⑱「流浪の鬼人」
「一人で喋ってる人って、不気味だよね。それとも、その聖剣に宿ってる精霊さんとしゃべってるの?」
俺は、シルフィの放つ言葉に驚愕を隠せなかった。
と言うか、猫の獣人な特性なのか?全然物音もしなかった。よく見ると気配も小さい。
唖然としている俺の横で急にバードの刀身が振動する。
「まずいつ!!は、早くごまかしそう!!」
わ、分かってるさ。
「いやな、一流の戦士としてな〜。自分の愛剣に毎日語りかけることにしてるんだ。良いだろう?」
「ふ~ん。面白い趣味だね。」
何か、シルフィは納得したらしい。
ホッとした束の間、シルフィは俺を即座に緊張させる言葉を放ってきた。
「その聖剣?は、何処で拾ってきたの?私が孤児だったときに育った教会の聖剣像とかなり似ているけど…。」
訝しむように、セレーヌを見つめるシルフィ。
いろんな意味で熱い視線を感じで、聖剣ちゃんもとい、セレーヌは顔を赤らめている(ように見えた)。
「ちょっと〜、そんなに見つめないでよ。恥ずかしいじゃない!」
「ちょっと!あまりしゃべらいで、彼女は僧侶だよ?君の聖気なんて、ただでさえ筒抜けなのになんかしたら、君の存在に気付いた彼女が君を誘拐しかねない。」
「確かにそうね…静かにしておいたほうが良いわね。」
そんなやりとりをする二人。はたから見ると、武器同士が喋っているのは滑稽だな…。
そんな二人を横目に気を取り戻して、俺はもう一度誤魔化すことにした。
「元々ただのロングソードだったんだけどな…色々あって、聖気が取り憑いちまったんだ。決して由緒正しいあの"聖騎士の聖剣"じゃないからな?」
「本当?」
そう言って、こちらを近づきながらジィ〜と俺を見つめるシルフィ。
獣人族は嘘を見抜くのが得意だ。聞いた話には匂いで分かるらしい。いつバレるか心配で心臓がバクバクだ。
「ほ、本当だぜ?」
俺とシルフィは暫く見つめ合っていたが、シルフィは一度身体を俺から離し、ため息をつくしながら目線を逸らした。そして、聖書を取り出してあるページを開いたままこちらに見せてきた。
俺はそのページを見た瞬間、目を見開くこととなった。俺はそこに記されていた聖剣の絵の特徴が、セレーヌと瓜二つだったからだ。
(あれ?これ、セレーヌ"聖騎士の聖剣"だってこと、バレているじゃあ…?)
しかし、シルフィからはそんな雰囲気もなく、ただ淡々と事務的な会話を続けている。
「これ、丁度その剣と似てるやつだけど、もう一本見つかったら、私か他の聖職者に教えて。
この聖剣を探し出すことはセルビア教会の悲願だから。」
俺は、その聖書のページの次にシルフィの目を見る。
その目は、ジト目だった。元々気だるげそうな黄色い光沢を放つ半目がハの字に曲がっており、顔が完全に確信犯を見る目だった。
(あっ、これ完全にバレてるな。終わった…。)
「はあ…。取り合えすこのことは報告しとくけど、聖剣ぽいただのなまくらということにしといて上げる。流石に私もセルビア教会には、完全に嘘はつけないから。」
ちなみに、セルビア教会とは、大陸中に大きく手を広げている数万年も続いている女神セルビアを拝む宗教勢力だ。
かなり前に聖都を失ってから各地を転々としており、今は過去となった百年戦争の和睦の条約が結ばれた『不戦の契り』を補完している不戦の地に教会の本部を置いていて、結構デカい組織である。
そして、"聖騎士の聖剣"と共に失った聖都を取り戻そうと躍起になっている。
だからこそ、今俺が聖剣を持っていることが教会にバレると結構面倒くさい。もう既にセレーヌとの主従関係が進んでいるため、俺は結果的に新しい聖騎士として教会に(物理的に)囲い込まれてしまうだろう。
絶対にそれは防ぎたいのだ。
基本的に人や亜人種族との紛争の仲介や難民の支援を行っている大陸中の平和を願う宗教だが、その一方で教会独自の軍隊も持っており、純粋な国力で測るなら中小国をも凌ぐ。
主神であり、唯一神である女神セルビアが創造の女神であり、戦女神でもある以上、軍隊をもつのは仕方がないといえるが、もしも他の神を祀る宗教団体を受け入れない過激な思想の宗教であったなら今頃、大陸中が宗教戦争で文字通り血の海となっていただろう。
そういえば、俺達が戦っていた黒い聖騎士がいたあの瓦礫の山が転がっていた廃墟の街って…その聖都じゃないか!?
