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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
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㉓「不協和音」

今回の過去編は記憶は第二章〜英雄の旅立ち〜の29話の「酒場での出会い」の続きになります。


紛らわしい時間軸でごめんなさい。でも大切な回なんで書きます。


楽しんでいってくださいね!!



 雪が止み、久しぶりの青空に太陽の光が差して来た頃、俺は明晰と呼ばれた老人と落ち合うために村の外れにある訓練所で待ち合わせをしていた。


勿論、待ち合わせの時まで暇なので、日課としている素振りをしながら。


「百二…百三…百四……、百五。」


「おい、バード。人の素振りを勝手に数えるのはどうかと思うぞ?あと集中出来ないから辞めろ。」


「アンセム君…。僕 は 今 暇 な ん だ。」


「勘弁してくれ…。セレーヌは?」


「まだ寝てる。」


「武器にも眠りは必要なんだな。」


「あ〜、彼女は正確には武器じゃないんだ。」


「はあ?」


「ややこしいから詳しい説明は省くけど、簡単に言うと、彼女は武器を憑代とした精霊なんだ。それも、最高位の。」


「まじかよ。最高位の?」


「ああ、そうさ。まあ、僕のほうが断然格式も力も上だけどね。聞いてる?」


 今更ながらだが、精霊には精霊には幾つかの段階が、ある。

 高い順に言うと、神精霊、高精霊、大精霊、中精霊、小精霊、妖精霊の6段階に分けられている。


 中精霊まではそこらじゅうにいるが、大精霊から上の精霊は滅多にいない。

 例えば、厳密に言えば魔物であるがトレントが森の主と呼ばれているならば、大精霊は土地神と言える程の力を持っているし、本当に滅多にお目にかかれない。高精霊や神聖霊などは一部の地域でなら信仰があるし、そこまで格式が高いものだと、神の使徒などもいる。その神精霊なのだから驚きだ。やっぱりあのうるさい小娘、セルビア教会に放り投げてやろう。厄災の匂いがするからな。仕方がない。


「…………バードとは違うのか?」


「うんうん。やっぱり、聞いてないよね。………そうだね〜、僕は神剣と言われているけれど、正しく言うなら………」


その時、背後から聞き覚えのある女性の素っ頓狂な声が聞こえてきた。


「マーティン?」


この声は…ソルティアさん?


 直ぐ様振り向くと、俺の予想通りそこにはソルティアさんが驚愕の顔をしていた。珍しくシラフになっており、顔は赤くなっていない。

 小さい頃からほとんど変わっていない彼女の美貌につい顔を赤らめそうになるが、今はそれどころじゃない。


何で俺を父さんの名前で呼んだんだ?


余りにも急な展開に、バードの減らず口も全く機能していない。


「マーティン?あんただろう?私の目はごまかせないよ。もうあんたがいなくなって、もう70年近くになる。」


そう言いながら、俺に近づいてきて頬を撫でるソルティア。珍しく優しく微笑む彼女の美しさに、完全に動揺してしまう。


「そ、ソルティアさん?俺は…」


「『ソルティア』じゃないの?何で…呼び捨てじゃ…。」


「ソルティアさん。俺は父さんじゃない。」


「嘘だよね?だってマーティンの顔そのままじゃないか?」


俺は以前この村を飛び出してから一度もこの人と会っていない。だからか?村を出て2、3年たってから、よく○○○○から『お義父さんに顔つき似てきた』と言われていたが……。あれ誰にだっけ?


「俺は父さんじゃないよ。ソルティアさん。俺はマーティンの息子のアンセムだ。」


「アンセム?確か50年も前に死んだアンタの、私の義理の息子だろ…。マーティン?」


「………。」


どういうことだ?頭が混乱する。取り敢えず今言えることは今のソルティアさんは混乱していて、話を聞いていないということだ。


ここは、一旦。父の振りをして落ち着かせてみよう。


「済まない。朝ボケで頭がボーとしてたんだ。そうだ。私だ。マーティンだ。」


「……本当に………マーティンなのか?」


「ああ…そうだ。」


「遅いじゃないか…。もう、皆、老衰で死んじまった。コーラスも他の皆も…………。」


「…………。」


「不死な私以外、アンタを待ったまま、死んじまった。」


 懐かしい笑みで微笑んでいたソルティアさんの顔が急に強張らせて、俺の胸元に震える腕で縋って涙を垂らしながら俺を見上げる。


「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいで……全部、私のせいで…アンタはこの世から飛び立って行ってしまった………」


ど、どういうことだ!?


