18話
うってかわって昼休み。
本日はなんと!ミアちゃんたちと一緒に食堂で昼食をとる約束をしているのだ。何で『たち』なのかって?ミアちゃんが紹介したい友人がいるからとかで、せっかくなら一緒に食べよ〜みたいなノリになったからだ。ノリが軽い?いいんだよノリは軽くてなんぼじゃい。
ちなみにサミュエルも参加するらしい。いつも一緒というわけではないが、まあ、時間が合えば私とサミュエルは一緒に食事してるからこちらも流れでってわけ。
定食の乗ったトレーを持ったまま探していると、椅子に座っていたミアちゃんが「こっちこっち〜!」と手を振っていた。案外早く見つけられてひと安心だ。
「紹介するね!こちらがレオ・アベンチュリン様で、その隣がウィリアム・ガーネット様。とっても良い方なの!」
「それから、今はここには居ないのだけれど、アシェル・サーペンティン様も後からいらっしゃると思うわ」
……うん。なんとなくそんな気はちょっとしてた。
そうだよね、同じ生徒会(通称『プリズム』)に所属してるんだから、そりゃ仲良くなるわな。
そういえばレオ(最推し)に関しては二度目ましてだが、ウィリアムとアシェルにはまだ出会ったことがなかったな。ウィリアムは確か、代々アベンチュリン家に仕える騎士の家の長男で、アシェルは伯爵子息だったっけ。
「まさかクレアさんがミアさんとも友人だなんて知らなかったよ」
「あら、知り合いでしたか?」
「うん!ね?クレアさん」
「アッ、はい!」
気を抜いていたが、最推しに同意を求められ慌てて返事をする。ちょっと声が裏返ってしまったが、もうこの際気にしないことにしよう。急に最推しに話を振られて心臓が止まるかと思ったわ……。唐突な供給は心臓に悪い。これが画面越しなら「いいぞもっとくれ」案件だが、流石に目の前にいる状態でこれはしぬ。
「…クレア嬢」
あらかた紹介が終わると、ライオンのたてがみのような立派な金髪をした青年、ウィリアムが話しかけてきた。
「先日、従兄弟が貴女の世話になったと聞いた。……礼を言う」
赤い瞳がこちらを見つめる。何を考えているか分からないと言われがちな彼だが、その瞳は至って真剣そうだった。
……礼を言ってもらってなんだが、全くと言っていいほどその従兄弟とやらに心当たりがない。私何かしたっけな……?てか従兄弟is誰??
「あの、すみません。従兄弟って……?」
「……眼鏡をかけている。彼いわく、実技の試験のときに助けて貰ったと」
あ、ああ〜!あの子か!!やっとわかったけど、あの人ウィリアムの従兄弟だったの!?
「そんな、お礼だなんて……私はただ、自分が出来ることをしただけです」
「それでも、感謝する」
う〜ん、別に大したことはしてないんだけど……流石にいつまでも頭を下げさせるわけにはいかない。
「ええと…どういたしまして……?」
「もし…何か困ったことがあれば、出来るだけ力になろう」
「あ、ありがとうございます」
こう、真正面から言われると何だかむず痒いもんだな…。正直ちょっと照れくさい。
ていうか、今更だけど私はモブなのに着々とメインキャラたちと知り合っていってるのは何故なんだ。
「そういえば、サミュエル君も来るんだったよね?」
レオが不意にそんなことを言う。
そういえばちょっと別れた後に、「すぐ追いつく」とか言っておいて、全然来ないな。
ちょうどいいや、照れくさいのを発散するついでにサミュエルを探してこよう。
「あの、私探してきますね!」
そう言って私は、椅子から立ち上がって食堂を出た。