番外編 ある日のひとコマ
「サミュエル様、今度私とお茶でもいかが?」
「お誘い感謝する。だが、予定があるんだ。すまないな」
そういった光景を学園に入ってからよく見かける。多分、学園に入る前も社交界でよくあったんだろう。彼は猫かぶりして慣れた様子でそれらに対応していた。
「……いいの?あの子すごく美人さんだったのに断っちゃってさ〜。そのうち居なくなっちゃうよ?」
「はん、オレはこれでも相手には困ってないんでね」
いやまあ、その通りではあるんだけども。急に自分はモテる発言しちゃって…場所が場所なら色んな方面から刺されそうだ。私が男なら間違いなくスネを重点的に狙って蹴ってる。
というか、相手に困ってないなら婚約者なんてすぐにできるもんなんじゃないの?
まさか、決まった人とじゃなく色んな人とってこと?流石に悪役から浮気性チャラ男キャラにジョブチェンジはちょっと……。
「相手に困ってないって…サミュエル、婚約者いないじゃん」
「なっ…ソ、そっ、それは…おまえを、や、ちがっ…お前が……っ」
「え、私?」
何だ、幼馴染みの私がいると邪魔だからちょうどいい婚約相手がなかなか見つからないとでも言いたいのか…?
闇堕ちというか、悪役堕ちというか、そういうことにならないように一応近くで見守っとこうと思ってたんだけど……え、こういうのって一緒にいるの控えた方がいい感じ?親離れならぬ幼馴染み離れ的な??
「っお前が…………ひ、ひとりで行き遅れるのはかわいそーだから、このオレが あ え て 選ばずにお前と一緒の状況になってやってんだよ!ばーか!」
彼の唐突なディスりに一瞬面食らってしまう。
え、何私煽られてる??せっかく人が心配していたというのに…!
「は…はあああ?なんで行き遅れるって決めつけるのよ、失礼にもほどがあるでしょ!」
「私はそういうのは間に合ってるだけでーす!!」
「そう言うんならオレだってそうだし!大体この時期ならまだ決まってなくたってなにもおかしくはないんだからな!」
「ハイハイそーですか」
聞こえませーんのポーズで、彼がぎゃいぎゃい騒ぐのをスルーする。視界もうるさいのでついでに目をつぶっておこう。
「なんだよその態度!そんなやつはこうしてやる!」
私の態度にかちんときたサミュエルは、そう言うと私の頬を両手でぐいーっとつまんだ。やめろ私の頬はモチじゃないんだぞ。
「いひゃい…ほっへふはふのひゃめろ」
「ふん。いい気味だ」
じとーっと睨んでいると、いじめて満足したのか彼はようやく頬っぺをつまむのをやめた。
もう!とんだ杞憂だったな……。サミュエル相手に気を使うのはこれで最後にしてやる!
そう思いながら、私は少しヒリヒリする頬を撫でた。




