16.和解 -Compromise-(1)
大怪鳥が追ってこないことを確認するとステラがジャックに話しかける。
「そういえば気になったんだけど、あなた大怪鳥の攻撃をどうやって自分に向けたの?」
「簡単だ、あいつらは自分の獲物や天敵の匂いには敏感だ。だからナイフに砂狼の血と毛を付けて飛ばした。その匂いには嫌でも反応する」
「ふーん、でも魔法も使えないのに無茶するわよね。自分の近くに魔弾を撃つなんて巻き込まれる可能性だってあるでしょ」
「氷属性は唯一固形の魔法だ。魔弾の着弾角度を調整すればある程度の効果範囲は予測できる。それにその耐久性は魔法使いのあんたならわかるだろ」
「確かにそうね」
氷属性はジャックが言った通り、魔法の中で唯一物理的な使い方ができる魔法だ。
その氷は簡単には溶けず、砕くことも容易ではない。
さきほどの大怪鳥の鍵爪の攻撃も速度を付けた攻撃であったにもかかわらず、砕けることなく表面を少し削っただけなのが証明しており、最も守りに適した属性と言える。
下山しながらある程度離れたところで小さな揺れと大怪鳥の高い鳴き声、そしてより野太い生き物の鳴き声が聞こえる。
「やっぱりまだ近くにいたか」
「何が起こってるの?」
ジャックは歩みを止めずに話し始める。
「さっき、死骸を見たときに、砂狼を襲った存在の正体がわかった。あと、大怪鳥が流した血の匂いで戻ってきたんだろ」
「それってさっき言ってた相手にしたくない奴?」
「ああ、グリフォン、死骸の傍に大怪鳥とは違う羽が落ちていた。奴は特定の生息域を持たずに砂漠全体を飛んで回っている。
この砂漠の頂点と言ってもいい」
「そんなに強いの?」
「ずば抜けて知能が高いし、巨体だから力もあるしその筋肉のせいで無駄に頑丈だ。
だが人前にはめったに姿を現さない。それでも獣なのは変わりない。見つかれば敵対してくる可能性はある。
狩人からしたら不意の遭遇は死んでもおかしくはない。それに今は戦うための装備なんてほとんど用意していない。
恐らく砂狼が一匹もいない、かつ大怪鳥の気が立っていたのはグリフォンがこの辺に現れたからだろ」
「じゃあ、これからどうするの?」
「グリフォンがいる以上ここでの調査は無理だろう。だがわかったこともある」
「何がわかったの?」
「グリフォンは砂漠全体を飛んで行動しているといったがそのルートはほぼ固定されているんだ。その周期から考えれば今ここにいることは大きくルートから外れているはずだ」
「それが?」
「さっきも言ったがグリフォンは知能が高い獣だ。ルートから外れたのは何かしらの理由がある。例えば生命の脅威を感じる何かが現れたとかな」
「それって」
「グリフォンが迂回したルートにあんた達が探しているものがある可能性が高い。上手くいけば討伐隊より早く探し出せる可能性もあるだろ」
そう話しているうちに二人はステラの脱いだ靴が置いてある場所まで戻ってきていた。
「ちょっと待って」
ステラが靴を拾うと同時に耳に手をかざす。
「見張り組にも動きがあったみたい」
ステラが通信機を差し出すがジャックは懐からボロの通信機を取り出す。
しかし、ノイズしか音が出ず、壊れたスピーカーのようになっていたので仕方がなくステラから通信機を受け取る。
少しその通信機を耳から離してジャックは確認する。
「何があった?」




