13.力量 -Ability-(3)
「雷属性……、運動性能の強化、いや確か体内に電気を流して肉体の限界を無視した強制解放か。だから魔法陣も表明上に現れなかった。外ではなく内側に魔法を使っているから」
その言葉を聞いたエトワールから余裕がなくなり、表情はどこか険しくなる。
「……どうしてそれを。この技は知っている人も限られている」
エトワールの反応からしてこれが答えで間違いないとわかった。しかし、その様子を見るにジャックは少し考えた。
ジャックは詳しく内容までは言わずに端的に話す。
「昔、ジョーカーからそういった戦い方をする奴がいたってことを聞いた。俺も一度魔薬を使って試したことがあるから覚えていた」
彼女の機械仕掛けの大剣を見るにジョーカーはウィズピースと何らか関係がある。
それが良いものなのか悪いものはわからないが隠しておいた方がいい。だが変に誤魔化してもエトワールなら気付くかもしれない。
「試したって……しかも魔薬を使った?」
「別に魔薬は違法じゃない。使いすぎるのが問題なだけで使い方を間違えなきゃいいだけだ。
それに試したのは俺の戦い方がまだ定まっていない時だ。それに一日中体が痺れて動けなくなったがな」
ジャックがはっきりと思い出せたのはこの失敗の経験があったからだった。
「痺れてって……、それよりジョーカーさんはほかに何か言ってなかったのか?ローズ・レッドバレットって名前を聞いていない?」
「いいや、全く。その名前に関してもな。誰なんだ?」
「私の英雄、私の父を救い、この世界の格差をなくそうとした人」
「ああ、前に言ってた人か」
「ほんとよく覚えてるね。でもジョーカーさんとは一度ちゃんと話さないとね。聞きたいことがたくさんできたし」
いつものような穏やかな口調に対してジャックの見たエトワールの表情は険しかった。
ただジョーカーの先ほどの言葉には嘘ではないがローズ・レッドバレットという名前が気になった。
間違いなくジョーカーはその名前を口にした記憶はない。しかし、ジャックにはその言葉を聞いたことがあるような気がした。だが、どこで聞いたかが全く思い出せない。
記憶力には自信があるのだが、自分でも思い出せないのは恐らくジョーカーに出会う前の事なのかもしれない。
あの頃より前の記憶は思い出せない。思い出そうとすればすべて母親の死に顔しか思い浮かばなくなる。
「そろそろ戻ろうか。みんな準備がそろそろ終わるはずだ」
表情もいつもの穏やかなものに戻ったエトワールが玄関に向けて歩き出す。
ジャックも今はそのことを考えることを辞め、エトワールの後に続いた。