おいっ!また一つ爆弾が増えたじゃねえか!!
もう考えるはよそう。考えるだけで吐き気がしてきた。
俺は思考の波を振り払うように首をブンブンと振ってから現実に向き合うことにした。
「わかった。それで今後教会本部はどう動くんだ?」
「それは…多分。本部から調査団が派遣されるかもしれ…」
その時、急に村中に大きな音が響き渡る。
「な、なんだ!?」
シルフィを見ると、鼻をヒクヒクと動かしていた。そうだった。シルフィは獣人だ。獣人は鼻がいい。
シルフィは何かを嗅ぎとったのか、顔を青ざめた。
「この匂いは…、オーガ!?」
オーガだって?
(まさか…!?)
俺とシルフィは勢いよく爆音が起きた場所へと駆け出した。
その爆音は俺達から村を挟んで向こう側から聞こえていた。
(チッ、遠いな!!).
さっきまで俺達が歩いていた場所は村の向こう側だ。村にしては大きい、へーメル村では端から端までなら距離がある。
(それに途中で、ロアを拾わないとな。)
非常時に護衛が一人もいないのは護衛として失格だからだ。
それにしても、いつの間にか結構歩いていたんだな俺とシルフィは。話に夢中で気が付かなかった。
「ふぅ〜、危なかったね。それにしても、うやむやに出来てよかった良かったよ。」
バードがため息を、つきながら振動させる。その言葉に俺とセレーヌは叫ばざるには居られなかった。
「「何処がだよ!!」」
――――― ―――――
「喰らいやがれオーガ野郎。オラァー!!!」
ダンの黒槍から無数の斬撃がオーガの腕目掛けてぶつかる。
「チッ!?なんて硬さだ!!全く傷つかねえ!!」
ダンにとって手応えはあったが、オーガの鉄のような皮膚に傷がつくことはなく、ただ金属の摩擦によって出来た熱が煙を上げて、振り始めた雪を溶かすだけであった。
「リーダー、どいて!!」
エルザが周りの雪を集めて、一気に凝結させた氷の塊を幾つもぶん投げる。
「うお!?」
「グオー!!」
オーガは手に持っている大剣で突っ込んできた氷の塊を防ごうと盾にすが全部は防げていない。
そのうちの幾つかは手斧に当たって砕けたが、少しは当たったようで、おかげで少しだが怯んでいるように見えた。
「ロイド!?」
「オーケー」
ロイドがオーガの周りを一周して、オーガの足元にロープを巻き付ける。
そして、オーガの両足をぐるぐる巻きにしたロイドはロープを近くの木にくくりつけ始めた。
「グオー!!人間、調子二乗ルナ〜!!!」
オーガはエルザが新たに生み出した魔法『ブリザード』で目を開くことが出来ないままだった。
そして、ブリザードによる吹雪が消えた瞬間、チャンスを得たと思ったオーガは走り出そうとしてそのままオーガは地面に前のめりになって倒れた。
「グオ!?何をした?人間!?」
「よし!!こいつを縛りあげろー!!」
「「おぉ~!!」」
「グオ〜!!」
「…………。」
「足腰異常なし!」
「胴体異常なし!」
「よし!、よくやった。これで、俺達もBランクに近づくぜ!!シルフィの奴、先頭に参加できなくて、絶対に悔しがるだろうな。後で、皆で自慢してやろうぜ!!」
「どういう状況だ?」
やっとのさ駆けつけた所で、大柄のオーガが複数の人間に縛り上げられるというなんというか、シュールな光景を目撃した俺の素っ頓狂な声に、ハイタッチをしていた三人が振り向く。
「オイッ!!ソコノ同胞!!早ク俺の縄を解イテクレ!!」
縛られたオーガが俺に助けを求める。
「俺は同胞じゃない!!」
「そうなのか?」「そうらしいわ。」「そうだっけ?」
縄を解こうともがくオーガを足元に顔を見合わせる三人は不思議そうにしている。
「はっ倒すぞ!!!」
「アハハハッ!!本当だわ!!顔がそっくり!!」
「駄目だよ?いくら似てるとしても指摘しないのも優しさだろう?」
俺の背中から聞こえる二人分の声。
オイ、ちゃんと聞こえてるからな?
