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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
69/77

⑮「忍び寄る黒い影④」


「……いつか…思い出して…くれる…と良…いな。」


 ロアの声が僅かに聞こえた俺はその言葉を聞き取ること無く静かに目を開ける。


その時、彼女が何を言っていたのかは分からなかった。

とても大事な事を言っているような気がした。


「ふぁ〜あ…、よく寝れた。」


 俺は大きなあくびをしながらゆっくりとロアの膝枕から頭を持ち上げた。


「おはようごさいます。アンセムさん。」


俺は眠い目を擦りながら、ロアの姿を確認する。


ロアは『魔法具のすゝめ』という本を読んでいた。


かなりのページが進んでいる。 


 どうやら、俺が寝ている間に、相当の時間が経っていたようだ。


俺は、ロアの読んでいる本の表紙を覗き込む。

 真ん中に光る瓶と杖が重なるように描かれた表紙は、いかにも魔導書だということが分かる。


(ふむ…、あれで魔法瓶を作ったのだろうか?)

 

 魔法具を作るための技術はかなりハードルが高いと聞いたことがある。


 まず、魔法の仕組みを理解することから始まって、魔力と物体のバランス、果ては、その魔力を者に込めるために、魔力感知や独自の魔法陣の構築など、半分素人の俺には理解の及ばないような膨大な技能が必要な筈だ。


それを実践で活用できるレベルまで引き上げるなど、途方もない労力が必要となるのだ。


 しかしながら、魔力が操れるということは、魔術が扱えることでもある。


 それは、魔法を使えばいいということことに繋がるなので、効率的に見れば、あまり意味がない。


特に魔術師にとっては…。


何故、わざわざ魔法瓶を使うのか分からなかった。


彼女にも何か都合があるのだろうか?


 俺は、ロアが荷物を纏めるのを黙って手伝いながら、ロアに俺の見た夢の中の記憶に残っている部分を話した。


「そういえば、ロアって、敬語だったか?」


「……………。」


ロアはしばらく黙り込んだ後、口を開いた。


「思い出したんですか?」


「ああ…、出会いだけだったけどな。」


「……、そうですか。」


 期待のこもった透き通る目を一瞬の間、向けてきたロアだったが、俺の答えに軽く落胆の声を広い空間に溶け込ませた。


「ロアの体力はまだ残ってるのか?」


「私は、大丈夫です。早くここを脱出して、『黒き刃』の皆さんと合流しましょう?」


「分かった。」


 その後、食事を済ました俺達は焚き火の残り火から新しいたいまつを用意してから、火の後始末をして再び止めていた歩みを進め始めた。


広い空間が十字路にどこまでも続いていく。


(かなりの広さだ。あのバジリスクはこの地下洞窟全体を縄張りとしているのかもしれないな…。)


そう考えて見ると、いつあの化け物と相対するかも分からない恐怖に背中にゾクリと悪寒が走った。


(うぅ゙…。1秒でも早く、ここから立ち去りたいぜ。)


ロアは時々スクロールを開いては、道案内をしてくれている。


もう、スクロールのバーゲンセールだな…。


 しばらくして、大した魔物(バジリスクと比べて)と出会わなかった俺達は、かなり、地上から近い位置まで進んできていた。


うっすらと洞窟内に太陽の光が入ってきているのが分かる。


「ふう…もう少しだな。」


「はい。」


―バキッ―


急に後ろから物音が聞こえてきた俺達はゆっくりと、暗い洞窟の方を見る。


その暗闇で輝いていた黄色い目がこちらをのぞかせる。


バジリスクなのは、直感で分かった。


背筋がゾクリとした。


何の音だ? 


分からなかった。だからこそ、恐怖が増した。


「ロア、走るぞ!?」


「はい!」


後ろから、「シューシュー」と音が近づいてくる。


俺達は必死に走る。

 時々、俺は振り返って、バジリスクの毒牙を聖剣で受け流しながら走る。


バジリスクの攻撃を防ぐたびに、腕がビリビリと痺れるのが感じる。


全速力で走っていると、少しずつ光が強くなってきた。


もうすぐ、地上だ!! それまで、耐えろよ俺!!


