表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/53

44話

その後、プリズムの皆がボロボロになりながらも駆けつけて来てくれた。

私たちが化け物を倒したと知ると、目がとびでそうなほどそれはそれは驚いた顔をしていた。そりゃそうだよね、皆あの虎のことは知らないわけだし。

皆私の無茶を叱ったが、私を思ってのことだというのは分かっていたので甘んじて受け入れた。最終的には皆に「生きててよかった」と言われて、馬鹿になった涙腺がまた崩壊してしまった。

先生も意識を取り戻したようで、私たちの無事を確認すると、状況を他の教員に報告しに行ったようだった。


それから、魔法の反動でついた火傷やらを治す為にサミュエルやプリズムの皆が少しばかり療養したり、国の研究チーム?だとかが化け物の亡骸を調査したりして、時は過ぎていく。

1つだけ不思議なのは、私以外のあの場にいた皆は、誰もあの化け物を召喚した人の姿を覚えていないらしいことだった。


・・・


「いやあ、平和だねえ……」


「……そうだな」


忙しかった日々がひと段落して、私は現在、サミュエルに誘われて幼い頃によく散歩した彼の家の庭に訪れていた。

幼い頃はあんなに大きく見えた庭木も、今では私の背より小さくて、ふとした瞬間に流れた年月の長さを感じる。

庭を歩いてまわっていると、小股で2、3歩程後ろでサミュエルが立ち止まっているのに気づいた。


「サミュエル?どうしたの?」


呼びかけると彼はずんずんと近づいてきて、自分の手で包み込むように私の両手を取る。俯くのをやめて私の瞳を真剣に見つめる彼の顔は、庭に咲いている薔薇に負けないくらい、真っ赤になっていた。


「……クレア。その…オレと、結婚してほしい」


「…………へぁ」


けっこん…ケッコン……結婚!?!?!?

あまりの急な言葉に、頭が追いつかない。


「わ、私たちまだ学生だけど!?」


「もちろん、今すぐにって訳じゃない。式を挙げるのは卒業してからでいい」


「確かな繋がりが欲しいんだ。つまりだな…恋人で終わらせるんじゃなくて……っ婚約者に、ならないか」


心の内をさらけ出すように、彼は一つ一つ真摯に言葉を紡ぐ。

庶民には馴染みのない婚約者という響きに思わず面食らってしまうが、私との将来を考えていてくれたことが嬉しくて、舞い上がりそうなのも事実だった。


「お前の父親には先に話をつけといた。だから、まあその…あとはお前が頷いてくれるだけでいいんだ」


私の返事を待つ瞳が、不安げに揺れる。


「…かといって、無理強いはしない。伯爵家に嫁ぐってなったら、全部が全部今までと同じようにとはいかないだろうし、クレアが幸せになれないような選択はしたくない」


「お前は……クレアは、どっちがいい?」


一歩進むか、現状維持か。

わたし…私は……遠くから見守るだけの神様(プレイヤー)や背景と同じ記憶に残らないような存在(モブ)なんかじゃなくて、あなたにとって、『どんな時でも隣にいてくれる人』でありたい。そして、これから歩む人生、新しい世界に足を踏み入れる時には、他の誰でもない、あなたが隣にいてほしい。


「……サミュエル。私、覚悟なら出来てるよ」


彼の瞳を真っ直ぐ見つめ返す。


「これから先、どんなことがあっても、あなたの隣に居続ける覚悟が」


大きく息を吸い込んで、ちゃんと伝わるように、一つ一つ噛み締めるように告げた。


「末永く、よろしくお願いします」


「っ…!」


息をのむような音。

私の返事に、サミュエルは緊張していたのをふっと破顔して、おもむろに私を抱き抱える。そのまま、喜びを抑えきれないと言わんばかりに、クルクルと2、3回まわった。


「わっ!あはは、もう…」


いつもの彼じゃしないような突飛な行動に、思わず笑ってしまう。


「よかった、一緒にいれるんだ……」


彼の抱きしめる力が、ほんの少し強くなった気がした。

しばらくすると、サミュエルは私を優しく下ろして、ポケットから小箱を取り出す。それが何か、私には何となく予想がついた。


「これを、お前に」


彼は小箱からシンプルなデザインの指輪を取り出すと、跪いて私の左手の薬指に指輪をそっと通した。洗練されたダイアモンドが、薬指でキラキラと輝いている。


「デザインとかオレ好みのやつだから、お前が気に入るかはわからないが……」


「ふふ、私このデザイン好きだよ。すごく嬉しい」


そう伝えると、彼は満足そうに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