「どんまい。これで君は亜人の仲間入りだね。」
「シルフィ。お前が言うと冗談に聞こえないぞ?」
ダンが素の顔で突っ込む。
お前ら…本当に俺をオーガだと思ってたのか?
「ロア、俺は人間だ…よな?」
先程、俺とシルフィに合流したロアにいる方向に振り向く。
「人間です。」
良かった。一人俺の味方がいたようだった。後で、何か甘いものでも奢ってやるからな。ロア。
だがその後、ロアは急に目をそらし始めた。
「けど…微妙に人間じゃないです。」
「それは一体どういう意味なんだっ!?」
「そのままの意味だろ。オーガ野郎。」
「よし、ダン。表出ろ。決闘だ。」
「あ〜あ、こりゃあダンの兄貴やっちまいましたねぇ〜?シルフィさん。」
「これは、もう断頭台まで一直線ですねぇ〜!!」
「まあまあ、どうせボコられるだけだから大丈夫よ。よね?」
「オレを無視スルナ〜!!!!」
いつの間にか、縄を抜けていたオーガが俺達の後ろから大声を出す。
急いで俺達はそれぞれの武器を構えるが、予想外の姿に皆固まってしまった。
心無しか、全体的に縮んでないか?
なんか、オスのオーガなのに人間っぽい、いや青年の見た目になってるし…。
逆にオーガっぽいところは、1本の角と、赤みがかった肌、人間より少し長く尖っている歯くらいだ。
「オレは誇り高き戦士の種族。オーガだぞ!?このオレを蔑ろにするな〜!!」
そう言って、涙目になりながら地団駄を踏むオーガモドキの青年の姿は、
その…いろいろと、あまりにもひどかった。
「ぷっはぁ〜!!いや〜、感謝するゾ。同胞の下僕。」
「はいはい。お粗末様でした。」
満足そうにオーガモドキの青年が腹をすすりながら感謝を述べるのを尻目に、お盆を台所に下げたロイドはため息混じりに答えた。
「良いのか?勝手に村の食料を使っちまって?」
腹をすすっているダンが、心配そうな顔をする。
「良いんだ良いんだ。どうせ、高ランクの魔物のせいでヒーメル村の連中は少なくともエディソンで冬を越すことになるから。「持ちきれ無かった食料はくれてやる」って村長が言ってたから。心配無いさ。」
ロイドは木皿を水溜め樽から水を出して、汚れを洗うと、それをシルフィに渡す。
皿を渡されたシルフィは両手を組んで、黙祷の意を捧げる。すると、木皿を穏やかな風が周り、次々と濡れた木皿達を乾かし、重ねていった。
器用なものだ。
「それにしても、どうしてオーガがここにいるのよ?」
暖炉に薪を足したエルザはお腹をすすりながら、その青年のオーガに尋ねる。
「レシアンだ。オレは訳あっテ、旅してるんだ。」
「旅か…。」
「そうだ。」
レシアンと名乗ったオーガの青年は、今まで訪れた旅路で観たものを楽しそうに話始めた。
豊かな森が広がるエルフのクニや、砂の大地、溶岩が溢れる熱の大地。
時には、海を手作りのボートで渡って、大きな島で出来たジパングという国に言ったこともあるという。
彼が楽しそうに語る旅の記憶はものすごく興味をそそられる話だった。
何と、旅を続けてからもう100年以上も経ったらしい。そろそろ、一旦帰ろうかと故郷に寄ったが、そこには故郷と言えるものは何もなく、何かしらの原因でデカい岩山?のような場所に変わっていたらしく、故郷には仲間はいなかったようで、一瞬動揺したが、よくよく考えてみると引っ越しのあとが残っていたので、今はその痕跡を追って同族探しの旅をしているらしい。
ちなみにそのオーガの集落があったのは深淵の森らしい。
(ん?…………なんかデジャブを感じるなぁ?)