確か話ではコーラスさんを庇って矢に当たって死んだ筈だが……。


 やはり今のソルティアさんの様子がおかしい。いつもの姉御肌のソルティアさんじゃない。


今のソルティアさんは罪の意識に苛まれていて、本当に弱っているように見えた。


俺は考えるのが苦手な頭をフル回転させて、ソルティアさんが落ち着くような言葉を何とかひねり出しそうと頑張って何とか声に載せた。


「…………………君のせいじゃない。誰のせいでもないんだ。ソルティア。気にも止めなくていいんだ。」


「……ほ、本当?…本当にそう言ってくれるのか?」


「ああ。」


「………許してくれる?」


「ああ。」


「あ、ありがとう。()()


(ふう………)


 何とかソルティアさんは落ち着きを取り戻すことができたようだ。


 ふぅっと安堵のため息が心の中で出てくるが、次の瞬間、ソルティアさんの口から予想だにしない言葉が出て来た。


「マーティン。私の、貴方のソフィアの偉業を見せたかった。あの子は凄いことをしたんだ。アンタの夢を死んだ息子の夢を…引き継いで叶えたんだ。」


「ああ…?」


(え……?ソルティアさんがソフィアの実の母親…?)


余りにも強い衝撃に脳がジワジワと揺れる。


「ごめんなさい。ごめんなさい。」


 再び、ソルティアさんが泣き崩れ始めた。


 もう、ほとんど動いていない真っ白な頭だったが、それどころじゃない。今すぐ、ソルティアさんを強制的にでも眠らせないと、今にも自殺しそうな勢いだ。


「ソルティア。ソルティアは頑張りすぎだ。一旦眠って、疲れを取ってほしい。」


 テンパってしまって父さんの口調を間違えていないか不安だったが、少しして僅かな寝息と共にソルティアさんは俺の腕の中で再び眠りについた。


― スー スー ―


 余りにも、大きな衝撃だった。そのおかげかソフィアに関する記憶が少しだけ蘇ったので、ソフィアの顔を思い出しながら今寝ているソルティアさんの寝顔を見比べる。


(ソフィアは青みがかった黒髪に対して、ソルティアさんの髪色は黒髪で似ていないが、確かに言われてみれば、顔つきが似ているな。)


(何で、俺は今まで気が付かなかったんだ?)


再び頭がボーとし始めるが、今は考えたくなかった。


 だからかなのか、なにも考えず、俺はすぐにロアと一緒に寝泊まりしている自分の家に、いや、ソフィアと俺の家にソルティアさんをお姫様抱っこしながら急いで運ぶことにした。


(父さん。どうして黙っていたんだ!?)


(あぁ〜もうっ!!今は考えるな。ソルティアさんをベッドに運ぶことを考えろ。)


 今は、まだ真冬の暁時だ。太陽も差してきてから間もない。外の空気は氷よりも冷たいのだ。故に、外で眠り続けることは死に値する。


(考えるな、考えるな、考えるなっ!!!)


 いつもなら、そこまで距離は感じない道の筈なのに、今に限ってすごく時間がかかっているような気がする。俺にとってそれくらいソルティアさんの言葉は衝撃が大きかったのだ。


 やっと家の前についたので、息を切らしながら玄関のドアを開けて駆け足で家の中に入る。


 そのままリビングに入り、古臭い、懐かしいソファーにソルティアさんを寝そべらせ、暖炉の火を火の魔法を発動する第一段階を利用しておこした。


「ふぅ…危ない。」


 俺が額を拭いながら一呼吸していた時、二階から降りてくるトコトコという音が聞こえてきた。


「アンセムさん?」 


 俺が二階に続く階段を見上げると、そこにはロアがいた。


「ロアか…。もう起きちまったのか?」


「はい。もう、目も覚めてしまったので、朝食の準備をしようかと…。」


そう言いながら、ロアはさっき俺が被らせた分厚い毛布にくるまり、スースーとと小さな寝息を漏らしているソルティアさんに目線を移す。


「え〜とな、ソルティアさんが外で、飲んでくれたから、ここに避難させてたんだ。丁度良いな?

