33.おとぎ話 - Fairy Tale-
昔々、精霊と人間がともに暮らしていた、遠い過去のお話。
二つの種族は互いに尊重し合い、ともに歩み、助け合いながら毎日を過ごしていました。
そんなとき、一人の精霊は人間の不思議な心に興味を持ち、自分もそれを手に入れたいと考えました。
そして、その精霊はなんと人間を大きなお口で丸呑み、食べてしまったのです。
しかし、精霊は人を食べても人の心を手に入れることは出来ませんでした。
ゆえに精霊は思いました、「これだけじゃ足りないんだ」と。
それから、精霊は沢山の人間を食べ続けました。
何度も。何度も。何度も。何度も。
その精霊は沢山の人間から恐れと憎しみと怒りを向けられました。
そんな感情を向けられた精霊は自分の中に何かが生まれたのを感じました。
しかし、それが何なのかはわかりませんでした。だから、また精霊は人間を食べ始めました。
そして沢山の人間を食べた魔王の姿は、真っ暗な闇のように染まり、人々はその精霊を『魔王』と呼ぶようになりました。
そして『魔王』は夜に溶け込むように、自身に向けられる恐れと憎しみと怒りを集めました。
そんなとき精霊の王様がある予言をしました。
「『魔王』と相対する『希望』が現れる」
嘆き悲しむ人々は強く祈り、願いました。その『希望』が早く生まれることを。
それから幾星霜、人々の願いをかなえるかの如く、眩い光を纏った人が現れました。
その姿は沢山の人々に希望と勇気を与え、『勇者』と呼ばれるようになりました。
『勇者』は輝く剣と盾を身にまとい『魔王』へと戦いを挑みます。
最初は『勇者』の力は『魔王』に遠く及びませんでした。
それは『勇者』が沢山の人を助けていたからです。
何度も傷つきながらも『勇者』は『魔王』に挑みます。
そんな姿を見続け、助けられた人の思いは『勇者』の元に集まり、その剣と盾は太陽の輝きを放ちます。
そして、その剣は山すら吹き飛ばし、その盾は決して傷つかない。
皆の思いが『勇者』の力と繋がったのです。
最後の戦いは沢山の朝と夜を繰り返します。
しかし、人々の思いが恐れと憎しみと怒りから希望へと変わり、『勇者』はついに『魔王』を打ち取ったのです。
その日は誰もが喜び、町中がお祭りとなりました。
そこで精霊の王様が言いました。
「次の魔王を生まないために新たな世界を作る」
そして世界は精霊の住む世界と人間の住む世界に分けられたのです。




