10話
その後サミュエルのスパルタ指導のおかげであらかた筆記試験が無事に終わり、学園生活に慣れて生活も落ち着いてきた頃。
キツいと噂の実技試験が幕を開けようとしていた。
生徒たち目の前で、担当の教員が声高に説明をしだす。
「実技試験では魔力の強さをはじめ、様々な能力を測定します。ひとりで活動するのも、生徒同士で協力するのも自由です」
「試験会場では自身の手に負えない魔物に遭遇する可能性もあります。リタイアする際には各自に配られた【追想の笛】を使用すること。笛を吹いた後、職員がすぐに駆けつけますからその場に待機していてください」
「試験内容は以前渡した資料の通りです。それでは試験に合格できるよう、頑張って下さい」
学園のいちばん高い塔のてっぺんに設置された鐘が、堂々とした音色で鳴り響く。
___試験会場の合図だ。
・・・
現在地は、訓練用に整備された学園所有のフィールド内。森林を自然に近い形で再現したこの場所で、私たちは試験時間の間、できるだけ長く生き延びなければならない。とはいっても試験だから死者は出さないだろうけど。
もし身の危機を感じたらすぐにリタイアして、リタイアした時点から時間の長さを計測して成績をつける。もちろん、試験時間まるまるリタイアせずに過ごせば最高評価だ。
目指すはリタイアせずにクリアすること!もちろん安全第一だけどね。
「おい、あんまりぼんやりしてると魔物にガブッといかれるぞ」
隣にいたサミュエルがそう告げる。ん、隣??
…え?なんで、というかいつの間に隣に……?
「…てっきりソロでやるのかと思ってた……」
「まさかお前、さっきの先生の話聞いてなかったのか?生徒同士が協力するのは禁止してないって言ってただろ」
違う、そうじゃない。
話を聞いていなかったとか決してそういうわけじゃなくて、サミュエルはゲーム内でひとりでこのイベントをこなしてたから、この世界でもそうなのかなと思ってたんだけれど……。
「そ、それに」と彼は話を続ける。
「様々な能力を測定するって言ってたし、協調性とか、そういうのも含まれてるんじゃないかって。あと、1人よりも誰かと組んだ方が安全だから大体の生徒はそうするだろうし……?」
ほーん??なるほど、より得点アップを目指すために、とりあえず幼馴染みの私と手を組もうということだな??いやあ、これは名推理に違いない。探偵事務所開けちゃうね。
「たしかに、それもそっか!」
「あ、ああ。ほら、早くしないと置いてくからな」
「わー!待ってってばー!」
そんなこんなで、彼とペアを組んでの実技試験が始まったのだった。