 ロア。ここで見ていてくれないか?勿論、朝食の準備をしながらで良いから。」


「分かりました。」


「俺は、いつもの修行をしにに戻るから。後は頼んだぞ?」


「はい。分かりました。それと、おはようございます。アンセムさん。」


「ああ?そうだったな?もう朝だったな。おはよう。ロア。」


ロアとの挨拶を交わした俺は、すぐさま明晰との待ち合わせ場所へとダッシュを決めた。

 

頭の中がパンクしそうだ。


じゃあ、ソフィアが義妹だってのは違う意味の義妹だったってことか?


ソフィア自身は知ってたのか?


母さんは…感のいい人だから分かっていた筈だ。だとしたら、母さんは父さんを許してソフィアを育ててくれていたのか?


あ~もう、もう頭の中がグチャグチャだ。


「相棒。今は考えるな!ゆっくりと消化していけばいいんだ!!」


 バードがブーブーと刀身を揺らしながら話しかけてくる。


「これが考えられないでいられるか?父さんは母さんがいるのに、ソルティアさんと子供を作ってた。それも僕達にも秘密に…貴族でもないのに…!!」


頭の中が本当に爆発しそうだった。


「クソッ!」


 僕は、たまたま目の前にあった村の外れに生えていた樹木に思いっきり拳を叩きつける。殴られたその樹木は衝撃に耐えきれず、ギシギシと音を鳴らして倒れていった。


今、俺は殴らないと済まなかった。


怒りと、困惑と父へと失望と、僕の初恋だったソルティアさんの秘密を知ったショックで頭がおかしくなりそうだった。


「お、落ち着いて相棒!!」


バードの静止も今の僕には無駄だった。


俺は…。僕は……。


ただただ、今は暴れたかった。


「クソックソックソックソッ!!」


数分という時間を犠牲に自分を何とか抑えて、一時的にだったが少しだけ冷静になることが出来た。


「ハァハァ……、明晰(あの爺さん)と待ち合わせ場所に向かわないと………」


「あ、相棒…。」


 俺が発狂寸前だった数分間、バードは何も言わなかった。きっと、今の僕に何を言っても逆効果だと分かっていたのだろう。ただその気遣いに気がついて俺は少しだけ落ち着くことが出来た。


ただ、何故こんなに意識がボヤけるんだろうか?それに、手が明らかに透けているような気がする。


「グッ!?」


急に身体に力が入らなくなり、必然的に地面に勢いよく衝突することになる筈だったが、何故か、そうならない。ふわりと身体がまるで質量のない羽毛のように着地する。


―あぁ!! お兄ちゃん見っけ!!!ゲッ!!何その顔!!またいじめられてたの?―


(な、何だ!?)


この身体が不協和音みたいな金属?いや、肉?音が聞こえてくる。ただ不気味だった。


―兄ちゃんの考えてることなんか目を見るだけでわかるもんね―


あれ?ここは?


「アン…セム……。今は、駄目…だ!!戻ってき…てくれ!!」


―ふふん、お兄ちゃんのお世話は私の仕事だもん。

お兄ちゃん泣き虫だから、タイヘンだよ―


その時、1人の少女が俺に駆け寄ってくるのが見えた。この幼さが残った少女は誰だっけ?


「ア…ン…セム…さん!?……気を…しっかり…くだ…さい。」


何故だろう、今本当に全てを忘却すれば全てが楽になる気がした。そういえば僕は誰だっけ?


―兄さ〜ん、朝ごはんの準備ができたわよぉ!!―


「ク…ソゥ゙…かな…り…ヤバ…い……だ!!、……が…もた………ない……この…まま……じゃ…ア…セ…ムが!?」


最近、こんなことばっかりだなぁ。


あれ?どこだっけここは?


ただそんなことを頭の中でつぶやきながら俺の意識は途切れていった。


―――――                ―――――


ここは…


何処だろうか?


