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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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6.兄妹 -Brother's- (3)

「何してるの、二人とも!」

 扉から出てきたのはライラックと同じ黒髪に年齢はロザリアと同じくらいでしかめ面をした少女だった。

 ライラックは人差し指を立てジャックに合図を送り、陽気に返事をする。

「ああ、シオン。ジャックと模擬戦をしてたんだよ」

 シオンはジャックのほうへ駆け寄り、心配そうにその体を見る。

「大丈夫、ジャック?あっ、腕すりむいてる。こっち来て、塗り薬あるよ」

「いや、これくらいなら」

 そういって断ろうとするジャックの腕を引き、シオンは家のほうへ向かおうとする。

「ねえ、お兄ちゃんの心配は?」

「どうせ、またジャックにわがまま言ったんでしょ。自分でやりなさい」

「妹が冷たい!」

 大げさな痛がるリアクションをするライラックを無視してシオンはジャックを連れて家の中へ入っていく。

 ライラックはすぐに痛がるふりをやめ、二人を追いかける。

 家に入ってすぐにシオンは治療箱を取り出して向かい合わせになるように座る。

 そして塗り薬をジャックの擦り傷へと優しく触れ治療を行う。

 ジャックはシオンもライラックと同じく頑固な部分があるため抵抗せずにその治療を受ける。

 ライラックはその二人を何も言わずに笑顔で見守る。

「はい、これでだいじょーぶ」

「ありがとな」

 ジャックは素直にお礼を言って、シオンは最後にガーゼを貼り付ける。

「ねー、シオン。お兄ちゃんは?」

「自分でどうぞ」

「なんで俺だけ」

 シオンは治療道具一式をライラックの前に置き、そう言ってライラックは自分で傷薬を塗り始める。

「で、なんで二人で突然模擬戦なんてしてたの?最近ずっとやってないよね」

 ジャックはすぐに視線をライラックに向ける。その視線に気づいたライラックは気まずそうにする。

「やっぱり、お兄ちゃんのわがままだったんでしょ。ジャックも毎回こんな人に付き合わなくてもいいよ」

「いや、男には拳で語り合わなきゃいけないときがあるんだよ。なあ、ジャック」

「……いや、断ると面倒くさいと思った」

「えっ、裏切り?」

 ますますライラックに向いているシオンの視線が厳しくなる。

「まあ、ラックにもいろいろ考えがあったんだろう。あんまり責めないでやってくれ」

「もう、ジャックが言うなら」

 ジャックからの適当な言葉の助け舟にシオンは機嫌を直した。

「それより、ジャックが家に来るの久しぶりだよね。ねえ今日ご飯食べていかない?私が作るの」

 シオンは目を輝かせながらジャックに確認する。ジャックは軽く食事を取っているため、少し会話して帰ろうと考えていた。

「食べていけよ、体も動かしたしお腹も減ってるだろ」

 ライラックの言葉にシオンも力強く頷き、断れる雰囲気ではなくなったためジャックはため息を吐きながら了承した。

「頑張って作るね。待ってて」

「いつも頑張ってくれー」

「うるさい」

 何気ない兄妹のやり取りを見つつ、ジャックは外の空気を吸いたいと言ってもう一度外に出る。

 見上げた空は黄昏どきのため赤と青のグラデーションに染まり、空気は肌寒く、乾燥していた。

「さっきはありがと、黙っていてくれて」

 少し時間をおいてライラックがジャックのすぐ隣に並び立つ。

「気にするな」

「でも心配かけたくないしな。あとやっぱりジャックが来てくれると元気なあいつが見れるし」

「また体調崩してるのか?」

「ああ、最近はいろいろあってな。親父たちはどうしても外せない協力依頼が来て俺はお留守番兼お守りってこと」

 シオンはもともと体が弱く、昔から体調を崩すことが多かった。それでもこの街で生きてこれたのはこの家族のもとで生まれたからだった。そしてライラックの行動に少し合点がいく部分もあった。

「……シオンのためか」

「ああ、それもある。このままじゃあいつはここで生きていけない」

「そうか」

「協力してくれたっていいんだぜ」

「しつこい」

「あーあ、残念。……もしものことがあったらシオンの事頼んでいいか」

「お前の留守に間だけな」

「……ありがとう」

 暫くの沈黙の後、ジャックは力強くライラックに向けて言った。

「もしもの事なんて起こさせない。だから勝手に弱気になるな」

 その言葉にライラックは返事をせずに強く背中を叩く。

「痛っ!」

 すぐにライラックを見るが手を振りながら家の中に入っていった。

 ジャックは自分でも柄ではないこと言ったのもありやり返したりなどはせずに、再び星が輝き始めた空を見上げる。

 そして自分が思っているより狩人になった目的を忘れるくらい、ライラックたちとの日常が心地いいことに気付いた。だからこそ今度こそは失いたくないと思った。

「昔とは違う。今の俺なら……」

 ジャックはマフラーを強く握りしめライラックたちのいる家へと戻っていた。

 家の中に入ると先ほども聞いた兄妹の喧騒が響き、ジャックが間に入るように聞く。

「どうかしたのか?」

「いや、明日街を案内するって話をしたらシオンも付いて行きたいって」

「街の案内なら行ってもいいよね。それにお兄ちゃんに街の案内ができるの?相手の人女性なんでしょ。ちゃんと案内できると思えないけど」

 シオンの言葉にジャックはその通りだなと納得した。確かに自分やライラックでは町の案内をするとなった場合、露店くらいしか案内ができない。といってもこの街は商業が盛んではないため、案内する場所も少ない。そうなると話の種もなくなりかねない。

 そう考えるとシオンを連れて行くのは悪くないのではないかと思う。同じ女性であるし年齢的にも近い。それにこの家で育っているため常識もしっかりとある。

「ねえ、ジャック。仕事の邪魔しないから」

 シオンはライラックからジャックに向けて頼み込む。

 しかし、案内と言っても依頼であり、相手はピースメイカーのため突然知らない人が来るのも警戒する。エトワールやアステルは問題なさそうなだが特にステラからは何かといちゃもんが来る気がした。

 ただ連れて行くにしろ行かないにしろ確認は必要だと思った。

「それは俺たちに決めることは難しい。案内と言っても仕事でもあるから。だから、ライラック。明日朝一に確認して問題なければくればいい。

 あとはシオンの体調次第だけど、それでいいだろ?」

 少し不満そうなシオンだが、納得したのか、それともジャックの言葉だからおとなしくなる。ライラックも同意しているのか何度か頷く。

「そんなことよりご飯はまだかー、もうお腹ペコペコだよ」

「それなら少しは手伝えば?」

「よし、何を手伝えばいい?お兄ちゃんに任せろ」

「まずくなるから座って」

「あれー?」

 理不尽な対応にも関わらずライラックはシオンとのやり取りを楽しんでいるようにも見えた。

 ジャックはその二人のやり取りに自然と笑みをこぼしていた。

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