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振動。

すごい振動。


「え、なに…」


長い地響きに思わず顔を上げると、真っ赤な目と目が合った。


「はわ…」


思わず見惚れてしまう。

何度見てもきれい。


「どうやら苦戦、しているようです」


「珍しい、ですね」


「まったく…不甲斐ない子達だ…」


そう言って宰相さんがベッドから抜け出し着替え始める。


「さ、宰相さん…」


「すぐ戻って来ます。良い子で待ってて下さい」


「え、え、でも」


「約束、忘れちゃいましたか?」


「忘れてません…けど…」


「復唱、して下さい」


すっかり着替え終わってしまった宰相さんが、眼鏡を掛けながらやんわり圧してくる。


「宰相さんの許可無く、この部屋から出てはいけません…」


ふふっと嬉し気に微笑み、宰相さんが俺の頭を撫でる。

良い子、良い子って、優しくしてくれる。


「良い子…待っててくださいね?」


「…はぃ…」


頬にキスをして、くれてから、宰相さんは部屋を出て行った。


ここは魔王城の宰相さんの部屋。

執務室兼寝室。

俺と宰相さんの部屋。


安全で幸せな場所だ。


「うー…」


心配でたまらなくなる。

さっきの振動は戦闘音だ。

また、何者かが魔王城に侵入して、とんでもない強さの善政を敷いている魔王様討伐と息巻いているのだろう。

魔王様を筆頭に、魔王城にはすごく強い方々が居るのは知っている。

でもだからって、宰相さんが見に行くのは、心配でたまらない。


魔王城は侵入しやすくしているそうだ。

拒むより入れた方が処理しやすいから、だそうだ。


俺は勇者様一行の蛮行と彼らにこびへつらう貴族と王族を見過ぎてて、ただ存在しているだけの魔王城に攻め込む人間が大嫌いになっていた。


だから攻め入ってくる人間がどうなろうと、心痛くない。


ただ、宰相さんが心配で。

だって宰相さんは優しいし、穏やかだ。

争いなんて絶対得意じゃない。

心配で心配で。

俺は。


約束を、破ってしまう。





着替えて部屋を出て、出迎えるならここだ、という広間へ急ぐ。

足の速さは変わっていない。

だからすぐに辿り着けて、宰相さんの姿が見えて、


「宰相さんっ」


急いでその背に飛びついた。

だって土煙が。

広間がぼろぼろ。

誰か他に居るようだけど、それが味方だと限らない。

急いで連れて逃げないと。

その一心で宰相さんの身体を引っ張る。


「おや、悪い子…出てはいけないと、言ったのに…」


宰相さんは微動だにしなかった。

見た目に反して宰相さんは、強靭なのだ。

脱ぐとすごいんだから…。

ちょっと思い出してしまった俺を軽々とお姫様抱っこ。

微笑まれ、思い出してたのバレてるのを悟る。


「悪い子」


怪我ひとつない。

眼鏡も曇ってない。

きれいな宰相さん。


「しん、ぱいでっ」


無事な姿にホっとして、首に抱き付いてしまう。


「君との日々…少しでも障りがあるのは嫌だったもので…」


宰相さんがぎゅうってしてくれた。

優しい言葉に涙が滲んだ。

嬉しい。

好き。


「お前たち」


「はい、先代っ」


「そういう事だから、ちゃんとしなさい…いいね?」


「はい!先代!!」





…今何か変な会話をしているように聞こえた。

そう言えば広間に居たのって、四天王様方と魔王様、だった?

こそっと見ると、やっぱりそうだ。


「…せんだい?」


「…悪い子は、おしおきだよ?」


俺の質問に答える気はなさそうな宰相さんが、歩きながらそんな事を言う。

約束を破った悪い子にはおしおき、それはまぁそうなので。


「はい…ごめんなさい…でも、後で、ちゃんと…お話、してくださいね?」


宰相さんが軽くキスしてくれた。

それがどういう意味なのか。

今はまだ分からない。

分からないけど、おしおき一杯されちゃうんだって、期待で全身もじもじさせてしまう。

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