気がついたら俺は静かな本当に心臓の音ですら、なんの音も聞こえない静寂な空気が広がる空間にいた。


おかしい。


彼が違和感を感じるのは間違いではない。彼がいた次元では、絶えず何かしらの音が流れていた。


 虫の音、流れる川の水の音や風の音、人や動物から流れる独特な不協和音、はたまた風に揺らされてカサカサと揺らす木の葉。


そう、人は音に慣れている。しかし、いきなり音が一切ない静寂が訪れるとどうなるのだろうか?


そう、人は、完全な静寂の中にいると不安になる。


しかし、今、この男ははこの不気味と言えるようなこの空間で平静としていた。明らかに異常な状況だった。


横を見ていても、白色?のようなモヤが空間を漂っているのみで何もない。


周りを見ていても、本当に何も無い。


 ただ、一つだけ、例外はあった。上を見上げてみると、数え切れない程の数の幾つもの沢山の影が、行進していた。


(ここは…あの世か?)


「正解だ。人間。いや、()()()ってところかな?」


 急に声をかけられて驚きながら落としていた目線を上げると、そこには1人の彫刻のような調和の取れた美しい顔の青年が立っていた。


背後には、禍々しい、この世の者とは言えないような扉が、閉まった状態で男の後ろにたたずんでいる。


「おかしいな。さっきまでそこにはいなかったんだが?………あっ!やべえ。俺、バードの刀身をまだ磨いてない!?」


 俺の気の抜けたようなセルフを聞いた青年は、その陽気そうな素顔を一瞬、呆けていたが直ぐに愉快そうに笑い始めた。


「ハハハハハハッ!!ここでは距離や空間はないに等しくてね。よく驚かせてしまうんだ。って今彼を気にするところかな!?

 随分肝が据わっているね?だいたいの人間はいきなり訳の分からない場所にいたら、動揺していたけどね?」


「う、うるせぇー!あいつがふてくされたときのあの面倒くささったらどうしようも……というか、何でバードのことを知ってるんだ?」


「説明しても分からないから、そういう存在ってだけ理解してもらうと助かる。所で、話を始めても良いかな?」


「はぁ?」


青年は気を取り直すようにコホンッと軽く咳払いしてから口を開いた。


「端的に言おう。どうして君はここにいるんだろうか?」


俺に聞く?


「いや、俺もそれは知りたいんだが?」


「ハァ〜。分かった今君のいる現状を教えよう。


一つ。君は今、冥界にいる。


二つ。君は死者の行進から大きく外れて、()()くらいしか通ることも出来ない所なのに、平然とたたずんでいる。


三つ、君は、本来自我は失っている筈だがそんな様子は見当たらない。


最後に四つ、それを報告されて、今僕は増えた面倒事を片付けなければ行けなくて少し、僕は憤っている。」


「それは、それは、いつもお勤めありがとうございます(?)」


「ホントホント、君達には来世でも感謝してもらいたいくらいだよ…って目の前の問題の諸悪の権現が言うセルフか!?」


こ、この青年…やけにノリが良いな…。


「まあ良いよ、取り敢えず僕の上司に報告しないとね。どっちにしろ君は明らかに異質な存在だ。」


「へ?」


気が付いたら、俺は何処かの部族が獲物を運ぶ時のように、豚の丸焼きのようなポーズを強制的に取らされた。


「君はさっさと元の世に帰れ!二度と来るなよ!!」


 その青年がそう言った瞬間、禍々しい扉が開いて一瞬で、俺は吸い込まれるように扉の向こう側へと入っていった。


―――――                ―――――


気がつくと、俺はあの慣れ親しんだ酒場の前で、立っていた。


 隣には、まだ幼さが残っている黒髪の上に魔法の帽子を乗せている少女。向こう側ではギークとエルフのグルセナが立っていた。


うん?なんか俺、さっきまで変な夢?を見てなかったか?


