6.兄妹 -Brother's- (2)
「……参った」
ジャックはすでに首から手を放し、息を整える。
「やっぱり強いなぁ、今日はいけそうな気がしたんだけどな」
ライラックは地面に大の字になって倒れる。顔は笑ってはいるが声から悔しさが伝わってきた。
「ああ、今日は結構ヤバかったよ」
ジャックはライラックの隣に座って本心からの言葉を伝える。
「ははは、そうならよかった」
「……なあ、どうして急に模擬戦なんてしようと思った?」
少しの沈黙の後、ライラックはゆっくりと上体を起こして話し始める。
「俺自身がもっと強くならないとなって思ったから」
語りだしたライラックに対してジャックは割り込むことをせずに耳を傾ける。
「なんだろうな、いつも付き合ってくれてたからジャックもてっきり協力してくれる……ていうか頼りにしちゃってたんだなって。それでその不安になったんだよ。だから自分の今の力を試したくなった」
最後の言葉は話していて照れ臭くなったのかライラックは手で顔を押さえている。
「だったら協力しなくてもいいんじゃないか?あいつらがやろうとしていることは不可能に近い」
「そうだけど……俺が狩人になった理由は親父もお袋もそうだったからだ。大それた目的もない。魔獣を狩ってお前とたわいもない話をしてこの街ではありえないくらい不自由のない生活を送ってきた。
だから困っている人を救うのは俺の義務であり責任だと思った。だけどそれじゃこの街は何一つ変わらないこともわかった。
でもさ、今日の話を聞いて可能性が見えた気がしたんだ。その世界が俺の求めていたものだと思った」
ジャックはライラックがお人好しなのはわかっていたが、その理由を聞くのは初めてだった。
この街では親に捨てられる子供がほとんどであり、そんな子供は悪党どもにこき使われるか、奴隷として売られるか、または飢えて餓死するかのどれかがほとんどである。
ジャックも奴隷として売られそうなところを偶然にジョーカーに助けられ、弟子入りした経緯を持つ。
故にライラックの両親のようなしっかりと家庭を築いている家族やジョーカーのように赤の他人の子供を弟子に取るような人間はかなり珍しい上にその環境で育った二人はこの街では間違いなく恵まれていた。
そんな子供たちにもライラックは手を差し伸べ、街では多くの人に慕われていた。
「……それにもし差別がなくなるんならあいつも」
「どうした?」
ライラックが小さく何かを呟いた言葉を聞き取れず、ジャックには聞き返す。
「いや、覚悟を決めただけさ」
「骨は拾ってやるよ」
「骨を拾う前に助けに来てくれたっていいんだぜ。なんなら一緒に……」
「それはパス」
「ケチだな」
そういってライラックはいつものような明るい笑みを作る。釣られてジャックも小さく笑う。
そこに大きな音を立ててライラックの家の扉が開いた。




