16.和解 -Compromise-(2)
通信機からはエトワールの声がはっきりと聞こえ、さらにジャックは通信機を耳から離す。
『討伐隊の船が移動を始めているんだがこちらはどうする?』
「すべての船が?」
『ええ』
一、二隻だけではないとすれば何かを見つけたか進展があったと思われるが、ジャックの予想では今日一日だけでは範囲を変わることはないと考えていた。
もし個人での探索調査ならそれができただろうが今回は船五隻を使用した大掛かりなものだ。その分準備に金も時間も掛かる。
だが、それでも移動を開始したということは手がかりを掴んだ可能性が高い。
ならば船で追いかけたいところだが、そうなればジャックたちがエトワールたちの乗る船に合流することができなくなる。それに彼女たちだけで移動させるのも不安が残る。
「その場で待機で……、船の移動した方向だけ覚えておいてくれ」
『それでいいのか?』
「ああ……、勝手に動くなよ」
『わかってる』
そう言って通信が切れるとジャックはステラに通信機を返す。
「合流する感じになったのね」
「急ぐから遅れるなよ」
「わかってる!」
ジャックが走り出すのを見てステラも彼の後を追いかける。
下山が終わりバイクの元にたどり着いたときにはステラの息が上がっているのに対してジャックは余裕があった。
借りていた靴をジャックへ返すとジャックは何の躊躇いもなく靴を履き、バイクに跨る。
「何している、早くいくぞ」
ジャックの様子を見ていたステラは自分のブーツを履くのが遅れていたがジャックの言葉に不機嫌な顔をしながらすぐに履いてバイクの後ろに乗る。
バイクの進みは来る時よりも早いがステラは少し慣れたのか周辺の景色を確認することができた。
ジャックは器用に速度を維持したまま中継器を回収する。
ステラが後ろを振り返ると先ほどまでいた山は思った以上に小さく、しばらく見続けていたがすぐに見えなくなった。
余裕ができたステラはジャックに話しかける。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど?」
「何?」
「どうして私たちに協力するの?あの熱血バカは何となくそういう性格だからってのはわかるけどジャックは全然違うわよね」
少しの沈黙の後、ジャックは気だるげに言う。
「……仕事だから」
「そういう答えは求めてないんだけど。仕事だけならさっきの戦闘で私の魔法を節約する作戦を考えたり、靴だって貸してくれたりしないでしょ」
「損得で考えているだけだ。そもそも二人だけで獣に挑むのは無謀としか言えない。だが精霊契約者のあんたが最善の状態で動ければなんとかなる。
だから、あんたが万全に動けるようにするためなら俺は協力を惜しまない」
「ふーん、シオンに聞いた話通り素直じゃないのね」
「はあ?」
ジャックの声色が少し低くなる。
「……シオンから何を聞いた?」
「ふふ、さあなんでしょうね?」
ステラはジャックに対してどこか楽しそうに話す。ジャックはその反応に対抗するようにバイクの速度を上げる。
「ちょっと急に……ひぃ」
急加速にステラは体が後ろに引っ張られるのを感じ、闇雲にジャックの背に掴まる。その後ステラは一言も喋らないままジャックを睨みつけていた。




