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8話 カードゲームはお好きかしら?

 ファイツ君の話の後も、他愛も無い話しをしながら、下へと降りていった。下へと降りる程、色がカラフルになっていく。

 石畳は同じく綺麗に舗装されて変わりないけれど、建物の色が様々に。赤や黄、青や緑、人の目を引く為に様々な色やデザインがされていた。


「クレープ屋さんはどこだろ?もうさっきのせいでクレープの口になっちゃったよ」

「ふふっ、ファイツ君はどんなクレープが食べたいのですか?」

「ボクは、チョコバナナかな!クレープって言われたらあれ!って感じがしない?シーちゃんは?」

「わたしは、いちごでしょうか。今が旬ですので」

「いちごもいいね!ルー君は?」

「あー、ハムとかかな」

「ハムゥ!?」

「おかずクレープとか言うだろ。ああ言うのが、あっ、店あれだ」


 クレープ談義をしていたら、どうやらお店に着いたみたい。このお店はテイクアウトではなく、店内で食べるお店みたいね。


 店に入り、席に座る。それぞれ思い思いのクレープを頼み、そして、


「ふわわあ、おいしい!」


 頼んだクレープが来て、口いっぱいに頬張った。


「クレープなんてひさしぶりに食べたけど、おいしいねぇ!」

「おいしっ……。わたしも久々に食べましたわ」


 いちごとクリームの甘さが口に広がる。モチッとした皮の食感もいい。気づけばまた口の中にクレープが。


「……シーちゃんも甘いもの好きなの?」

「え?ええ、そうですね。好きですわ」

「そっかあ。さっきすごくおいしそうな顔してたもんね!」


 え、わたしそんな顔してたのかしら。うわっ、恥ずかしい。どんな顔してたのかしら……。


 お話ししながら、それぞれクレープを食べ進める。顔が緩まない様に気を付けないと。でも、ファイツ君。ずっと満面の笑みで食べていて、あなたの方がすごくおいしそうな顔だと思うのだけれど。


「ボク、ちょっとお手洗い行ってくる」


 クレープも食べ終え、飲み物を飲みながら雑談をしていた時、ファイツ君がお手洗いに席を立った。そうすると当然、このテーブルに残るはわたしとルーカス君の二人。これは好機ね。さて、それでは、


「なあ、今日はなんで俺達を誘ったんだ?」


 どう攻めようと思ったら、向こうから先に口火を切られた。


「クラスメイトですもの。親交を深める為ですわ」


 ニコッと笑い、模範解答を返す。ひとまず、向こうからの投げかけを受け取る様にしてみましょう。


「……俺がサイテに敵認定されていることは?」

「……存じ上げております」


 ここでサイテの名前が出て来た。

 では、ゲームの始まりね。


「まあ、別に俺はいいんだけど。……ファイツまで巻き添えになっちまった。あいつはただの被害者なのに」


 自分のせいでファイツ君を孤立させてしまったと思っているのね。悪いのは全部あいつなのに。


「何を考えてるか知らねえけどさ、これからもファイツとだけは仲良くしてやってくれよ」


 そう言うと、ふいと別方向へ向いてしまったルーカス君。なるほど。あくまで自分一人で引き受ける気なのね。

 

 でもね、今日のメインはあなたなの。


「あら、そんなにわたしの事がお嫌いですか?」

「別に嫌いな訳じゃねえけど……」

「では、何も問題ありませんね。わたしはファイツ君だけでなく、ルーカス君とも仲良くなりたいのですよ」

「……そうか」


 返事はあったが、顔はまだこちらへと向かない。

 まずは、こちらへと顔を向けていただきましょう。

 

「何を疑っているのか分かりませんが、サイテの指示とかではありません。わたしはわたしの意志でお二人をお誘いしました」

「……でも、お前婚約者なんだろ?」


 チラッと目線だけこちらへと向かう。やはりそこを疑われているのね。サイテの婚約者だから、二人を陥れる為にわたしが誘ったと。サイテの陰謀がわたしの裏に隠れていると。


 もちろん、そんなことはない。でも、それを言っても彼は信じないだろう。それはそう。仮にサイテの指示で来ていても、そう言うだろうから。


 では、どうするか。それはもう決めている。



 わたしとアルディアーノの勘を信じ、勝負といきましょう。



「……わたし、サイテのこと大嫌いですの」

「…………は?」

「ちょっといい家に生まれたからって、人を見下して、偉そうにして。他人をゴミと思っているゴミ人間のことを誰が好きになりますか?」

「え、いや、ちょっと、……え?」


 さあ、勝負よ。わたしもカードを切るわ。いきなり切り札だけどね。


「そんな奴の指示になんか従いません。ましてや、ゴミが迷惑をかけたせいで、辛い目に合っているお二人をゴミの為に陥れるなんてこと、絶対にあり得ません」

「……聞かなかったことにするか?」

「いいえ。ちゃんと聞いて、記憶してください。……ルーカス君。わたしがここまで言ったのは、あなたのことをもっとよく知りたいからです」


 そう。わたしはルーカス君のことをもっと知りたい。だから、賭けに出た。わたしとアルディアーノの見込み通りなら、きっと勝てる賭けに。


「ルーカス君は初日の自己紹介の時、教室へ何者かが侵入したのを気づいていたでしょう?」

「……なんでそれを?」

「あれ、わたしの執事です」

「はあ!?」


 あら、意外と大きい声出せたのね。落ち着いた感じだから、そんな声出ないと思っていたわ。動揺しているのなら、このまま押しきれないかしら。


「わたしの執事アルディアーノは優秀で、常人ではまず気づくことなど出来ないわ。でも、あなたは気づいた。それにアルディアーノ曰く、振る舞いにも隙が無く、強者であることは間違いないと報告を受けています」

「アルディアーノ……?」


 彼の目が変わる。その目はわたしを敵と見ているよう。こいつはどこまで知っているんだって感じかしら。じゃあ、もう一枚切り札を切るわ。


「ルーカス君。わたしの目的は魔王を倒すことです」

「……は?」

「その為に、あなたの力を貸してくれないかしら?」


 さあ、これでわたしの手札は切り終えたわ。あなたはどう返すのかしら?


「……魔王を倒すなんて正気じゃねえ。学生なら、大人しく勉強しとけ」


 あら、つれないのね。でも、そんなこと言っていいのかしら?


「……あなただって、何か目的があってこの学園へ来たのでしょう?さっきのご家族のお話、嘘よね。あなたには家族も友人も、一切の過去が無い」

「っ!?」


 ごめんなさい、まだ切り札残っていたわ。でも、これで本当に手札はゼロよ。さあ、どうするの?


「別にあなたの目的を詮索はしませんわ。でも、その目的に協力出来るかもしれないし、……妨害することも出来るかもしれないわ」


 仮に彼が魔族の手先だとすれば、明日にはわたし、死んでいるかもしれないわね。


 彼の目的は知らない。こちらの手札はゼロ。

 

 後は、彼が選ぶだけ。


「…………確認したいことがある。お前の…………」

「……ええ、分かったわ」


 彼の選択は、わたしに通信機を取らせた。


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