「ちなみに、その集落に行ったのは、どのくらい前なんだ?」
恐る恐る聞いてみる俺。アハハハ。イヤイヤ、そんな偶然が起こることないよな〜〜〜?
そ、そうだよな?だってオーガ種族は長生きだから時代が違うことも……
「2カ月半前だ。」
(oh…………。)
「ええ〜と………レシアンさん、レシアンさんや、これのことはご存知で?」
俺はさりげなく三ヶ月前に俺が集落を建つ時に、オールから貰ったオーガの印をレシアンに差し出した。
すると、レシアンのオーガ特有の鋭い目が見開かれ、驚愕の顔を覗かせた。
「な、何故それを!?」
ロアも黒き刃のメンバーもその印が何なのか分からずにキョトンと顔をしていた。
「いや、その〜多分その集落のオーガたちと親交がありまして…………」
「「「ん?」」」
「親交どころではないぞ!!それはオーガの集落の族長が『オーガの戦友』に送る最高位の敬意の印だぞっ!!」
「「「えっ!?」」」
「ま、まさか……父上、族長と義兄弟なのか?」
「ハァッ!!!!」
(いや、待て!?オールには子供がいた?それがシンシアなのか!?)
「「「いや、お前が驚くな!!!というかいきなり情報量が多い、多い!!」」」
一斉に突っ込む黒き刃のメンバー。ロアに関してはいつもの無愛想ヅラが影もなく開いた口が塞がっていない様子だ。
(アイツ、いくらなんでも義がつくが兄弟なんだから教えてくれたっていいだろうが。なんというか、自分の息子が家出していてそれが恥ずかしくていえなかったとか?)
(ふむ……あのオールならありそうだ。アイツ意外とおっちょこちょいで地味に恥ずかしがり屋だからな。言い出せなかったのかもしれん。)
「いや、どういう交友関係?」
「オーガと…義兄弟?それも族長と?」
「いや、それ以前に何でこいつ『深淵なる森』に入ってピンピンしてるんだ?あの森は人間が入ったら二度と帰ってこないって言われてる魔境の地だろ!?」
「「うんうん」」
「どうしてそんな場所に?」
エルザがそんな質問を投げかけてくる。正直に「57年以上の前の戦場で敵軍から仲間を逃がすために足止めしました」なんて、いっても「はいそうですね。」とはならないだろう。
「それは……かくかくしかじかで………。」
「そこは聞かせろよ!!」
(俺だって、何が起きたか分かってないんだ。そんなこと言ったてなあ…だってよ〜
「今は記憶がなくて顔や僅かな記憶しかない当時の仲間を守るために死ぬ気で足止めして力尽きて目が覚めたらダンジョンでした。」なんて俺でも訳が分からねぇからな?)
