28話
乱暴な描写が含まれますが、この小説は相手に行為を強要することを推奨しているわけではありません。ご了承ください。
その日は唐突にやってきた。
放課後、本に良い仲直りの方法でも載ってないかなと思い、図書室に向かう途中のことだった。
「やあ、チャロアイト嬢」
待ち伏せしていたかのように私の行く手を塞ぎ、ニコリと演技でもするみたいに行儀よく笑う見知った人物。まさに今、どう仲直りしようかと悩んでいたサミュエルだった。
久しぶりにまともに顔を見たサミュエルは、まるでゲームにでてくる彼のように淀んだ目をしていた。
「何日ぶりだ?1ヶ月?2ヶ月?……まあ、どうでもいいか」
大袈裟な身振り手振りを交えて、笑みを貼り付けたままだんだんと近づいてくる彼に、言い表せないような寒気を感じて思わず後退りしてしまう。
頭の中で、警告音が鳴り響く。
「おいおい…何故逃げる?あの日お前が『隣を歩いてくれ』って言ったのに」
そんなこと言われたって、誰だってそんな不穏な雰囲気を纏っていたら逃げたくもなる。
瞬間移動できる魔法道具があればこの状況からどうにか逃げ出せるだろうけど、そんな高価なものなんて、この世界では上流貴族とか国営の団体くらいしか持っていない。
「……ああ、もしかしてオレが怖いのか。オレはもう、お前の何でもないもんな」
そう言われて、私は咄嗟に「違う!」と言い返してしまった。
「じゃあ、逃げるなよ」
彼が目の前まで近づいてきて、手をがっと掴まれた。虚ろな一対の目が、こちらを見下すようにじっと見ている。
彼の顔をよく見ると、以前見た時よりもやつれてて目元には隈ができていた。
しばらく寝れてなかったのかな。
恐れや気まずさよりも心配が勝って、私は掴まれた手を振りほどくことが出来ず、彼に引っ張られるままついて行くことしかできなかった。
●○●○
無理矢理クレアを引っ張ってきて、物置のような状態の空き教室に閉じ込めた。
背もたれの皮が剥がれかかったソファの上に有無を言わさず押し倒すと、ギシッとソファの軋む耳障りな音が響く。
状況が飲み込めていないクレアは、未だに目を白黒させている。何をされるかまるで分かっちゃいない、純粋な瞳。今から汚されるとも知らずに。
すぐさま彼女の両腕を自身の片手で強く押さえつけて、逃げられないように彼女の足と足の間に身体を割り込ませた。
誰かのものになりそうな人を傍においておくためにはどうするか。
誰でも思いつくことだ。でも、まともなら誰も実行には移さないことだ。
傷モノにして、責任を取ってしまえばいい。
「残念だったな。ここじゃ、何されたって誰もおまえを助けにこない」
「……黙ってないでなんとか言ったらどうだよ」
沈黙が息苦しくて、吐き捨てるように言った。
クレアは恐怖で絶望することも、親の仇を前にした時のように憎むこともなく、強い意志を持ったまま静かにオレの目を見つめていた。
「…こんなことしたって意味ないよ。殴られようか蹴られようが、この心だけは私のものだから」
「だから、あんたなんか怖くない」
その口は全くの見当違いなことを言うが、真っ直ぐオレを見つめる瞳が、嫌に眩く輝いていた。
「ッ……!オレは、おまえのそういうところが大っ嫌いだ」