 どんどん、光が強くなっていく。


そして、洞窟から出た俺達は白い光が包まれた。久しぶりの強い光に目を細める。


 段々と光に慣れてきて、周りが見えるようになった俺達の居場所が判明した。


 そして、やっと地上出れたと思っていた俺たちの前に待っていたのは、なんと絶壁だったのだ。


渓谷特有の茶色や黄色が混じった層が俺達を阻んでいいる。


クソッ!!コレではどうしようもないぞ?


ロープはあるが、バジリスクがロープを使って登る暇を与えてくれるとは思えない。


もし、隙をついて登ったとしても長時間バジリスクに背中を向けることになる。


頭が真っ白になりそうだった。


しかし、状況は俺をそうさせてはくれない。


 バジリスクは俺たちが袋小路にいる事を理解しているらしく、ゆっくりとした様子で、俺達の周りをその長い胴体で囲んで、大きな胴体を持ち上げてこちらを睨みつけている。


俺は静かに息を吐いて、深呼吸をする。


落ち付け。後ろにはロアがいる。


ロアの魔法瓶がどれほどバジリスクにダメージを入れられるか分からないが、援護してくれる筈だ。


俺はその隙を使って、護衛として立ち回ればいいのだ。


俺はゆっくりと深呼吸をして剣を構える。


「ロア。魔法瓶を使って、あいつの身体にダメージを入れてくれ。それに合わせて動く!!」


「ハイ!!」


俺達の周りを囲んでいるバジリスクの胴体から発せられる瘴気が段々と近づいてくる。


 数秒もたたぬ時間が過ぎた時、ロアが魔法瓶をその瘴気目掛けて投げつけた。


―パンッ―


ロアの投げつけた魔法瓶が、バジリスクの胴体に当たる。バジリスクは悲鳴を浴びせた。


俺はその瞬間、剣を地面に突きつけて、ロアを抱え上げる。


「キャ!?アンセムさん!?」


 ロアが驚いた目で俺を見つめるが、そんなことをお構い無しに、俺はロアを両腕に抱え込んで、回転させる勢いでそのまま崖上に向けて放り投げた。


「!?」


ロアの体は軽い。思ったより投げやすかったからか、余裕を持って確実に崖上まで届くことが出来た。


 ロアは地面と軽く激突したが、軽い打撲だけで済んだらしく、すぐに起き上がり、困惑しながら俺を見下ろした。


「アンセム!!」


珍しく、俺の名前をそのまま呼んでいる。


案外、結構そっちのほうが似合ってるじゃねえか…。


「ロア!逃げるんだ!!俺がこいつを引きつける間に!!」


「援護します。」


「ダメだ。ロアに注意が向く!!」


「しかし…」


「早く行け!!」


俺の怒鳴り声に、ビクリとしたロアはすぐに森へと駆け込んでいった。


(コレで良いんだ。二度と仲間を失ってたまるか。)


バジリスクはかなりの巨体だ。あの高さでも、余裕で乗り越えてしまうだろう。


俺単体では、あの崖はすぐに登れない。そしたら、ロアを守りきれない。


そしたら、完全に詰みだ。


 選び取れる最善の選択肢を完全に失ってしまう。それだけは防ぎたかった。


 痛みに悶えていたバジリスクが俺の方に注意を向け始めた。見た感じ、ロアのことはどうでもいいようだった。


今の俺には都合がいい。存分に狙いやがれ。


ロアが逃げ切れる範囲まで逃げられた時点で俺の勝ちだ。


それまでは、俺が倒れなければいい話だ。


どうやら、バジリスクはジワジワと俺を殺す気は失せたのか、牙を向けて俺に迫ってきた。


「掛かってこいよ!!蛇もどきが!!」


聖剣と毒牙がまともにぶつかって、火花を散らす。俺の腕が悲鳴を浴びるが、なんとか押し留める。


バジリスクの瘴気が俺を蝕んでいるのを感じる。物凄い苦痛だ。


「うおおおおおおお!!」


 バジリスクの突進の勢いが死んだ所で、俺はバジリスクの頭の上に飛んで、バジリスクの目と目の間に聖剣をチカラ一杯突き刺そうとした。


―ガキン―


「なっ!?」


(歯が通らない。なんて、硬さなんだ。)


