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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-
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3.相対 -Encount-(2)

 攻撃的な言葉がライラックの声を遮る。

 声の方向を見ると細剣を持った藍色のショートヘアの女が勢いよくこちらに向かってきていた。

 ジャックもすでに動き、二人の間に立ちふさがり抜いた銃の銃身で細剣を受け止める。


 「違う、俺たちはこの子を……」

 「この人たち、違う」

 「邪魔するなあああ!」


 ライラックと少女の言葉が一切通じていないのか、女はジャックとライラックを完全に敵と認識しているようで殺気を持った細剣を振るう。

 ジャックは冷静に二丁目の銃を抜く。そして細剣を自由に振るえなくするために組み付けるような近距離を保ちつつ、裏道の狭さを利用して銃を器用に順手逆手と短剣のように扱いながら細剣を捌く。


 ライラックはそんな様子を見て、ジャックがある程度優勢に動いているが銃を撃たずに銃身で殴るような攻撃しかしないことに疑問に感じた。

 ジャックの戦い方をライラックは何度か目にしているがかなり独特な戦い方をする。それは賞金首を生きて捕らえるために身に付けた技であり、十五歳でまた発展途上の体格による大人たちとの戦いでの筋力不足を補う技術だ。銃を見せることによる牽制と警戒、かつ銃身を長く重工にすることで打撃力を加え、銃を持ちながら近接で殴り合う戦い方を編み出した。


 そんなジャックでも近接戦を不利と考えれば手足狙いで銃を撃つことはよく行う。相手が女だからと言って油断や慈悲を見せることもない。

 そして今戦っている相手はジャックの狙い通り思い通りに動けていないがかなりの熟練に見える。それなら銃を撃って遠距離牽制、もしくは行動不能にしたほうが間違いなく有利だ。

 しかし、女の服装を見て理由がすぐに分かった。

 白を基調とした軍服によく見ると肩の部分には穴が開いており、素肌が見える。そこには円陣に囲まれた紋様がある。それは契約陣と呼ばれる魔法が使える証であり、誰もが知っているウィズピースのピースメイカーである。


 ピースメイカーは精霊と契約し魔法使う者――精霊契約者(マギア)のみで構成された集団であり、精霊契約者(マギア)が最も憧れる存在と言われている。

 しかし、リムレイでの評価は精霊と契約していない者を差別するように見下し、世界を支配している精霊契約者(マギア)の組織と嫌われている。


 そしてジャックが相手に銃を撃てないのは彼が狩人(ハンター)であることだった。

 ギルドはウィズピースの梯子役に作られた組織であり、支援も受けている。

 事故でもそのピースメイカーを銃で撃ち、大怪我を負わせれば問題になることは間違いなく、そうなればジャックも狩人(ハンター)ではいられなくなる。

 そのためジャックは気絶させようと近距離戦を行っているライラックと察した。


 何度か声をかけてみるものの相手には言い訳に聞こえているのか聞く耳は持ってもらえず、少女はその気迫に少し怯えている。怯えている姿の少女がいるせいかピースメイカーからすれば怯えさせているのはライラックたちになっているようだ。


 加勢しようにもこの狭さは真正面からではジャックの邪魔になる。挟み撃ちしようにも通り抜けることは難しいだろうし、別の道から回り込むにも時間が掛かる。何より、少女が怯えライラックの服を掴んでいた。


 女は埒が明かないと考えたのか大きく後ろに下がり、手のひらから小さな魔法陣が出現する。魔法陣を細剣に撫でるように触れると細剣に空間が歪んで見えるほどの風が纏わりつく。


 「ガキのくせに」


 ピースメイカーの戦い方として有名な戦い方で魔法を飛ばす以外にも、魔法を武器に纏わせることがある。

 ジャックは舌打ちとともに銃口をピースメイカーへ向ける。

 風の細剣を片手に突進してくるピースメイカーに対して、ジャックは躊躇なく発砲する。

 ピースメイカーはわかっていたのか足元に魔法陣を出現させ、人とは思えない跳躍を行う。

 ジャックは空中に向け、二丁の銃から銃弾を放つが風魔法による空中機動により回避される。

 一見、適当に撃っているに見える銃弾だが、その発砲の間隔に妙な間が空いていることに気付き、そしてジャックの特に焦った様子もなく、いつもの無表情を保っていた。


 ジャックは風魔法を見た瞬間、相手は銃弾を回避する方法を持つと判断した。そして、あえて銃を撃つことにより相手に回避させ、攻撃を誘導しようとしていること。この路地が狭いこともあり、相手も大きな動きができないことも利用しているのだ。


 ジャックの精霊契約者(マギア)相手に冷静に状況を分析し、地形の利用。そして対戦したことでもあるかのような動き。その行動の意図を理解し、実行する実力にライラックは言葉を失い、見守ることしかできなくなっていた。


 「こいつで終わりだ!」


 すべての銃弾を回避し、細剣の射程に収めたのか、ピースメイカーは風魔法を利用した突進を行う。

 しかし、その動きはジャックも想定していたのか銃を構え迎え撃つ態勢をとる。


 「そこまで!」


 ライラックと少女の真上を飛び越え、ジャックとピースメイカーの間に着地すると細剣を電撃が纏った機械仕掛けの剣で弾き飛ばし、ジャックの腕をもう片腕でがっしりと捕まえた。

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