酔っ払って眠りこけた俺。目が覚めたらゲームの世界に転移していた……!?
「じゃあな! また飲もうぜ」
数年振りに会った友人たちと過ごす時間は楽しく、ついつい飲み過ぎてしまった。
「寒っ」
十二月の夜風は火照った頬から容赦なく熱を奪っていく。襟元を締めて巻き直したマフラーに首を埋めて、駅までの道を急いだ。
「次は**駅~。**駅~。終点となります。お降りの際はお忘れ物のないようにご注意ください」
車内のアナウンスで目が覚めた。
うっすらと重い瞼を開ける。ぼんやりとした視界に映るのは、窓ガラスが夜の暗さで鏡になった車内。俺のほかは誰も座っていないシート。左右の車輌に目をやれば誰も乗っていない。暖房の効いている車内だが、明る過ぎる白い車内灯はなぜか寒ざむしく空間を照らす。
しまった。乗り過ごした。どの辺りだ?
まだ回りきらない頭で考える。
鏡のようになっているために見にくいが、窓の外は真っ暗だ。建物の明かりや道路を走る車のライトや、信号や街灯も一切見えなかった。
おいおい。一体どこまで来ちゃったんだよ?
スマホを取り出して時間を確認する。未明を過ぎたころ。微妙な時刻だ。
……上りの電車はまだあるか?
乗り換えを調べるためにアプリをタップをした。古い機種の上に容量も目一杯。開くのに時間がかかる。しかし、いくら待っても待ってもアプリは開かない。
いらっとして、立て続けに指で画面を叩いて、ふと気がつく。
アンテナが立っていない……?
はあっ。と口から漏れるため息。電波がきていないのなら仕方がない。それにしても……スマホの電波も届かないなんて、どんだけ田舎にきたんだよ?
駅についてから時刻表を確認するか。
便利な機能に慣れていると使えなくなったときに不便極まりないな。
駅に入るために電車は速度を落として、滑りこむように停車した。
ホームにはちらほらと人がいた……が!?
思わず二度見をしてしまった。リアルで二度見るなんてほぼしないが、見たものを頭が確認するために必要な反射的行為だと知る。
コスプレ会場が近いのか? イベントか?
駅のベンチにいるのはRPGの勇者のパーティーのような衣装を着ている御一行。あっちのベンチにも同じような一団がいる。乗降口に並んでいるのは、髪の色が尋常ではない耳が長くとんがった、アニメや小説の世界にいるような人々。
電車の扉が開くと同時に、アンテナも立っていないスマホにメッセが届く。開いてみると……
『十文字以内でお名前を登録してください』
俺は……まだ酔いは醒めていないに違いない。
『なろラジ6』に投稿するために描いたのですが……。途中からキーワードを忘れていました(⊙.☉;) ぴったり千文字。せっかくなので投稿します。