狐に化かされた気分である。
「まあまあ、あまり冒険者同士の不用意な詮索はタブー行為だし、これ以上はダメだよ。」
俺が答えに困っているのを見かねたロイドに窘められたダンは渋々、興奮で上がっていた腰を下げて自分のイスに座り直した。しかし、気になるのか聞いたそうにこちらに視線を送る見る面々。ロアやレシアンも例外ではなかった。
オイ、ロイド。君は例え表面上だけでもたしなめたんだから、そんな顔をするな。
レシアンには後で教えてあげるから。
これ以上の追及は流石に困るので、多少わざとらしくも強引に元々の話に路線を修正するために話を変えることにした。
「そういえば、オーガって長寿らしいな?どれくらいなんだ?」
俺たちがその言葉に残念そうにする面々、対してレシアンはニコッと笑いながら誇らしそうに話し始めた。
きっと、レシアンはオーガという種族事態に誇りを持っているんだろう。俺から言わせれば、オーガは皆「馬鹿でオッチョコチョイ」な同族なんだが。
オーガ種族はニ、三千年は余裕で生きるらしく、百年は、人間で言うところの三年くらいだとのこと。
なんというか…長寿種族の感覚は俺たちからすると、壮大すぎるな…。
それでも、彼はオーガと人間のハーフなので、寿命はオーガ種族の半分あるかないかと言っていた。
半分でも俺達の十倍以上は生きるので十分長いのだが…。
一通り話終わって満足したらしいレシアンは今度はこっちに興味が移ったらしい。今度はこっちが質問される側だった。
「まあ、そんな感じダ。そっちはどうしてこんな場所ニ?」
「私たちは、この武器を届けに、オーランド山脈の麓にある村を目指しているんです。」
ロアが、ポツリと喋りだしながら、マジックバッグから重そうな大斧を取り出した。
すると、レシアンは興味深げにそれをジッと凝視して、一言こう言った。
「良い武器だ。気が限界まで、磨き込まれている。その武器は良い戦士に恵まれているな。」
「そうか?俺にはオンボロにしか見えないが…?」
ダンが首を傾げながらその大斧を凝視する。
「確かに…そうだね。僕も分からない。リーダーの黒槍やアンセムさんが背負ってるバスターソードのほうがよっぽど業物に見えるかな?」
木皿を洗い終わったロイドはそう言いながら今度は沸かした湯をコップに入れて、みんなに配り始める。
ダンの言う通り、ロイドは本当に器用なんだな…。
「本物の業物ハ、見た目に寄らなイ。俺が使っていル武器だっテ、見た目はボロいが、炎を纏えル。」
「そうか、じゃあ、俺たちは手加減されてたってことだな?」
ダンががっかりした顔でお湯をすすぐ。
「済まなイ。戦う理由が見当たらなかっタ。説得しようとしたんだガ、聞く耳を持ってくれなかっタ。」
「良いわよ。相手の実力も測れない私たちが悪いもの。私達もまだまだってことよね。」
エルザが残念そうにしながら人指から雪を舞い上がらせて、鳥が飛んでいるように操ろうとするが、上手く魔法制御が利かなかったようで、失敗してしまった。
崩れ落ちた雪は焚火の熱によってあっという間に溶けていった。
「誰も死んでナイ。だから気にすることはナイ。そんなことよりモ、その武器を見てその武器の持ち主に興味を持った。オレもその村まで、ついて行っていいカ?」
「いいが、そのまま冬を越すことになるぜ?それに、同族探しの旅は?」
「大丈夫ダ。たった数カ月くらい問題ない。その戦士と手合わせしてみたい。それに、もう同族には出会ったからな?」
そう言って、レシアンは俺に目配せを飛ばす。
それにつられて皆が俺を見る。
(((そういえば、こいつ、オーガの仲間だった。)))
なんか皆失礼なこと考えてないか?多分俺の予想では、間違ってもないが微妙に間違ってると思うが。
だが、一人だけ尊敬の念を抱く目線があった。レシアンだ。彼ははとてもキラキラと目を輝かせていた。
(そ、そんなにこれって凄いものなのか?確かにオールに「これはオーガに戦士として、戦友として認められた者に贈られる英雄の証」のようなことを言われた記憶があるが、オーガ種族ってのはどんだけ戦士好きなんだろうか?オレものこと言えた義理じゃないが…。)