突然、身体に強烈な衝撃が走った。


唖然としている瞬間を狙ってか、バジリスクが尾を使って、俺を弾き飛ばしようだ。


「グッ!!」


弾き飛ばされた俺の体は崖にぶつかって、大きな音を渓谷に響かせた。


―ドカーン―


土煙と共に瓦礫が崩れ落ちていき、地面と衝突した岩石が轟音を立てる。


 俺は全身に痺れと痛みを感じながらもゆっくりと立ち上がる。


頭から血が垂れているのを感じる。今の衝撃で血管が切れたのだろう。


間髪入れずにバジリスクが再び突貫を繰り出してきた。俺は、それを素早く避けるが、頭が揺れていたのか毒牙が腕に掠らせてしまった。


「あああああああ!」


腕に激痛が走って悲鳴を上げる。リリアを守っていた時に付けられた毒なんて比ではない程の猛毒だ。


まだ、全身の感覚が麻痺していてくれて良かった。

シラフだったならば、この強烈な痛みの耐えられず、ショック死するところだった。


俺はまだ力が入る片腕だけを持ち上げて聖剣を持ち上げる。

今でもバジリスクはこちらを攻撃しようとしている。


耐えろ俺。少しでも、ロアとの距離を離すんだ。


だか、身体が、言うことを聞かない。


バジリスクがまた突貫を仕掛けてくる。


(もうダメなのか?)


諦めかけようとしていたその時、バジリスクの頭に魔法瓶が当たって爆発する。


恐ろしい悲鳴を上げたバジリスクが投げられた方向を睨みつける。


バジリスクに見習って投げられた方向を見ると、逃げたはずのロアが崖上で魔法瓶を持って投げる準備をしていた。


「な、何故…ロアが?」


「貴方を…見捨てることなんて、出来ません!また、私たちを置いて、どこかに置いていくんですか!?……もう、ひとりにしないで。アンセム!!」


心からの叫びだった。


堪忍袋が切れたのか、バジリスクはロアに向って一目散に突貫していく。


「ま、待ってくれ!?や、やめろー!!!!!!」


身体が動かないのがコレほど残酷だとは思わなかった。只々我武者羅に駆け出すが、バジリスクの方が圧倒的に早い。


また…俺は目の前で大事な存在を失うのか?


アオのように…。


 永遠に思える絶望の時間が過ぎようとしていた時、右手に持っていた聖剣から光が輝いた。それと同時に、身体を蝕んでいた猛毒が浄化されていく。


(なっ、なんだ!?)


その声と、同時に憎たらしい小娘の声が脳内に響き渡った。


「あらゆる悪を滅する正義の権化聖剣ちゃんご登場ってね。なんちゃって。テヘッ………ギャア!?、アンタ、どうしたの?、そんなケガして?」


 そう頭の中で叫ぶ声の主は黒い聖騎士が持っていた聖剣だった。説明はやかましいこの娘のことを考えると虫唾が走るので省くことにする。


(な、何故急にっ!?)


 バジリスクは急に輝く聖剣を警戒するように、ロアに向って突貫していた首の向きを変えて、こちらを睨む。


「何故って…それくらい、分かりなさいよ!!

 私が前のご主人に分かれの挨拶をするためにあの世まで遠出してたのよ!!あの神剣に慰められながら一緒にね。

 貴方が死ぬ前に戻ってきただけでも感謝して欲しいくらいだわ。全く!!」


キーンとした声が頭に響き渡る。


(うゔ…やめてくれ。ただでさえ頭痛がしている時に…てっ!?言うことは…)


「そうよ!!私たちとの再会って訳。喜びなさいよ?というかあのおしゃべり剣はどこに言ったのかしら?見当たらないわね?」


同時に、崖の上から何かが輝き、太陽の反射光が俺達を照らす。


上を見上げると、まるで久しぶりかのように嬉しそうな様子の俺の相棒が顔を覗かせていた。


「お〜い。相棒待たせたな〜!!!」


そのまま、バードが俺の目の前に突っ込んでくる。


そのまま地面に突き刺さる。


「アハハハ。この言葉一度は使ってみたかったんだ!!、さあ、この僕が来たんだ。これで僕たちは誰にも負けることはない!!存分に使いたまえ!!!アッハッハッハ!」


相変わらずやかましい奴だ。だが、この状況下に置いて、頼り甲斐のある戦友であるのは間違えない。


「遅かったぜ。待ちくたびれちまったよ。」


「この僕が来たんだ。これで僕たちは誰にも負けることはない!! 存分に使いたまえ!!!

