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4話 どこまで侵入しているの、貴方?

「おはようございます」

「……はよっ……」

「………………」


 入学してニ日目、朝の挨拶とともに教室に入ったわたしに、誰もまともな返事はしなかった。


 わたしに誰も近寄ろうともしなかった。

 そりゃそうね。なんたってわたしは四大貴族テルノ家の婚約予定者。変にちょっかい出したら、テルノ家が敵に回る可能性がある。それに昨日の自己紹介と、その後のサイテの行動の影響があるだろう。


 教室に入った時軽く挨拶したけど、皆気まずそうな顔で目を逸らし、良くて小声でボソボソっと返してくれただけ。


 分かっていたけど、ちょっと寂しい。


「おはよー!」


 わたしが一人しんみりとしていた時、元気な朝の挨拶と共に一人教室へ入ってきた。あれはファイツ君。


「おはよう」

「おはようございます」


 そんなファイツ君に対し、女子達も挨拶も交わす。わたしも挨拶したいけど、迷惑になるかな。わたしと挨拶したって、サイテに目をつけられると可哀想だしなぁ。あいつさえ居なければ、全力で挨拶に行くのに。


「おっ、はよ……」

「…………」


 ん?なんだろう、ファイツ君に対して男子の反応が悪いような。なんか、私の時と同じ様に目を逸らしたり、まともに挨拶出来ない感じがする。……ファイツ君が可愛すぎて、うまくできないとか?


「おはよう」


 なんか変だなって思っていたら、また新しくクラスメイトが登校してきた。あれは、ルーカス君。


「…………」

「………………」


 ルーカス君に対しては誰も返事をしない。顔怖いから、皆避けているのかしら。そんな悪そうな人には見えないのだけれど。


「はーい、席ついてねー。ホームルームはじめるよー!」


 そうこうしてるうちに、先生が来て二日目が始まった。





「……ただいま」

「おかえりなさいませ、お嬢様」


 夕方。学校が終わり、わたしは寮へと帰って来た。帰って来たわたしを、部屋でアルディアーノが出迎える。


「……他の執事やメイドは校門で出迎えていたけれど」

「お嬢様でしたら登下校程度、お一人でもこなされると思いまして」


 登校の時もそうだったが、他の生徒は皆、執事やメイドが付き添って登下校をしていた。鞄や日傘などを持たせ、連れている者のことは意にも介さず歩いていた。


 でも、この執事は朝は寮の玄関、今は部屋の中でお出迎え。ずいぶんいい身分だこと。


「まあ、別にいいけどね。あんなの威張り散らしている様でみっともないし。それより、貴方。首尾はどうなの?」

  

 上着を脱いでハンガーへ掛ける。この制服を脱いでようやく、一日が終わったと実感する。


「首尾と言われましても、まだ始まったばかりでございます。成果と言える程のものはございません」

「……それもそうね。掃除や部屋の整理をしてくれているだけでもありがたいわ」

「ありがとうございます。お嬢様の方はいかがでしたか?」


 ふわっと温かい湯気と香りが。アルディアーノが淹れてくれた紅茶を受け取り、椅子へと腰掛ける。


「どうせ、貴方見ていたのでしょう?報告の必要ある?」

「私は所詮、蚊帳の外から眺めていただけでございます。実際にその場に居るお嬢様とは、感じ取れることが違いますので」

「そっ。でも、特別なことは無かったわ。授業もまだ始まっていないし、今週は説明ばかりよ」


 すっきりとした味と温かみが身体に染みる。たいしたことをしていなくても、慣れない環境と言うのは疲れるものね。


「ああ、でも、少し様子がおかしかったような気がするわ」


 朝感じたあの違和感。ファイツ君とルーカス君に対する皆の態度。時間が経つ程、皆露骨にあの二人を避けていた。話を聞こうにも、わたしも避けられている側だから、理由は分からずじまいだった。


「それはサイテのせいでございます。少々事件があり、男子生徒はお二人のことを避けるようになりました」

「どういうこと?」


 何故、ここであいつの名前が。あいつ、あの二人にも何かしたの?事件ってなに?


「では、昨日男子寮で何があったかをお話しいたしましょう」 


 そう言うと、アルディアーノは話し始めた。

 

 …………え、待って、男子寮?

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