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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-
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3.相対 -Encount-(3)

 乱入してきた桃色のポニテ―ルの髪型をした女性もピースメイカーの軍服を着ているが背中に契約陣があるため背中が露出し、細部のデザインが異なっていた。


 「エト姉さん!」

 「そこまでだよ、ステラ。君たちにも迷惑をかけたみたいだね」


 ステラと呼ばれたピースメイカーは飼い猫のように落ち着きを取り戻し、それを確認するとジャックの腕から手を放す。

 ジャックは大きく後ろに下がると銃をエト姉さんと呼ばれたピースメイカーに向けていた。


 「お前!」


 それを見たステラは怒りの表情を見せるが、それを制止させ、機械仕掛けの剣を地面に突き刺し手を放して穏やかな表情で言う。


 「安心して、君たちに危害を加えるつもりはないよ」

 「いきなり攻撃された上に魔法まで使われたんだ、安心できるわけがないだろ」

 「その通りだよね、本当にごめんなさい」


 ピースメイカーは無陣者を差別している人がほとんど聞いているため、こんなにあっさり謝り、頭を下げるとは思っていなかったジャックは動揺する。


 「エト姉さん、そんなことする必要ないよ」


 本来ならこちらの対応のほうが聞いた通りのピースメイカーではあるが、少し強めの声色でいう。


 「あなたも謝りなさい」

 「うう……、すいませんでした」


 そういってステラも不服そうに頭を下げた。

 ジャックはそれを見ても銃を向けたままだったが、間に入るようにライラックが近づき銃に触れる。


 「ジャック、謝ってくれたし、許してやれよ」

 「ラックはいつも甘いんだよ」


 文句を言いながらジャックは銃を収める。


 「ありがとう。あなたたちが守ってくれたんだよね」


 そういって白髪の美少女を見る。


 「はい、その通りです。エトワールさん」


 少女はエト姉さんことエトワールに近づく。


 「本当にありがとう、私たちここは初めてで迷っていたら、気付かないうちに見失ってしまったんだ」

 「そうだな、確かに表通り以外は迷路みたいで迷いやすいし、治安もいいわけじゃないからな」


 不機嫌なジャックは銃を抜いてはいないが警戒を解かず、返事をしない。しかしライラックは頷きながら気安く話す。

 そんなライラックにステラは睨みを利かせる。


 「エト姉ちゃん、早すぎる。やっと追いついた」


 そこにもう一人のピースメイカーの軍服を着た少女が現れる。右手の甲に契約陣とウェーブがかかった栗色のセミロングの髪に三人のピースメイカーの中では一番身長が小さく末っ子の雰囲気を感じる。


 「ごめんね、アステル」


 そんな三人を見て、ライラックは率直な疑問を確認する。


 「三人は姉妹なのか?」


 三人の雰囲気は姉妹に近いものを感じるが容姿は似ているとは言えなかった。


 「自己紹介がまだだったね。私の名前はエトワール・アルタイル。見ての通りにピースメイカーだよ。

 でこの子はステラ・デネブ。ちょっと喧嘩っ早いけど普段はいい子だから」


 紹介されたステラはそっぽを向く。その態度はジャックが知る一般的なピースメイカーに近いものだった。


 「最後に来た子がアステル・ベガ。私たちの後方支援をしてもらってるよ」

 「アステルです、よろしくです」


 人見知りなのか少し上ずった声で自己紹介する。彼女もエトワールと同じで差別意識はあまりない感じに見えた。


 「私たちは姉妹じゃないけど姉妹同然って感じかな。一応私たち三人でチームを組んでいる。

今回君たちに救ってもらったロザリア様の護衛と任務でここに来たんだ」


 最期に紹介されたロザリアと呼ばれた少女だが彼女だけはピースメイカーの軍服をきてなければ呼び方も様を付けられているためかなりのお嬢様なのかと思わせる。


 「ロザリア?」


 つい声が出たのかジャックが驚いたようにその名前を聞き返す。


 「どうかしたのか、ジャック?」

 「いや、なんでもない」


 ジャックはすぐに表情を戻して、抑揚ない声で答える。


 「それより君たちはこの街の出身?」

 「ああ、俺はライラック。それでこっちは……」


 ライラックはジャックのほうを見る。視線は合うがジャックは何も答えない。呆れながらもライラックが代わりに答える。


 「こいつはジャック。お互い狩人(ハンター)をしている」

 「そうか、息が合っているようだが二人はチーム、それとも兄弟?」

 「いや、チームも組んでないが長年の付き合いなのは間違いない。血の繋がりはないけど本当の兄弟と思ってるぜ」


 そういって肩を組もうとするライラックをジャックは躱す。


 「本当の妹がいるだろ」

 「照れるなって」


 エトワールは感心し、ジャックのほうを見る。


 「本当に仲がいいんだな。しかし、狩人(ハンター)は皆、君のような実力を持っているのか?」

 「いやこいつが特別強いだけ。こいつみたいのがぞろぞろいたらこっちの食い扶持がなくなる」

 「……酷くないか?」

 「それぐらいすごいって意味だから」

 「なるほどね、天才か」

 「……うるさいな、それよりいつまでこんなところで話しているんだ」


 いつの間にか空は茜色に染まり、裏路地は光が差し込む場所が少ないのでかなり暗くなっていた。

 空を見上げたエトワールは思い出したように眉を上げ、申し訳なさそうに言う。


 「その通りだね。しかし、恥ずかしいんだけど道に迷ってしまって……、できればギルドまで案内して欲しいのだけど……」


 ジャックは興味なさそうに歩き出す。


 「金にならないことはパスで」

 「悪いけど、ジャック……」

 「ああ、勝手にしろ」


 考えていることがわかっているため振り向かずに返事をして、歩き去るジャックを見送る。


 「俺が案内する。ギルドまででいいんだよな?」

 「ありがとう、それよりこいつらはどうするの?」


 エトワールの視線の先にはロザリアを襲った二人の男が倒れている。


 「あー、悪いけどギルドまで運ぶのを手伝ってくれないか。報酬の半分は渡すからさ」


 ライラックは二人の男の両腕を縛り、一人を担ぐ。


 「問題ない。しかし、さっきの彼からは随分信頼されているんだな」


 エトワールは二人のやり取りを見て笑みを浮かべる。


 「まっ、兄貴だからな」


 そう言ってライラックは少し笑みを浮かべながら道案内を始めた。

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