アッハッハッハ!!!」


思わず文句や罵声を浴びせようとしたが、自然とこんな言葉しか出てこなかった。


「お帰り。相棒。」


「おう!!」


力がみなぎってきたその左腕で、勢いよくバードを引き抜く。


そして、躊躇しているバジリスクに向って、二刀流の構えを取った。


「さあ来い!毒蛇野郎!!」


対して、バジリスクは目を見開いて固まっていた。


そして、聞くはずもない。声を出した。


「お主…あの聖騎士が持っていた聖剣のセレーヌか?」


「へ!?」


 急に話しかけられたセレーヌまたは聖剣は裏声を出してしまう。


(うん?どういう…)


急な展開に、俺が呆然としている今も、目の前のバジリスクとセレーヌは話を続ける。


「まさか…忘れたとは言うまいな?」


「あっ、あ〜!!そうだったわね〜?あの時の〜?」


絶対に覚えていなかっただろ。この聖剣。


「今思えば、今まで唯一わしに傷をつけることが出来た人族だった。実に、懐かしい……今は?」


もしかしてだが、俺が黒騎士との戦いで見たあの記憶の中にいたあの聖騎士か?


「……死んだわ。それも数万年前に…」


「……そうか…。もうそんなに時が進んでいたのか…。」


 憶測だが、永久の時を生きているだろうこいつにとって、人の生など一瞬で通り過ぎて行ってしまうものなのだろう。


「今回は、セレーヌに免じて、我の縄張りに勝手に侵入したことは許そう。勇気ある者よ。だが、三度目は許さん。それを肝に命じておくが良い。」


そう言って、バジリスクはゆっくりと振り向いて暗い洞窟内に入っていった。


当たりが静かになる。今では渓谷の間を通る強い風の音が、聞こえるのみだった。


(三度目?どういうことだ?)


バジリスクのその謎の言葉に対して、思考しようとしたが、残念ながら、することは出来なかった。


何故ならば、俺はこの後、すぐに気を失うからだ。


「アンセ…ム…さん!!」


ゆらゆらとアンの声が聞こえる。


「ちょっと!?なんか…この男、気を失いそうなんですけど〜!!どうにかしなさいよ!!あんたこの男の愛剣なんてしょう?」


「ちょっと!!それはおかしいでしょ!!回復はセレーヌ、君の十八番でしょうが!?」


(ハハハッ、相変わらずうるせえな…。)


 何故かいる「黒き刃」の面々が崖を下りて俺に駆け寄ってくる。


(フンッ随分とまあ…頭がおかしくなったもんだな。なんで、離れ離れになった「黒き刃」が今ここにいるんだ?幻覚だよな?)


