5.紹介 -Introduction- (3)
全員の自己紹介が終わり、一息ついてからエトワールは魔法についての講義を始める。
それは授業料を取られてもおかしくない程度に詳しく話した。
魔法――異界に住む精霊と契約陣と呼ばれる紋様で繋がった人間が使える奇術。魔法には炎、氷、雷、風の属性が存在する。契約した人間はその力を使うことができ、過去に名をはせた者はそのほとんどが精霊契約者と言われている。また、極稀だが人以外と契約する精霊もいる。
魔法に関しては使い手の想像力が重要であり、想像した形を精霊が自身の魔力を使って空中に魔法陣を描き、形を成して出力するのが魔法を使う流れとなる。もし、想像が曖昧だったり、契約精霊の力が不足する場合は不完全な状態で魔法が出力されることもある。そこで複雑な魔法は名前を付け、イメージを付けやすくするといった方法もとられる。
そんな強力な力をくれる精霊だがその正体は魔力の塊が自我を持った存在らしい。そして生き物と契約する理由としてはその感情や思考に触れ、自己の進化を促すためのものと言われている。そのため、強力な精霊は多くの人たちに認知され、名前持ち(ネームド)と呼ばれている。
また、強力な精霊と契約している人間は歴史に名を残すものが多いこともあり、精霊が契約する人間はその人間が持つ宿命、心が強靭な人を好むと予想された。その結果、精霊と契約できなかったものは人として劣等種と言う風潮が生まれ、魔法が使えるものと使えない者で大きな溝ができた。
その精霊という存在はこちらの世界でない別の場所に存在している。もともとは一つの世界で共存していたが、人間と精霊の近すぎる関係に暴走した強力な精霊――魔王が誕生し、世界が滅びかけたらしい。それを特別な精霊と契約した者――勇者が倒し、二度と同じことを起こさないために二つの世界に分けたという伝説、現在ではおとぎ話として語り継がれており、このおとぎ話についてはライラックも聞いたことがあるようだった。
それ以来、契約陣という形のみで精霊との繋がり、こちらの世界で使われた魔力の残滓が集まり魔石という形で入手できるようになった。しかし、ここ数十年では魔石を使わずに精霊契約者から直接魔力を抽出する技術が発見され、都市のアトラシントでは大きな技術発展した。
怒涛の勢いで語るエトワールにライラックはそれを興味津々の様子で聞いているのに対して、ジャックはすでに知っていたのか、壁に寄りかかり目を閉じている。
「……終わり?」
「まあ、一通りはね。どう少しはわかったかな?」
「ああ、大体わかった!」
「姉さんが説明してくれたのよ、全部わかりなさい!」
「スーちゃん、落ち着いて」
ずっと話を聞いていたためか、ロザリアの最初の一言から皆それぞれ喋りだす。
そんな中で一人沈黙していたジャックにエトワールは近づく。
「君には退屈だったかな?」
「まあな」
「それは悪かったね」
「これで金が入るなら楽な仕事だ」
その言葉にエトワールは返す言葉が見つからず、愛想笑いを見せた。




