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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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35.不穏 -Restless-

 もう隠す必要はないと考えたジャックは、いつもの停泊所に船を止める。

 エトワールにはステラとアステル、そしてライラックにはジャックに支えられながら、船を降りて街に入る。

 ライラックは「大丈夫」とジャックに一言告げて、自らの足で歩きだす。


 すぐに街の表通りに入ったが、その様子にその場にいた全員があることに気付く。まだ日も暮れていないのに人通りが異常に少なかった。

 街に住むジャックやライラックだけではなく、エトワールたちですらそれを理解できた。


「活気のある街とは言えないが、ここまで人がいないのは寂しく感じるな」


 シールウッドの言葉にジャックが頷き、ライラックが答える。


「魔獣の情報が回って家に避難しているのか?」

「まあ、ギルドからそう言った連絡が出ているとは思うが、前はそれに乗じて稼ごうとする奴がいたんだが……」

「ここで立ち話をしてもピースメイカーが目立つ、ギルドに急ぐぞ」


 ジャックは周りを見渡しながら、少しだけ早足で再び歩き始めた。

 全員がジャックを先頭に進み始めるが、その速さにエトワールとライラックは、歩幅を合わせるのに懸命になり、シオン、アステル、ステラはそんな二人を心配しながら、誰も口を開かずについて行く。

 しばらく、歩き続けてジャックは人が少ないだけではないことに気付く。


 ここまで歩いていれば一人や二人は必ずすれ違うはずのある人影が、誰一人見かけない。

 この街ではあり得ないと言える風景であり、何か異常事態が発生していると考えるべきとジャックは注意深く辺りを見渡す。

 同じことはシールウッドも勘づいていたが、ライラックは周りを見る余裕がなくわからなかった。

 気付いた二人の目が合い、シールウッドが先頭のジャックに近づく。そして周りには聞こえないくらいの小声でジャックに聞く。


「ジャック、この異常事態気付いたか?」

「……ああ、狩人だけが街にいない」


 ジャックも同じくらいの小声で返事をする。シールウッドはその反応から会話を続ける。


「だな、こりゃ詳しく調べる必要がありそうだ」

「なにか策が?」

「まあな、俺はギルドに寄らず、別方面で探ってみる」

「わかった、俺はギルドのほうがどうなっているか確認する」

「合流はどうする?」

「俺とジョーカーの船で。そこなら誰も来ないだろ」

「りょーかい」


 シールウッドは勢いよく後ろに振り返ると、明るい口調で全員に向けて話す。


「悪いけど、俺は少しほかのやつらに報告することがあったから、別行動させてもらうよ。

 話はあとでジャックから確認するからギルドへの報告よろしく」


 そう言ってシールウッドは軽い足取りで風のようにその場から立ち去った。

 すぐに状況が理解できずに立ち止まる全員にジャックが目を覚まさせるかのように言う。


「立ち止まってないで急ぐぞ」

「……あ、ああ」


 ライラックの生返事のあとに再び全員がジャックの後に続く。

 そのままギルドまで誰もしゃべらずにたどり着くことは出来たが、その間にも狩人の姿は一つもなかった。

 外から見たギルドの様子は一度だけ戻ってきたときと様子は変わらないが、中からのしゃべり声は一つもなかった。

 ジャックは警戒しつつ、恐る恐るギルドの扉を開くと中には、普段よりやや多い数の狩人が席に静かに座っていた。

 その異様な雰囲気はエトワールたちにも伝わり、嫌でも警戒心が高まった。


「なんだか、嫌な雰囲気ね」


 ステラの小さな呟きにアステルは頷き、ロザリアとシオンからはその雰囲気に圧倒されたのか、エトワールとライラックに近づき、隠れるように身を小さくした。


「あんまり、長居できる雰囲気じゃないな」


 ライラックの言葉にジャックは同意し、ライラックのみに聞こえるように伝える。


「俺たちは外に出て待っている。報告だけして彼女たちはラックの家に匿ったほうがいい気がする」

「そうだな、じゃあ行ってくる。すぐに戻る」


 ライラックはそのまま一人で受付に向かっていく。

 ジャックはエトワールたちの方に振り返り、短い言葉で伝える。


「俺たちは外で待っていよう」

「えっ……、ここまで来たのに」

「わかった」


 ステラは不満そうに言い返そうとしたが、周囲の様子から何となく察したエトワールは即答し、ライラックを置いて残りのメンバーはすぐ後ろのギルドの扉から外へと出て行った。

 外に出て少しだけギルドの建物から離れると、ステラが開口一番にジャックに聞く。


「どうして、外に出たの?部屋でゆっくり座りたかったのに」

「……お前、あの場で何にも思わなかったのか?」

「疲れてたんだからわかるわけないでしょ」


 ステラの単純な返事にジャックは頭を抱えるが、察していたエトワールはジャックをフォローする。


「かなり険悪な雰囲気だったね。殺気も感じたよ」

「はい、私も怖かったです」


 同調するようにアステルも続く。エトワールはジャックに確認を取るかのように聞く。


「シールウッドとジャックが何か話しているのは気付いていたけど、今の状況に関係あるのかな?」

「まあな、街に人が少なかったが狩人が誰もいなかった。だから、俺はギルド、シールウッドは別方面から状況を確認することになった」

「なるほどね」

「ラックが戻り次第、あいつの家にあんた達を匿うことにした。もうここで置いて行ける状況でもなさそうだしな」

「確かにその方がいいね。荷物も今は家にあるし」


 エトワール、ステラ、アステル、ロザリアはその言葉に納得し、ロザリアとシオンは殺伐とした雰囲気から解放されたことでほっとしているようだった。

 それから残りのメンバーはライラックを待つことになったが、そこにシオンはジャックの裾を掴み、心配そうにジャックを見上げながら聞く。


「ねえ、ジャックも私たちの家に来るの?」

「ラックが戻り次第、俺はギルドに行ってもう少し情報を集める。

 ピースメイカーがいないほうが彼らもまだ話しやすいだろ」

「じゃあ、そのあとに家に来るんだよね?」


 執拗に家に来ることを勧めるシオンの言葉にジャックは首を横に振る。


「いや、そのあとは俺の船に戻ってシールウッドと情報交換をする。明日の朝、聞いた内容を伝えに家に向かう」


 シオンは少しだけ寂しそうにうつむくがすぐに心配させまいと顔を上げる。

 今は落ち着いているが、父親の死やこの状況が彼女の中で大きな不安になっているのだと、ジャックは思った。本当は傍にいてやりたいと思っているが、状況がそれを許してくれそうになかった。


「……うん、わかった」


 ジャックはエトワールたちの方を向くと先ほどの事も含めてこう伝える。


「悪いけど、あの魔獣……魔王の話は明日の朝にしてくれ」

「わかったよ、私たちもゆっくり休めるのはありがたいよ」


 エトワールの顔からはいつもと違って疲れが見えていたため心底そう思っているとジャックは感じた。

 その後、全員はライラックが戻ってくるのを静かに待ち始めた。

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