 目は閉じてあるのに太陽の光が瞼の間から入ってきているのが分かる。たが、段々とその光は弱くなっていく。


「おい!オーガ野郎!?気を失うんじゃねえよ!!」


「どうする?今のうちだよ?」


「ちょっと!?私に差し出したナイフの柄は何よ?寝首をかくとかそんなことしないわよ。絶対に私を悪者にしようって簡単よね?」


「そう。正解。」


「むっきぃ〜〜〜!!」


「冗談は言ってられない!!何かしらの強力な毒が彼の身体に入り込んでる。早く治療しないと手遅れになる!!」


 幻覚の声達が俺の前で騒ぎ立てている中、俺は気を失った。


―――――                ―――――


「アンセム!!アンセム!!起きろ!俺との朝の稽古、寝坊して忘れたとは言わせないからな?」


オリビアが俺の頬をぶっ叩きながら俺を起こそうと奮闘している。


 綺麗な青髪揺らされながら朝日に照らされて、光を反射させていて、まさに太陽の光を反射する綺麗な小川のような鮮やかさを醸し出していた。


 頬をぶっ叩かれるも中々起きない俺は、眠気眼な目で答えた。


「オリビア…済まねえ……随分と…寝坊し…遅れ…ちまった……。」


「オイオイ。謝るのは良いけどよ…って!?全然起きてねえ!と言うか、なんの夢を見たんだ?こいつは?」


俺は、寝返りを打つついでに、オリビアに向けて()()()()拳骨を無意識だったがクリーンヒットさせた。


「ッ~~!?痛ってぇな、コノヤロウ!!」


オリビアは床を転がり悶絶し始めた。


「57年…も過ぎ…ちまっ…て…済ま…ねえ…。」


「クソッ。今の俺には、寝ているコイツにも勝てねぇのか!!?」


絶望顔をするオリビアだが、急にそんなことはないと自分に言い聞かせて、自身満々な顔に切り替えてから真剣な顔に変化させる。


朝から百面相をするとはかなり元気な娘である。


 それもそうである。寝ている時意外の彼女はずっと嵐を思わせるほど活発で、それが原因でついた二つ名は『暴風雨(ハリケーン)』である。


「大丈夫だ。俺はまだ…一発食らっただけだ…。そう。俺はこの寝坊助よりも断然強い!」


 しばらくの間、俺の拳が当たった箇所を抑えて痛みを分散させながら(実際は分散できていない)オリビアは、苦手な科目である思考を巡らしだした。


考えはいけない筈の彼女の脳のキャパを全稼働させてアイデアを出そうとしているようだ。


(やめよう。君は考え事をしてはいけない。どうせ、ろくなことしか考えていないんだから!! By作者の叫び声)


必死に訴えかける作者の心からの声など、この頭の中が筋肉で出来たような脳筋女には届くはずもなく、


ひらめく音と共に、ある恐ろしいアイデアを思いつく。


「う〜ん…それにしても、中々起きねえな? この寝坊助は……良し、あの倉庫で見かけた金属の棒で仕返せばいいだろ!!そしたら起きるしな?」


 そう言って、オリビアは倉庫にある"例の物"を求めて風のようなスピードで音もなく部屋から飛び出ていった。


(違うそうじゃないだろ!! by作者の叫び声)


 少しの時間が経った後、彼女は銅鐸を持ち出してきていた。


 本来。銅鐸とは、占いや儀式に使用するものだ。


 何故彼女がそんなモノをどこから持ち出したかなどは誰も知らないが、一つ言えることは、彼女は明らかに使い方を間違おうとしていることだった。


(まっ!?まさか…そんな…や、辞めろ〜〜!!by作者の叫び声)


作者の届くはずもない声が響き渡る中、そのままアンセムの頭に向って振り上げた。


「起きろ〜!!この寝坊助。エイッ!!」


そう言って、思いっきり振り下げる。


「ウォッ!?」


度重なる戦の中の修羅を味わっていたからだろうか。


 アンセムは異常なる生存本能を働かして目をこじ開けて上半身を持ち上げ、スライドさせる。


間一髪だった。


 もう少しで、彼女の放った金属の金槌はこの男の頭を襲うところだったが、スレスレで避けられたその銅鐸は柔らかい俵に当たってカサカサという音を発するだけで済んだ。


もし、当たったとしてもこの男なら軽く血を出すだけに留めそうに思えるのは不思議ではない。


 何故なら、この男は、頭突きで兜を破壊したことがあるからだ。


心配は無さそうだか、身体は化け物よりの彼の心はやはり人間である。食らっても平気な攻撃だとしても怖いものは怖いのだ。


「オイッ!?オリビア。俺を殺す気か!?」


「油断大敵なのが悪い。」


そう、やれやれと言葉を零す彼女。


(誰が…目覚ましに鉄の塊を頭に振りかざす奴がいるんだよ!!)


 ドクドクと胸が高まる起床を体験したアンセムなのだった…。


もう少し、アンセムの夢の回想は続きます。


次回は再来週の土曜日0:00です。


お楽しみに!!

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