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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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4.依頼 -Quest-(3)

 ジャックは内心無理だと考えた。精霊契約者とそうではない者での格差は決して埋めることができない。

 それは魔法という武器があまりにも強力すぎるからだ。魔法が使えない者にとって常に力による恐怖が付きまとう。結果、恐怖心がその手に武器を取らせた。

 精霊契約者との戦争も起きたことがある。その戦争は大量の武器の開発が進み多くの精霊契約者を殺した。生まれた武器の中で代表とも入れるのが遠距離からの殺傷に長けた銃だ。

 戦争は終結したがそれ以降関係は険悪のまま、そして魔法の使えない者の多くはこの砂漠の街のリムレイに集まるようになっていた。ゆえにここには精霊契約者嫌いの人間が多い。生まれがリムレイ出身のライラックやジャックですら嫌いではないが警戒はする。

「不可能だと考えている?」

 黙っているジャックを見て、エトワールが察した。

「当然だろ」

「確かにこんな話は組織内では話せないし、トップがこんなことを考えているとしたら大波乱だよ。最悪の場合、暴動や反逆が起きてもおかしくない」

「じゃあ、なんであんたは手を貸すんだ。自分の立場も悪くなるだろ」

 ジャックの疑問にまっすぐな視線を向けエトワールは答える。

「確かに、でも私は私の英雄の夢を継ぐことに決めた」

「英雄?」

「そう、彼は私の父の部隊長で格差をなくそうと戦っていた。だけど、その考え方が組織の一部からの反感を買い、無謀な作戦をやらされた。部隊を逃がすために殿を務めて死んだ。

 私もその夢を繋げるつもり。だから同じ轍を踏まないためにも外部の協力者が必要なの。首都で集めれば噂から敵を作りかねないからね」

 ここまでの説明からジャックは質問をする。

「俺たちがその協力者になって欲しいと」

「いいえ、そのつもりはないわ。でもここでその協力者を探すには何より私たちから歩み寄り、私たちの言葉を信じてもらう必要がある。そのために狩人の活動に混ぜてもらい交流をさせてほしい。それを行うにも私たちだけじゃ現状では難しい。だからあなた達にはその橋渡しとしてまずは協力して欲しい」

 一通り話し終えたのかエトワールは表情を崩して言う。

「もちろん、協力してくれるなら私としても心強い。それに君たちに最初に出会えたことは幸運であり、運命と感じたの」

 ジャックにもエトワールの覚悟は伝わったため否定はしなかったがそれでも勝算はないだろうと考えたため返事はしない。

「それはさ、リムレイももっといい、誰もが安心して暮らせる世界になるのか」

 口を開いたライラックはいつものような陽気さは一切感じられない。

「差別がなくなればここも変わる。それにリムレイに根付いているクロウという組織も変えるためには倒さなきゃ相手だと思ってる」

 ライラックの表情はジャックも見たことがないくらいに張り詰め、悩んでいるようだった。

「すぐに決める必要はないよ。悪かったね、こんな話をしてしまって。仕事の話に戻ろう」

「決めた!俺はそれに協力する!」

 エトワールの声を遮ってライラックは叫び立ち上がる。

 周りは突然の宣言に驚き、視線はライラックに集中する。

「悩んだって状況は進まないんだ。だったらやるしかないし、俺自身この街をよくしたい。

 俺やジャックは運がいいだけなんだ。俺たちより何十倍の奴らが苦しみながら生きてる。それが叶うなら俺は……協力する」

「その申し出はありがたいけどすぐに決める必要はないよ。私たちだってすぐに行動できるわけじゃない。それに多くの人を敵に回す」

「いや……、俺は決めた。

 この現状を変えられるチャンスが今ここに生まれた。だったら俺はそこに突き進むだけ。まっすぐ進むことだけが俺の取り柄だからな」

 ジャックはそのライラックの様子を見て、どこかいつも違うような気がした。何かに焦っている、もしくは迷っているのか。だが最近のライラックの行動からは思い当たる節がなかった。

「……ありがとう」

 エトワールは手を差し出す。ライラックはそれを強く握り返し、ジャックのほうに視線を向けていつも口調で言う。

「ジャック、一緒に変えようぜ」

 しかし、ジャックは真面目にそしてはっきりと返事をする。

「無理だ」

「えっ?」

 いつものように賛同してくれると考えていたライラックは目を丸くし、ジャックは冷静に理由を言う。

「悪いが俺にはそれが成功する未来は見えない。例え上手くいったとしても魔法が存在する以上、再び溝はできるだけだ」

「わかったよ。……でも、私はやり遂げるつもりだよ」

 エトワールは自身に満ち溢れた表情で答える。

「ああ、邪魔はしないし、今回の依頼は引き受ける」

「そう、ならさっそく今回の詳しい仕事の話をしましょ」

「ああ」

 ライラックはどこか気持ちの離れた、空返事で答えた。


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