その後、色々自己紹介を終わらしたことで打ち解け始めた俺達は、村の倉庫の中にあった酒を飲み明かしながら贅沢な一夜を過ごした。
やれやれ、出発は明日に伸びそうだな。
ちなみに、彼もやはりオーガの血がはっきりと流れていたようだ。
俺が飲み比べで負けるくらいかなりの酒豪だった。
どんだけ強いんだよ。
――――― ―――――
俺達が翌朝出発してから数時間後たった頃、風が強くなってきて、吹雪が俺達の視界を真っ白に染めるようになった。
―プニ―
「皆、大丈夫か?キツかったらウォッカを飲めよ?」
「平気ダ。オーガは発熱量が多いからな。冬には強いノダ。」
レシアンが自慢気に胸を張る。
「最初からお前は心配してないわ!!エルザの氷魔法で少しも凍らなかったからな。お前は腐ってもオーガだ。問題ない。問題は他の奴らだが…。」
「私とロイドは…平気よ。けど、シルフィが、辛そうよ。」
―プニ―
「そゔ言っで、エルダば心配そうにぃ私を見づめるぅのだっだ…。さぶィ゙!?」
「いつも通りっぽいな。」
「余裕ありそうね。」
「これなら平気そうだ。」
―プニ―
「ィ゙ャ゙、ヂャブイ。たぢげてグダサィ゙。」
そう言って震えるシルフィは中々辛そうだ。他の皆よりも沢山着込んでいた様子ほ彼女だったが、それでもかなり寒そうだった。
仕方がないか…彼女は猫の獣人だ。猫は元々砂漠という砂だけで出来た床熱の地域の生き物だ。その猫の獣人なのだから、寒さには弱い筈だ。
震えが強すぎて、彼女の周りだけ地面が揺れているように見えていて、少し滑稽に見えた。
俺が、心のなかで面白がっていると、俺の胸元から少女の声が聞こえた。
「よろしければ、シルフィさんも、こちらに来ますか?」
―プニ―
ロアの声だ。ロアは今俺の懐にべったりくっついて、赤子のように顔だけ出して吊るされていた。
その状態で、手をこまねく彼女の姿はさながら猫顔負けの招き猫の姿だった。
ちょっと待て!?俺の意思は?
「我慢でぎなィ゙。入るぅ゙。」
そう言って、俺の意思も関係ないとでも言わんばかりにシルフィが過去一番の素早さで俺の懐に入って来た。
(嘘だろ!?この俺が認識できないだと!?)
獣人の底力を知った瞬間だった。
―プニプニ―
「ふぅ…染みるぅ゙ぅ゙〜。…………温かい。それにしても硬い枕だ。二十五点。」
そう言って、ピッタリと俺の身体に身体をくっつけるシルフィは確かにかなり冷たかった。
「うぅ…かなり居心地が悪いんだが?」
「文句言わない。美少女2人がゼロ距離でくっついてるんだから文句言わない。ね?ロア。」
「シルフィさん。これ、身体に巻くようのお布団です。」
―プニプニ―
ロアは巧みなるスルースキルを使って、シルフィに布団を渡した。
「ありがとう。それにしても、本当に温かいな。この動くストーブは。一家に1台は欲しいぞ。」
そう言って、シルフィは布団を身体に巻きつけて安定させるために、もぞもぞと動き出した。
―プニプニ―
「オイ!!あまり動くなこっちはただでさえ、動きにくいってのに邪魔をするんじゃねえ!!」
―プニプニ―
「そんなこと言って、本当は鼻の下伸ばしてるくせに。ロア、この男。絶対私達の身体で興奮してるよ?」
「本当ですか?」
もう、お気づきだろう。さっきから聞こえるこの効果音は、画面のそこにいる紳士の君たちの想像通り、淑女の殆どが有している柔らかい"何か"の効果音だ。
何かって?そんな知らんぷりしなくてもいい。君の想像通りだ。
まあ、私個人としては、無くても有っても基本的に嬉しいがね。
わっはっは!!!))))グハッ!?
おっと、失礼した。
なぁ〜に、紳士の君達なら必ず分かってくれるだろう?
と言うか、ロア。そこはさっきのスルースキルを使ってくれ!!
「いや、その…」
「ちゃんと答えてください。」
「ハイ。その…少し、興奮しました。」
「そうですか…エッチ。」
(がはっ!?)
