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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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19.出会い -Fastcontact-(1)

 甲板から眺める砂漠の風景は代わり映えしない。それは退屈な作業であるのは間違いないがライラックがそれに集中できていないのはそれ以外の理由があった。


「……聞くべきじゃなかったよな」


 ライラックが考えていたのはジャックの過去を少し知ってしまったことだった。

 ジャックからは親がいる雰囲気がなく、ずっと孤児か奴隷としていたところジョーカーに拾われたと思っていた。マーザは母親がどうなっていたか言っていないがきっともういない、死んだ、いや殺されたのだろう。


 ライラックもシオンが生まれたばかりの頃に母親が病で亡くなったが、殺されたとなればその気持ちは察するにはあまりにも辛かった。殺されたとは言わなかったがあの時の様子とジャックと出会ったときのことを思い出せばそれが容易に予想できた。


 ジャックと初めて会ったのはちょうど八年ほど前になる。

 それはサルビアとジョーカーが仕事で長期の協力関係を結んでおり、よく家に招待していたときにジャックを連れてきていた。

 ライラックも親に同年代の子供と言われ、何度か様子を見に行ったが部屋の隅で本を読んでいるか、外の空き地で訓練をしているだけだった。いつも同じ場所で同じ行動を繰り返しているだけなのにその瞳は血走り隈で縁取りされ、その手はまめがつぶれ包帯に血が滲んでいた。


 その様子は今でも鮮明に覚えている、ライラックにとっては忘れることは一生できない。子供のライラックでもわかる恐怖を与えるものだった。

 そんな姿のジャックにライラックは話しかけず、関わることはなかった。ジャックと関わるきっかけを作ったのはライラックでなくシオンだった。


 最初はシオンがジャックの近くでその姿を見ているだけだった。シオンがジャックのもとに行くのはまだ子供でその恐怖が理解できないから、ただの好奇心からだと思っていた。だからライラックは妹を守るため何度もその場から離そうとしたこともあった。

 しかし、シオンにはその瞳と手、雰囲気に恐怖なんてものを感じていなかった。本人に聞いてもわかってはいなかったが子供だからこそ直感で一人にしてはいけないと感じ取ったのかもしれない。実際に事件は起こった。


 ジャックがいつもの場所にいなかった。ライラックはそのことを気にはしていなかった。しかし、同じくシオンもいないことに気付いた。ライラックはすぐにサルビアとジョーカーに二人の事を伝え、周辺の捜索を始めた。


 二人は家から少し離れた場所に居て、すぐに見つかったがシオンは大泣きしており、ジャックは意識のない状態だった。そしてすぐ傍には毒蛇の死骸が見つかった。

 シオンが泣き止んだ後、話を聞くとどうやらジャックがいつも身に着けていたマフラーを外して訓練していた。そこに強い風が吹きマフラーが流されていったがジャックはそれに気づかず、シオンは一人でそれを追いかけていった。

 シオンはマフラーを拾うことは出来たがすぐ近くに毒蛇を見つけてしまい動くことができなくなった。

 そこにジャックがシオンとの間に割り込み、持っていたナイフで蛇を攻撃したらしいがその際に噛まれたようだ。


 毒蛇の体は小さかったため、毒の量も少なく運よくジャックの命は助かった。

 このときライラックはジャックの行動に驚いた。周りが一切見えていない。自分たちのことなど眼中になく、シオンの元に向かい助けるとは思っていなかった。


 体調が戻ったジャックはいつも通り訓練と読書ばかりをしていた。そしていつも通りシオンもその場でジャックを見ていた。前と違うのはそこにライラックもいるようになったことだ。

 ライラックにはジャックに対する恐怖心はなくなっていた。むしろシオンを救ってくれたことに感謝しかなかった。ジャックと一緒にいるようになってからはライラックがジャックに積極的に話しかけるようになった。


 ジャックは全く返事をせずに訓練を続けるだけだったが、一緒にシオンも話すようになった。ときにはジャックの訓練にライラックが混ざったりとしていくうちに少しずつだがジャックが返事をするようになった。

 協力関係が終わってもジョーカーは時々ジャックを家に連れてきた。そのたびにライラックとシオンが一方的に話しかけるような関係が続いて、いつの間にか今のような仲になっていた。


 今になってあの時のジャックの様子が理解できた。だがそのことについてジャックは語ったことはない。それはジャックにとって隠しておきたいこと、もしくは思い出したくないことなのだろうとライラックは思った。

 だからこそこんな形で知りたくなかった、ジャックが自分で話したくなるまで聞いてはいけなかったと思った。

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