18.不和 -disagreement-(1)
バイクを建物の陰に隠すように止め、ジャックは謎の船を見る。
砂の付き具合から使われていたのは間違いないが周りに人はおらず、誰が乗っていたかは判断できなかった。
ジャックは駆け足でギルドへと足を進める。
道中、ジャックは何度か視線を感じ、駆け足をやめる。顔を正面に向けたまま周りを警戒するように視線を広げるがすでにそこには人はいない。
ジャックがまず考えたのはクロウのメンバーによる尾行だ。ジャックを仲間に加えたがっていることから一人になったこのタイミングで接触をしてきてもおかしくはない。
だが、その視線は前回と違和感を覚える。
前はライラックとエトワールが居たにもかかわらず、二人は明らかに気付いていなかった。ジャックはすぐに気付いたにもかかわらず、二人が全く気付かなかった理由は間違いなく、彼らを一切監視していないか、ジャックに対して接触を図るためにわざと気付かせたのではないか。それは作為的な監視だったと今更ながら気付く。
それに対し、今回の場合、自分以外も監視をしているような気がする。そのためか、視線はもう感じていなかった。
「……とりあえずギルドに向かうか」
一旦、視線の事は考えずに再びジャックはギルドに向け走り出す。
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ギルドに入ろうとすると、討伐隊に参加できなかった狩人達が集まって話しているようだった。
そのうちの一人がジャックに気付くとハンドサインで手招きをする。
ジャックはそのサインに従って、狩人の集まりに混ざる。
「ギルドに入らず、こんなところで何してるんだ?」
「お前こそウィズピースのお守りしてたんじゃないのかよ」
「今は休業中だ、それより珍しいメンツでの集まりだな」
ジャックは集まっていた狩人を見渡すと、全員が異なるチームの狩人だった。
「まあな、それよりちょっと聞いて欲しい話がある」
「改まってどうした」
「最近のギルドのことだよ。実はさっき、クロウのメンバーがギルドの裏口から出入りしているところを見たんだ」
「クロウが?何を話していたかとわかるか?」
「個室に入っていったからさすがにな。だが最近、ギルドのやつが外でクロウのメンバーと会っていたところをこいつが見てる。なんか怪しくないか?」
視線を向けられた狩人がその言葉に頷く。
「ああ、フードとマスクで顔を隠していたが間違いなくクロウの人間だった。ギルドの人間と姿を隠して会うっていうの珍しくて覚えてたんだ」
「裏口から入っていったクロウのやつもやけに汚れていたな。たまたま裏口から入っていくのを見て、窓から覗いていた。何を話していたかはわからないが。砂や煤を被っていたところから砂漠にでも出ていたんじゃないか」
その言葉にジャックは先ほど見た不審な船の事を思い出す。
「クロウと繋がってるのかよ。前々からそんな噂はあったが……」
「ギルドの運営はウィズピース管轄だからな。俺たちの味方って訳じゃない」
「クロウ、最近また活発になってきたよな。ただ、何しているかがわかんねぇんだよ」
「最近、この街にピースメイカーが来てたよな。もしかしてあいつらも関係しているんじゃ」
各々がギルドに対しての不満と不振を口にし、最後の言葉で全員の視線がジャックに集まる。その視線からは微かな疑念と不振を持っていることがわかる。
「お前、ピースメイカーと関わってたよな」
その言葉は鋭く棘があるが、ジャックは冷静に答える。
「確かにそうだが、怪しい点はなく、クロウとの繋がりも感じられない。それは恐らくジョーカーやサルビアも昨日会ってわかっていると思う」
「……そうなのか」
ジョーカーとサルビアの名前を出されて、納得半分、不信が半分といった様子の彼らは口を閉じる。
そして、彼らの視線が先ほど感じた視線と感じ方が似ていることに気付く。
ここにいない狩人も恐らくピースメイカーと関わっているジャックに不信感を抱かせた、それが街全体からの視線を感じたのかもしれない。
しかし、今は今回ここに来た目的を果たすため、彼らに確認する。
「そういえば、誰か討伐隊から伝令があったか聞いてないか」
「いや、そういうのは聞いてないし、見てもないな」
狩人の活動が制限されている中で、彼らがここに集まっていたのは、そのうちの誰かが伝令役をしている可能性が高いとジャックは予想していた。
だが、それが違ったことで、ジャックは少し考え、彼らに伝える。
「悪いけどギルドに用があるんだ。ピースメイカーの動向は俺も監視しておくから、今はまだ任せてほしい」
「ああ、わかった。引き留めて悪かったな」
そう言ってジャックは狩人の集まりから抜けるとギルドの中へ入っていく。




