2.狩人 -Hunter-(1)
黄砂海廃跡街『リムレイ』。大昔からの精霊信仰の遺跡があるが、何百年前に起きた戦争が原因でその土地の大半は砂漠化している。もともと残留した魔力が多く、モンスターがよく魔獣化するため、街の外は準備を怠れば一日と持たない。砂漠を移動するには魔石を利用し、砂漠用に改良された船やバイクが利用される。
二人が向かったのはその中で唯一、人が生活できる街『ストリート』。
ジャックは船を停泊所に止め、すぐ近くの大きな街道に出る。ジョーカーも続いて、船を降りジャックに続く。
街道には沢山の屋台が並び、日用品から食料、また骨董品など様々なものが販売されている。
まあまあの活気といったところだが食材には新鮮さはなく、売っている道具も状態がいいものと言えない。それでもこれがこの街では普通なことだとよく知っている。
ジャックたちは目もくれずに中央にそびえる外装が他と比べて綺麗で整っている建物――『ギルド』に向かう。
扉を開けると湿った空気が流れ、酒の匂いが鼻に刺激を与える。
ギルドはこの世界の中心的存在である軍組織――魔導統一平和機構『ウィズピース』の梯子役を行っており、様々な依頼を取り扱っている。
ジャックとジョーカーなどギルドに所属しているものを『狩人』と呼び、依頼内容は主に三つの分類になる。
魔物の捕獲、討伐の『魔物狩り』。危険度は普通、その素材は定期的に取引されており、少額だが安定した金が入りやすい。
砂漠に埋まった遺跡、廃墟から遺物を探し、それを売る『遺物狩り』。遺跡次第ではかなり危険だが、一攫千金の可能性があるうえ一度の探索でもかなりの収入になるが準備そして探索にも時間が掛かる。
手配書に記された犯罪者を捜索、捕獲の『首狩り』。危険度は相手によるが生け捕りの場合は難易度が高い、金は少し期間なら生活に困らない程度に儲かる。魔物狩りより安定はしないが遺物狩りより確実でもある。
ハンターはどの依頼も自由に行うことができるが、どれか一つを専門に行うことが多い。
建物の中は大衆食堂のようになっており、昼間なのに酒をたしなむ大人たちがいる。
カウンターが中央にあり、そこには顔つきの悪い男が受付をしている。
二人が入ると飲んでいる大人が親しげに声をかける。
「ジョーカーじゃないか、ここに来るのはいつぶりだ」
「ちゃんとやってるか、ジャック」
「また今度頼むぜ、なんなら飯でもおごるぜ」
依頼は受注することはなく、ボートに張り付けられている内容を申請はせず、達成条件とその証拠を提出するだけの早い者勝ち。ハンターは依頼の取り合いなどは日常茶飯事であり、一時的にチームを組むことはあるし、情報交換のために交流することはあっても馴れ合いはない。
だが、ジャックたちは狩人の中ではいろんな意味で注目されている存在だった。
二人は首狩りを重点に置いている『傭兵』であり、報酬次第ではどんな依頼にも協力する。首狩りは単独行動の人間が多いため、他の狩りサポートに入ることも多い。
狩人は常に競争のため、狙った依頼の成功率が五割を超えて一人前、七割を超えれば優秀として扱われる。
依頼の成功率が高ければ名が売れ、指名依頼なども来ることがある。
その成功率を上げるために雇われるため、傭兵はこの競争社会を生き残った老舗が多い。
その中でもジョーカーは一人で活動しているときから依頼を必ず成功させていた。
今はジョーカーがサポート、弟子のジャックがメインで活動しているがそれでも成功率は九割を誇っていた。
彼らが声をかけるのは恩を売っておくことで生き抜くことの利益になるからだ。
受付に向かったジョーカーは簀巻きにされた賞金首のアランを受付に引き渡す。そして周りに聞こえない小さな声で受付に伝える。
「……未探索の遺跡の情報があるらしい」
すると受付は立ち上がり、奥にいた武器を携えた職員を呼び出し、賞金首を引き渡して業務報告を行うように伝える。
「賞金首の身柄の確認のため時間がかかる。ほかにも状況確認のため色々聞きたいことがある。個室を用意するから着いてきてくれ」
ジョーカーとジャックは受付の後に続き、奥にある扉へ向かう。