―プニプニ―
「へぇ〜、そうなんだ〜?僧侶の身の私に欲情するんだ〜?別に?ノリで僧侶やってるし。最悪やめてもいいけどね?…………エッチ。」
(グハッ!?)
―プニプニ―
ずるいぞ!!獣人の鼻の前では嘘がつけないからって、鼻がいいからって…そんな残酷な尋問しなくも…。
「オイ!!うらやまけしから…、ゴホンゴホン。隊列をあまり乱すなよ?これから道のりも厳しくなるしな。(チラリ)」
ダンはチラチラと睨みつけて来ているエルザを気にしながら俺たちに注意してきた。
「リーダー?そんなにエルザの肌が恋しんだ?お熱いことで。ヒューヒュー!!」
ロイドが二人をからかう。
「う、うるせえ!?」「うるさいわね!!!」
二人とも顔が赤かった。
「はて?お互い好いているの二何故?求愛しないんダ?分からン。オーガでハ愛する者のために決闘を起す。それくらい大事な者なのだろう?」
レシアンが純粋そうな顔で聞く。
「な、そんな、真正面に!?」
「そっそうよ?こういうものは少しずつ縮めるものでしょ?」
「はあ〜もう、付き合おうよ。こっちまで熱が飛び火してるから。」
胸元からシルフィの呆れ声が聞こえる。
俺もシルフィの悪ふざけにに便乗することにした。
「早く。付き合っちゃちまえよ。新婚夫婦さん?」
「こんのぉオーガ野郎!?お、お前こそ好きな奴はいねえのか?」
おっと、今度は俺に飛び火したようだ。
「それは…まあ、居る…多分。」
「「「多分?」」」
「意味が分からないんだが?」
ダンが意味が分からんとでもいうような声を出す。
「右に同じく。」「じゃあ僕は左で。」
武器組はだまらっしゃい!!
「それは…だ!?誰ですか?」
意外なことにいつもクールな様子を崩さない筈のロアが食いかかってきた。
そ、そんなに俺の恋事情が知りたいのか?
「いやぁ〜なぁ。その…今までの殆どの記憶が消えててな…あまり思い出せないんだ。済まねえな。答えられなくて。」
「そ、そうですか…。」
そう言って、ガックリと肩を下ろすロア。
「記憶が…記憶喪失なのかお前?」
そういえば、バードとかロアとかオルガ爺さん以外は誰にも言ってなかったな。
「そうだ。ここ最近意外の記憶が殆ど無い。今はその記憶を取り戻す旅の途中って訳だ。」
「なんか、気の毒だな…。」
「………何か困ったことがあったら私達に相談してよね。絶対に協力するから。」
「ありがとう。その時はよろしく頼むぜ。」
「所デ、ずっと気になってたんだガ…上に飛んでるデカい鳥はなんだ?」
「ん?」
確かに、レシアンが指差す方を見ると、デカい生き物が数匹、いや、数十匹もの大群が上空を飛んでいた。
それも、俺達の周りをゆっくりと旋回しながら段々と近づいているように見える。
「なぁ、ロイド。ここらへんで、ヤバい魔物でもいたか?」
ダンが、冬にも関わらず冷や汗をかきながらロイドに向き直る。
「あ〜、いたね。確か、『ニンギヌスの使い』だったね。確か…Bランクは下らない筈。冬の直前の産卵期になると、人里まで降りてきて、卵を産むための体力をつけるために人や家畜を所かまわず襲うかなり厄介な大きい双頭の鷲だよ。確か、ここらへんは彼らの縄張りだったけな?」
「「「「そんなに知ってるなら早く言え!!」」」」
「ピィー!!!」
焦る俺達を嘲笑うかのように巨体な翼を持った幾つもの『双頭の鷲』の群れが俺達に向って殺意を向けてきていた。
「あ、これ…結構ヤバい奴だ。」
「確かにやばいわね。」
「に、逃げるぞ!?」
俺のその声で、一斉に駆け出し始めた。
背後では翼が羽ばたく音が段々と近づいいるのが聞こえた。
次回は来月の9月の最初の土曜日0:00です。
お楽しみに!!




