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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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11.破棄 -Cancel-(2)

「俺たちも出よう」


 ジャックも後に続こうとしたが肩を掴まれその動きを止められる。


「まだ何かあるのか?」

「ええ、みんなは先に出て、外で待ってて。ジャックと少し話したいの」


 まだあったばかりの彼女だがいつもその雰囲気には余裕を感じられたが、今の彼女にはそれがなかった。

 エトワールは三人が部屋を出たのを確認するとジャックの肩を離す。


 このタイミングで話すことは恐らく先ほどの契約獣の話だろうとジャックは予想した。

 ジョーカーにもはっきりと断られたこともあり、本来なら何も聞かずに断ることが正解であるはずだが、ジャック自身も契約獣に興味があり何も言わなかった。

 ジャックが何も言わず黙っていることに対してエトワールは肯定と受け取ったのか話を始める。


「どうやらその顔は察しているようだね。

 単刀直入に言うとさっきの話の契約獣の討伐だけど恐らく私たちここに来た理由の一つだと思っている。だからそれを確かめなきゃいけない」


「最初にあんたが言っていた理由はここの状況改善と融和と聞いたんだが?」

「うん、それも目的の一つだけどそれより重要で緊急なことでね。ここに滞在している間に情報がなければ何もなかったんだけどさっきの話は無視できないんだ」

「だったら何故さっき話さなかった?あの二人はベテランだ。しっかりとした理由を話せば協力する」

「そうかもしれない。だけど自分で言うのもなんだがとても現実的な内容とはいいがたくてね。私も最初に聞いたときは信じられなかった。それに私が今持っている情報だけじゃ信じてはくれないだろう」


 エトワールの様子を見る限り詳しい内容までは話す気がない。それに言葉も選んで話しているためボロを出すことはないと思い、ジャックは単刀直入に聞く。


「それであんたは何がやりたいんだ?」

「この周辺調査を行って痕跡、それと対象の確認をしたい。こっち持っている情報と一致しなければ君たち狩人にお任せするよ」

「もし一致すれば?」

「この件に関しては完全に手を引いてもらう。ウィズピース側の要請としてね」


 どこか気迫を感じ、ジャックは反対しても彼女たちは勝手に動くと思った。


「はあ、ラックたちの邪魔をしないなら勝手にしろ」

「ありがとう、あともう一つ周辺調査と言っても私たちは外の土地勘がない。だから君にも協力して欲しい。引き続き案内役として」

「それならラックたちと同行したほうが……、だがほかの狩人たちが許さない、それにあんたたちはこの街で十分目立っているから変装も難しいか」


 ジャック自身、ジョーカーたちに置いて行かれたことに関して不満を思っていた。周辺調査程度なら彼らのチームと鉢合わせないルートを考えれば秘密裏に行えるだろう。

 それにクロウとの出来事もあり、待機状態で悶々とするよりはいいと考える。


「わかった、さっきも言ったがあいつらの邪魔をしないなら協力する」

「ありがとう」

「ああ、それより……」


 ジャックは扉を開けると扉の前に会話もなく不自然に並んでいるシオンを含めた四人がいた。


「シオン、聞いてたのか?」

「聞いてないよ」


 その視線はジャックを見ておらず、声も少し高い。


「ラックと同じで嘘は下手だな。あいつらには黙っておいてくれ」


 シオン以外はあとでエトワールが話すだろうから、彼女が黙っていればばれることはない。また、シオンなら告げ口を行うこともないと思った。

 しかし、ジャックの予想とは全く違う言葉をシオンは口にする。


「私も連れてって」


 その言葉にジャックは驚くがすぐに答える。


「だめだ、今日みたいな観光じゃないんだ」

「だったら今の話をお兄ちゃんたちに言う」


 いつもなら素直なシオンがここまで抵抗することに、ジャックは戸惑った。


「私は連れて行っても構わないけど」


 エトワールはジャックの様子を見て助け舟を出すがジャックはすぐに頷くことは出来なかった。

 兄に対して当たりが強いのはよく見てきたが、シオンがわがままを言うことは見たことがない。

 それにいつものシオンとは様子が違い、ジャックもどう答えればいいのか言葉に詰まる。その様子は一度決めたら貫き続けるライラックと同じのようにも見えた。


「……わかったよ。ただ絶対無理はするなよ」

「うん、約束する」


 満面の笑みを浮かべながらシオンは大きく頷く。そしてまた一緒に入れるのがうれしいのか隣にいたロザリアも嬉しそうにしている。


「はあ、変なところは兄妹そっくりだよ」

「そんなことないよ!」


 本人は似ているという言葉に過剰に反応し不機嫌な顔をするが、残念ながらそれにはどこか愛嬌があった。

 シオンはジャックの口元が少し上がることがわかると、そっぽを向き小さく呟く。


「……それにこれが最後かもしれないから」

「何か言ったか?」

「なーんにもないよ」


 いつもの調子に戻り、シオンは笑顔で振り返る。


「話は決まったようだね。またよろしく頼むよ。それで申し訳ないんだけど……」


 エトワールが言い切る前にジャックが察し、答える。


「ああ、いろいろ準備が必要だ。ラックやジョーカーからどう動くかぐらいは聞いておきたい。実際に動くのは明後日からでいいか?明日は自由にしていてくれ」

「ええ、それで問題ない。私たちに何か手伝えることは?」

「特にない。いや……とにかくあまり目立つな、それだけだ」

「あはは、肝に銘じておくよ」

「しかし、そうなると明日は一日ここに籠ることになりそうだな」


 エトワールはばつが悪いことに頭をかく。そしてステラは不満そうに呟く。


「だったらみんなうちに来ませんか?」


 その言葉に全員がシオンのほうを見る。

 注目されたシオンはどこか緊張した様子で話す。


「その……、都市やみんなのことを知りたくて話を聞きたいなって。それにここにいるよりは退屈しないかなって」

「私、シオンの家に行ってみたい」


 真っ先に同意したのはロザリアで子供のような無邪気な視線を向けている。

 エトワールはジャックのほう見る。ジャックは言葉を発しないがあきれ顔で頷く。


「じゃあ、そうさせてもらうよ」


 その言葉にシオンは笑顔を見せ、ロザリアと一緒に喜ぶ。


「準備を君一人に任せてしまって本当にいいのかい?」

「むしろ一人のほうが動きやすい。あんたらこそシオンに迷惑かけるなよ」

「ありがとう、助かるよ」


 ジャックとエトワールのやり取りの後ろではすでに明日何をするかで話していた。

 その様子は全員が楽しげで同年代で同性の相手だからかシオンの顔はジャックも見たことがなかった。

 同じくエトワールもあまり感情を出さないロザリアの姿を見て、自然と笑みを浮かべる。


「ここに来てよかったよ」

「……そうかい」


 いつもの愛想のない返事を返したジャックだがエトワールが見たその表情にはポーカーフェイスはなくどこか穏やかだった。

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