「おい、ガキ。なにボーとしてんだ?」


ギークが酒瓶をぐいっと傾けるながら俺を睨見つける。


こいつ、さっきからずっと酒を飲んでるな…。


「兄さん。この人たちの依頼の内容ちゃんと頭に入れてる?」


「いや〜。すまん。聞こえなかったわ。」


申し訳なさそうに後ろの頭を書く俺にソフィアが半場呆れ顔になる。


いや、本当にすんません。昨日、「荒野の叫び」でマスターと一緒に酒盛りをしていて二日酔いになったことは言えない。


「ハァ、良い?私達は、これからこの2人と一緒に、霧の森周辺にいる盗賊団を討伐するの。これは分かっているわよね?」


コク。


「そこで、囮となって兄さんとギークが敵を引きつけてから、ここまでおびき寄せたら、」


そう言って、ソフィアは地図のバッテンを指差して、俺に向きなおる。


「私とこのエルフさんが魔法と弓で攻撃するの。これで合ってる?」


そう言って、ギークの方を見るソフィア。対して、ギークはコクリと頷いて、ソフィアの問いかけに答えた。


「ああ、そうだお嬢さん。ガキも分かったか?」


「ああ。分かった。」


「よし、明日の早朝にここ、「荒野の叫び」に集合だ。人数が集まり次第、霧の森周辺を探索し、盗賊団の野営地を探し出す。日和って、逃げるなよ?ガキども。」


「誰に言ってるのかしら?」


「さあ?自分のこと言ってるんじゃないか?」


そう言って、わざとらしく肩を進めながら顔を合わせるように俺とソフィア。グルセナも苦笑していた。


「チッ、さっさと言った言った。生意気なガキ共はもうお昼寝の時間だ。」


ギークは面倒くさそうな顔をしながら俺とソフィアの背中を押して、部屋の外、廊下へと追い出した。


―バタンッ―


静かな空気が通り過ぎたあと、廊下に押し殺していた2人の笑い声が響き渡った。


「クククッ」「アハハハッ!」


顔を見合わせながら笑いあう2人、成人したとしてもまだ精神性は完全に大人になっていないようだ。


「「呆気に取られた顔!!」」


「傑作だった!」


「まさか、ガキに反撃されるとは思いもよらなかったでしょうね?」


2人は再びあの山賊のような姿の男の宇宙猫顔を思い出してクスクスと笑い出す。


少し時間がたった頃、笑いから覚めた俺達は荒野の叫びの2階の廊下を歩き出すことにした。


「よし、飯にでもするか。」


「ところで兄さん?昨日、またマスターと酒盛りしてたでしょう?」


―ギクッ―


「い、いやぁ。何のことかな〜?」


「昼ごはんが終わったら、説教1時間のコースね。」


ゲッ!?ソフィアの説教だって、ただでさえ怖いのに1時間もかよ〜!!


トホホ。


俺ははひとり肩を窄めたのだった。


―――――                ―――――


侵入者くんが扉の中へと入っていったあと、再び静寂が空間を支配していた。しかし、その空間は青年による言葉に遮られることになる。


「ふぅ〜、これでタスクは殆どないかな?それにしても、騒がしい男だったな。侵入者くんは…。」


ここは静かだけが取り柄みたいな所だ。たから青年にとって、この来訪者(侵入者)は、特別に新鮮だった。


ここに来るのは自我のない死者か、小うるさい上司、または時々現れる同僚くらいだった。


それが今日、初めてそれら以外の存在と出会ったのだ。


「それにしても、あれが英雄の送人か…………どうして、セシィティア様はあんな異質な存在を創造なさったんだろうか?」


ここ冥界の間は、時間も空間も距離も存在しない次元。理由は省くが、全ての下等な生き物はここでは生きていけることは出来ない。


なのに、侵入者くんは普通に生きている状態だった。いや、半分は死んでるかな?


青年はあの男に興味を抱き始めたが、あの男はきっと生きた状態で二度と戻ってこないだろう。いや、でも一回でもこれたんだからまた来そうだな。


「いや、わりとマジで来ないでほしい。あのひとに怒られるから。」


青年はブンブンと頭を振ってそれを全力で否定することにする。この退屈な仕事に新しい風となる刺激に期待する半分、面倒事が次々と起こることは分かりきっていた。


たが青年は、「それはそれで良いかな。楽しそうだし。」と1人つぶやいていた。


「さて、どうやって説明しようかな?あの人に。」


 やれやれとニヒルな笑みを浮かべながら、青年はあの男の一瞬とも永遠とも言える長くも短くもある楽しく、新鮮な会話を思い出しながら上司への言い訳を考えることにした。



あと、数話は過去編になります!!


次回は、2月7日土曜日の0:00です。


次回もお楽しみに〜!!


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