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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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19.出会い -Fastcontact-(2)

 ジャックたちと別れてからはそれが罪悪感のように引っかかり、仕事に集中できていなかった。


「……おーい、なにぼーっとしてんだ」


 気だるげな声に対して強く背中を叩かれライラックは現実に戻される。

 振り返ると無精ひげを生やし、ボロボロのカウボーイ風の男が話しかけてくる。しかし、その装備は丁寧に手入れされており、綺麗だった。


「えっと、あんたは……?」


 今回、優秀な狩人が集められており、ライラックの知っている人間が多かったが話しかけてきた男をライラックは知らなかった。


「あー、俺ってギルドにほとんど顔出さないからなー。シールウッド、ウッディって呼ばれてる」

「ああ、よろしく、俺は……」

「サルビアのおやっさんの息子だろ、知ってる知ってる。昔いろいろ世話になったぜ」

「そうなのか」

「うん?気になる感じ?まあ、俺はおやっさんに頼まれた君の御守り役だけどな」

「はあ?親父そんな事頼んだのかよ」

「まあ、俺たちは後方部隊だからほとんど前線に出ることないから御守りする必要はないと思うけどね。

 なんせ前線にサルビアとジョーカーが出てんだから、こっちまで仕事が回ってくるかって話」

「まあ、そうだよな」


 ライラックはサルビアとジョーカーたちとは違う船に配属されていた。それも後方支援の船のためシールウッドが言ったように前線に出ることはないと薄々思っていた。


「ってことでちょいと雑談しよーぜ。気になる噂を聞いてんだ」

「噂って?」

「ウィズピースと組んで何か企んでる話」

「確かに組んではいたけど悪い奴らじゃなかったぞ」


 特に表情の変化もなくあっさり答えるライラックに口笛を鳴らしてシールウッドは笑う。


「おいおい、まさかそんなあっさり返されるとは俺も予想外だぜ」


 ライラックは強めの口調で返す。


「確かにウィズピースを警戒するのもわかるけどあいつらとは普通に話せたし、俺たちの事も見下したりはしなかったぞ」

「あー、悪い悪い。俺もウィズピースが嫌いなわけじゃねーんだわ。だけどそういう系の噂は悪意を含むような形で広まりやすいのよ」

「そうか……、詳しくはどう噂されてるんだ?」

「はっきり言うならウィズピースがサルビアの倅とジョーカーの弟子に関係を持ち掛け、街を管理しようとしてるって感じだな」

「さっきも言ったけどあいつらはそんなこと考えてない」

「かもな。でも周りからはそう見えちまうんだよ。それにお前とジョーカーの弟子に接触したのも印象が悪いんだよ」

「どうして俺たちと接触することが?」

「当然だろ、ジョーカーにサルビア、その二人は狩人の中でも一時代を築いたと言ってもいい奴らだ。その弟子であるお前ら二人は次世代の狩人をトップに立つ存在だと思ってるやつは多い。それがウィズピースに懐柔されたとしたらこの街の未来に不安に思うだろ」

「俺はまだそんなことはない。現に今も後方部隊に入れられるだろ」

「親の心子知らずとはまさにこのことだな。お前に期待してるからここなんだよ」

「……そうなのか?」

「へっ、まあお前さんのことも一人前の狩人と認めてるってことだよ。


 だからこそ先輩狩人の忠告として聞いておけ。ウィズピースと関わるのは構わない。だが信用はするな、利用するつもりで関われ。お前がこの街のためと思うならな」


「街のためならってそれならあいつらとの協力もできるだろ」

「確かにそうかもしれない。でもあいつらの考えるいい街と俺たちにとってのいい街は同じなのかな」

「どういうことだよ?あいつらは俺らとの共存を、差別をなくそうと……」

「なるほどねー、そう言われたのか。だが、それができるなら今頃俺たちはこの街にいないぜ。

 考えても見ろ。どうしてこの街は生まれた?差別もだがそれだけじゃない。多少の不自由はあるが都市で生きることもできるのにこの街に来た奴だっている。

 俺は一度だけ都市に行ったことがあるがあれは精霊契約者ためだけの街だ。俺たちは眼中にもないぜ」

「だけど、次は……」

「そうまた次の街、精霊契約者がいない街が生まれるだけだ。

 そもそもあいつらと俺たちとじゃ価値観が違いすぎる。同じ理想を持つなんて不可能ってもんだ。

 お前もわかるだろ、すべての人間がわかり合えるわけじゃない。それは俺たち魔法の使えない者同士でもあり得る話だ。

 現にウィズピースは同じ契約精霊者の集まりであるマギアトゥールと敵対しているし、この街もギルドとクロウでお互い牽制しあっているだろ」


 シールウッドはライラックの肩に腕を回して気だるげな雰囲気が抜けた言葉で伝える。


「お前もこの先、狩人としてやっていくなら理想より現実を追いかけろ。夢見てちゃ誰かに利用されて死ぬぞ」


 その言葉と似たようなことをライラックは父親にも言われたことがある。シールウッドもこの街で生きてきた経験から話していることもわかった。

 ライラックにも理解できないわけではない。だがそれを認めてしまえば後戻りができなくなる気がしていた。


「おい、お前らこんなところでなにサボってる!」


 二人が声の方向に顔を向ける、怒りの表情でこちらに詰め寄る女性がいた。

 怒りを表している彼女に対して、ライラックは焦りの表情を見せるが、シールウッドは先ほどまでだるそうな喋り方から急変して軽口に変わる。


「悪いね、ハニー。彼が緊張しているみたいでアドバイスしていたのさ」

「今すぐのその口を閉じるんだな。

 それより、さっきギルドからの伝令が来た。ここから東にある砂丘でターゲットの目撃情報があったらしい。

 前の船にそれを伝えて移動する、準備しろ」

「ああ、君のためなら喜んで。それより仕事の終わったあと時間は……」


 シールウッドの話の途中にもかかわらず、女性は容赦なく拳を振るが彼は躱した上でその手を握りしめ言葉を続ける。


「情熱的な返事だ。これはオーケーということだね」


 女性はシールウッドの手を振りほどくと敵意をむき出した状態で睨み付ける。


「お前に時間を割くくらいなら魔獣とデートしたほうがましだね」


 そのまま、女性は早足でその場を立ち去る。

 その様子を引いた様子で見ていたライラックはただ沈黙していたが、我に返りシールウッドに聞く。


「さっきの人、ハニーって呼んでたけど……もしかして奥さん?」

「俺にとってすべての女性が宝だ。だからこそ敬愛の意を込めてハニーと呼んでいる。

 そういえばここに来たピースメイカーは全員女性と聞いたが今度紹介してくれないか?」

「えっ……、ん、あはは、あいつらがいいなら」


 先ほどの話がまるで嘘のようなシールウッドの言葉にライラックは空返事で対応するしかなかった。

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