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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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23.調査 -Investigate-

 小型船から戻ってきたジョーカーだが、周りはその戦いの興奮から、浮足立っているような雰囲気がある。

 しかし、普段から口数の少なく、表情もマスクで隠れているため話しかけていいのか、誰もわからなかった。

 そこにそんな雰囲気を壊すようにサルビアがジョーカーに近寄り、称賛の言葉を送る。


「さすがとしか言いようがないな。こんなんじゃ後輩たちが出番なくて泣いてるぞ」


 サルビアの言葉にジョーカーとサルビアよりも若い狩人が苦笑いをする。


「サルビアの指示もあるからだ。それにすぐ作戦通りに動けるメンバーも居たから。俺一人の手柄じゃない」


「謙遜も過ぎれば嫌味に聞こえるぞ。でも、まあ契約獣前にいい演習ができたと思うべきか。

 チームとしてもまとまっている」


 サルビアは周りを見渡しながら、周りのメンバーに親指を立てる。

 その結果、船の雰囲気は非常によく契約獣が相手であっても不安を誰も感じていなかった。


「そうだな、リーダーが優秀かつ、気さくだと自然に周りの指揮は自然に上がる。それはサルビアが築いたこれまでの信頼があってこそだ」


 普段からジャックと二人で行動していることが多いため、全体をまとめ指揮をする能力はサルビアより劣るのはジョーカーも理解していた。それはこのような雰囲気作りも含まれる。


「そりゃ、息子もいるんだし俺もかっこいいとこ見せないといけないからな」


 ジョーカーと対等に話すサルビアの様子を周りの船員は物珍し気に眺めている。

 二人とも狩人としては頂点に立つ者同士で、同じ作戦に参加することがほとんどない。

 さらに、最近はジョーカーもジャックとの作戦が多く、ギルドでも見かけることが減っていた。そのため、彼らにとってはとても貴重な時間になった。


「それより、ここにサンドワームがいるのは明らかに異常だ。何かしらの要因で移動してきた、もしくは誘導されたと考えるのが妥当だ。連絡でこの場所を伝えてきたことからして、この戦闘は狙った作為的なものだ。

 これからどう動く?」

「いったん戻るべきだな。ジョーカーがいるのを知って、この程度はやはり狙いは俺たちではないだろう」


 そんな二人の話に割り込むように一人の狩人が話しかけてくる。


「サルビアさん、他の船から連絡が来たんだが、少し離れた場所にサンドワームの死骸が見えるって確認しに行くか聞いてますが」


 サルビアは少し考えながら答える。


「死骸か、もしかしたらここに誘導してきた相手の手掛かりが残っているかもしれない」

「それなら、俺が小型船で行ってこよう。まだ砂漠も燃えているから全体で移動となる時間が掛かる。

 サルビアは船をこの場から少し離れて、すぐに移動できるように全体の指示を」


 ジョーカーの提案にサルビアは全体に指示を飛ばす。


「すべての船に連絡を取れ。この場から離れて安全を確保する。それと小型船を一つ、ジョーカーに渡してくれ」


 それぞれがサルビアの言葉に従い行動を開始する。


「お前の事だから心配はいらないと思うが気をつけろよ」

「ああ、信号弾も持っていく。死骸確認次第すぐに戻る」


 そう言ってジョーカーは砂漠に付けた小型船に乗り込むと手慣れ動きでエンジンを起動させ、サンドワームの死骸がある方向へと進んでいった。

 ジョーカーが去っていった中、サルビアは今までの状況を再び冷静に分析する。

 今回の新種の魔獣と言われていたものだが、サルビアは契約獣が現れたと考えていた。

 それは討伐に出て戻らなかった狩人達が自分と既知であり、その実力も保証できる者だったため、獣と模様の情報から契約獣と予想した。


 だが、じっくりと考えれば、いくつかの違和感がある。

 一つ目に新種の目撃情報だが、誰がどこで見たのかの詳細が曖昧だったことだ。

 狩人が見たなら、その場所の正確な位置や行動の記録を取るはずだがそれがない。そして、そこから今回の討伐隊に志願するだろうし、情報に金を要求する奴もいるが、それがなかった。


 そうなると街の一般人が見た可能性を考えるが、街の外に気軽に出る、それどころか魔獣を見て動揺し、正確な情報がギルドに送られない可能性のほうが高い。

 このことから最初に魔獣を見つけたのは狩人でも一般人でもなく、砂漠に出ることができる程度には知識、実力があり、ギルドがある程度、情報を信用する者になるとある組織――クロウが思い浮かぶ。


 また、もう一つ気にあるのが、前触れが一切なかったことだった。実際にサルビアこれまでに契約獣と戦ったのは二度しかないが、一度目は風属性を持ったグリフォンで見つかるまでに、砂漠で多くの砂嵐が頻発した。次は氷属性の大蛇だがこれも砂漠では見ることがない氷がオアシスに張っていたりした。

 起きてほしくは考えていないが、前触れとなる自然災害が一切ない。


 では、なぜ実力のある狩人が討伐に出て、戻らなかったのかを考えると一つの仮説が浮かぶ。それは獣ではなく人にやられたということだ。今回の討伐隊の最初のルートは、行方不明になった狩人の通るであろうと予測したルートを辿っているが、痕跡が見つかっていない。


 もし、獣にやられたと考えるなら死体が見つかってもおかしくはないはずなのに何一つそれがない。そうなると誰かが隠蔽した可能性も考えられる。


 何より、今回の情報も作為的なものがあり、ジョーカーとサルビアも警戒はしていたが、ここまで安直に来るとは思っていなかった。


 二人が警戒する経緯に至ったのはライラックからジャックとクロウに接触があったと聞いたからだ。もともと少しずつ活発になっていることには気づいていた。だが直接接触に来るとは考えておらず、それもこの作戦が決まった後にそのことを知った。

 そのときには討伐隊のメンバーはほぼ決まっていたため、メンバー全員の身元を完全に確認することは出来なかった。


 狩人と言っても一枚岩ではない。クロウから何かしら利益を得ているものも紛れ込んでいるかもしれない。

 その点に関して、二人は最大限の警戒を行うとともに、信頼できるある人物を討伐隊のメンバーに入れた。

 彼からの秘匿の連絡からは今のところ怪しい行動をしている人はいないとのことだった。

 そして、今回のサンドワームの襲撃はあまりにもこちらの戦力を軽視しすぎている。こちらは眼中に入っていないようなようだった。


「やはり、狙いはピースメイカー側か。ラックをこっちに連れてきたのはまずかったか」


 ピースメイカー側にはジャックが残っている。彼の実力はサルビアも知っており、街にいるチンピラ程度ならすぐに制圧できる。それにピースメイカーも精霊契約者であり、戦闘もできる。

 ジョーカーほどではないが向こうの戦力もこちらに劣らずのものだ。

 年寄りの杞憂ならそれでいいのだが、ここまでの拍子抜けの計画に不安を覚える。


「早く戻って来いよ、ジョーカー」


 サルビアはジョーカーの向かった方向に顔を向け、小さく呟いた。

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