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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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20.裏 -Backbone-

 五隻の中型船が並んで砂漠を移動する景色はもう目にすることがないと思いながら、ライラックはその姿を甲板から眺めていた。


「ライラック……だったか?」


 名前を呼ばれて振り向くと先ほどシールウッドに口説かれていた女性が立っていた。


「ああ、さっきの……えっと」

「ラベンダーだ。どうだ、周りの様子は?」


 ライラックの乗っている船は後方部隊の為、他の船より船員が少なく、彼女とシールウッド、そしてライラックの三人の船だった。

 その分、ほかの船より小型で速度が出せる。


「問題ない。というかいつも通り過ぎる。本当にいるのか、その魔獣」

「さあな、近くで実際に見たやつはいない。今回の情報も正直怪しい」

「ギルドからの情報なんだろ?怪しいって?」

「最近のギルドがクロウと秘密裏に関係を持ってるって噂。そして今回の魔獣の情報もクロウから来てるって話だ」

「そうなのか?……そういや、この前、ジャックがクロウのリーダーが変わったって言ってたよな」

「その噂は出回っている。確かに最近のクロウのメンバーの動きも変わってきている」

「らしいな。町で暴れるやつも見なくなった。まともな組織にはなってきているのか?」


 ライラックの言葉にラベンダーは険しい表情を作る。


「お前らは知らないと思うが十五年前にクロウとギルドで大規模の戦闘があった。砂漠の大火災という言葉くらい聞いたことがあるだろ。その時のやつらの所業は悪魔、いやそれ以上のものだった。だから私は奴らを信用できない。

 それにその戦闘が起こる前も異様な静けさがあった。今の街の雰囲気はそれに似ている」


 ライラックもその言葉は知っていた。最初は狩人とクロウの小さな小競り合いであった。だが規模がどんどん大きくなり、クロウが街の中で大量の爆薬を使った。その結果、火は一日中燃え、広がり、街の一部を廃墟にし、関係ない人も多く巻き込まれた。


「あいつらがまた何かしようとしてるってことか」

「その可能性はある。魔獣だってここまで情報がないのはおかしい」

「意図的に隠していることがあるってことか……」

「だからこの作戦も警戒したほうがいい、ということだ」

「なるほどな。……だが、どうして俺にその話を?それにその話をウッディにも……」

「信用できない。それにあいつはクロウと何度か取引をしている。

 さっき彼と話していたようだが何か探りを入れられるようなことを言われなかったか?」


 シールウッドからはそんな様子はなかったが、ウィズピースと関係については言及されたことを思い出す。その言葉からもしかしてシールウッドはウィズピースの何かに探りを入れたのではないかと考える。

 ライラックの様子を見てラベンダーは納得したように呟く。


「……思い当たる節があるようだな」

「もしかして、俺の噂話してる?」


 タイミングを見計らったようにシールウッドが二人に近づいてくる。


「気を付けておくんだな」


 ラベンダーはその言葉を残し、シールウッドと入れ替わるようにその場を離れた。


「あれれ、照れているのかなあ。ラック君、俺ってもしかして脈あり?」

「いや、ないと思うけど」


 さっきと変わらないテンションで喋るシールウッドに少し困惑しながらライラックは答える。


「むむ、もしかして悪口でも言ってた?」

「そんなことは……」

「いや、ラック君、おやっさんと似てるな。すごい顔に出てるぞー」


 ライラックはジャックと同じくらいのポーカーフェイスを決めたつもりだったのだが全く隠せていないらしい。


「クロウとの関係とか聞いた感じぃ?」


 シールウッドは調子を全く崩さず、ライラックの考えていたことをズバリと当ててくる。


「いやあ、ほんと君はわかりやすいな。確かにその話はほんとだよ。俺はクロウと何度か取引をしたことがある。

 なんなら砂漠の大火災はクロウ側にいたしね」


 その言葉にライラックは表情を取り繕うことを忘れ、シールウッドを睨め付ける。


「そう睨むなって、俺は生き残れる確率が高い方についただけだ。それは今の狩人を見ればわかるだろ」

「……どういうことだよ」

「おやっさんは大体二十年、ジョーカーが現れたのは確か十五年前だったか。二人ともかなり長い狩人だがその後に続く世代の狩人で彼らのようなカリスマを持った狩人を知っているか?」


 ライラックは今までに出会った狩人を思い出すが、ジョーカーやサルビアのように多くの狩人やギルドにまで影響力を持つ人はいなかった。二人より上の世代になればマーザがそれにあたるが、サルビアとジョーカーから今までの期間に名を挙げた狩人はいない。


「思いつかないだろ?

 それもそうさ、可能性があったやつは皆、砂漠の大火災で死んだんだからな。

 そして皆、俺の仲間だったよ」


 その言葉に一瞬だがシールウッドの顔から軽薄さが消えたがすぐに元の表情に戻る。


「でも、あんたはクロウ側に付いたんだろ。仲間を裏切ったんじゃ」

「そう見られても仕方がないが……何より命あっての物種だろ?あと俺はクロウの仲間になったわけじゃない。さっきも言っただろ、利用って。俺はクロウの力を利用して生き残っただけだ。おかげで街の連中からは信用されちゃいないけどな」

「どうして親父はこいつを……」

「さあね、まあ誘ってくれたおやっさんには感謝してるし、その分だけは働くさ」


 そう言ってシールウッドは手を振りながらその場を立ち去る。

 ライラックはラベンダーの話と、クロウ側にいたことからシールウッドのことを疑ったが、それでも彼と話していて悪い人間だという感じはしなかった。根拠はないが彼が言う生き残るため、そして利用したという言葉に嘘ではないと思った。親父も同じ考えだからこの作戦に彼を呼んだのかもしれない。


「こういう時は直感を信じるのが一番だな」


 そう呟き、ライラックは砂漠を進む船の上で再び周囲の警戒を始めた。

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