ俺なんですか。俺は……逃げたんですよ!」
団長は笑った。血の混じった声で。
「逃げてもいい。だが、姫を見つけたら……もう一度、立て。」
その言葉を最後に、団長は背後の兵士たちを率い、炎の中へと戻っていった。
すぐに団長に背を向けて走り出した。
レオンは情けなくて弱い主人公ですが、
これから少しずつ「逃げる」自分と向き合い、
“誰かのために立つ”ということを学んでいきます。
更新はゆっくりめですが、
ブックマーク・評価・感想などいただけると本当に励みになります。




