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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
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⑬「忍び寄る黒い影②」


 洞窟内に緊張感が満ちていく。

 エルフとは違う神聖とは言い切れない、どちらかといえば、魔力に満ちた空間が充満している。


「何故、ダークエルフがここに!?」


 エルザが真ん中に立っているリーダーらしきエルフに問いかける。


「黙れ。劣等種族。お前に発言を許した覚えはないが?」


 対して、真ん中のダークエルフはさも当然かの様に罵倒で返した。


 そのエルフに罵倒されたエルザは、今にも食ってかかろうとする。


「何よー!?喧嘩売るつも…モガモガ!?」


横目で確認すると、エルザはシルフィに口を塞がれていた。


「エルザ、今は静かに。クールじゃない。」


 会ってから初めて、シルフィの顔が真剣な顔になった。静かに真ん中のダークエルフを睨みつけている。


「ほう?良く礼儀をわきまえているようだな。獣はそのまま静かにお座りしてろ。」


「よし、エルザ。ゴー!!貴方なら行ける。」


シルフィがダークエルフに向けて指差した。


「えっ!?私がやるの?」


そっ、そうでもないか……。


「大丈夫。ちゃんと、お葬式には必ず行くから。」


「そして死ぬ前提!?」


その時、今まで黙っていたロアが皆の前に出てきた。


「交渉を要求します。親愛なる森の民達。」


ロアは、静かに頭を軽く下げて言葉を待っている。


少しして、真ん中のダークエルフが口を開いた。


「良いだろう。お前のその礼儀に対して此度の交渉の許可を出そう。」


 ロイドが止めようとするが、ダークエルフの一人に矢で牽制されて足を止めた。


「貴方の目的は何ですか。カイン様?」


 カインと言われたそのダークエルフの男性は、ロアに合わせて頭を下げた後一歩前に出た。


 確か、エルフ族は交渉を求められたら必ず応じるという風習が合った筈…。


なら、交渉次第なら一時的に戦闘は回避できそうだ。


「ほう、どこかで見たことがあると思えば…あのクソドワーフのジジイの所にいたガギか…。相変わらずムカつく姿だ。まあいい。私達の目的と言ったかな?」


「はい。そうです。それと私は大人です。」


「私からしたらお前はガキだ。私達はそこの鬼人に用がある。」


大人?子供にしか見えないが?


「それで…どのような要件をお求めになられますか?」


「そいつの命を寄越せ。」


カインは黙って俺を指さした。


オイオイッ!?何で俺なんだよ?というか、俺アイツと面識あったのか?ドワーフからエルフまで、昔の俺は随分顔が広かったんだな…って、感心してる場合じゃねえ!!俺、こいつに何をしたんだ?


 このダークエルフ、随分と俺をお気に召しているようだ。それにしてもすげぇ目つきで俺を睨んでやがる。どれほど恨まれることをしたらこんなに殺気を向けられることになるんだ?


「そ、それは出来ません。彼は私の旅の護衛です!」


 必死に俺を庇うロア。なぜだか、彼女の表情には明らかな焦りが見えた。


「ほう…。お前。鬼人に…なるほど…。これは面白い。」


 焦るロアに対してカインは、俺とロアを交互に覗き見て、何かを察したのか暗闇でも分かる素敵な笑みを浮かべた。ちなみに邪悪な方だ。


「手段を変えよう。今回の交渉は、中々礼儀のあるそのガキ一人の命で許してやろう。」


そう言いながら、カインはロアに向かって、手をかざして、何かしらの魔法?を唱えだした。


ロアが危ない!!


「ロアっ!」


ロアの周りで突風が起こり始める。


 周りで石が飛び回り、俺の身体の節々を痛めつけるが、俺は気にせずに一直線にロアの元に駆け寄るった。


 途中で、部下のダークエルフが放った矢が、俺の歩みを妨害してきたが、バスターソードで防ぐ余裕はなかった。

 いつこの魔法が発動しても不思議ではない。だから俺はその矢を肩で受け止めることにする。


―ザク―


「ッ、ロア!」


嫌な音と共に、肩にザクリと痛みが走る。

 俺はその痛みを無視して、ロアを自分の胸に引き寄せた。


何とか間に合ったが、俺がロアを外に突き放す前に、魔法が発動してしまった。


 そのまま俺とロアは抵抗も何も出来ずに、視界を回転させながら意識も身体もあっという間に何処かに飛ばされてしまった。



―――――                ―――――


「アンセムさん……アンセムさん…」


―ユサユサ―


(な、なんだ!?)


「起きてください。」


―ユサユサ―


(そういえば、さっきまで何が起きてたんだっけな?)


―ユサユサ―


「アンセムさん。」


(確か…そう、俺とロアはあのカインとか言うダークエルフに魔法をかけられ…)


―ユサユサ―


「はっ!?」


 俺は急いで目を見開き飛び起きる。それと同時に俺の視界の全てを覆っていたのが、ロアの顔ということに気が付いた。

 そのままロアと俺の顔が接近していく。ハイライトの無い、真っ黒な目が驚きで大きく見開いていた。


あれ、これはぶつかるんじゃねえか?やばくね?


 俺の予想通りに、お互いのおでこ同士が勢いよくぶつかり合って、鈍い音を立てた。


―ゴチンッ―


「「痛ッ~~~!?!!」」


うぅ~……、目がチカチカする。なんて頭の硬さだ…。


(ほ、本当に人間の頭なのか?)


この岩よりも硬い頭、まるでドワーフのような硬さだった。


 ドワーフと酒の宴で、喧嘩をしたことがある俺が言うんだ。人間の頭の硬さの比ではなかった。


 チカチカが治ってきた所で、隣を見ると、ロアもまぶたを腫れさせて、涙目になりながら俺と衝突したおでこの部分を手で確認している。そのおでこは軽く赤く腫れていた。


 まあ、あんなに勢いよくぶつかり合ったんだ。赤く腫れてなきゃおかしい。


「す、済まねえ。大丈夫か…?」


ロアは目に溜まった涙を拭き取りながら答えた。


「大丈夫です。」


「そうか。そういえば、俺のことを揺さぶって起こしてくれていたのは、ロアか?」


―コクッ―


ロアは涙目を布で拭き取りながらただ静かに頷いた。


ごめんて。


「起こしてくれてありがとな。」


ロアは俺の感謝の言葉に応じながったが、変わりにポーションを渡してきた。


「肩のケガ、早く直しましょう。」


そ、そうだった。俺はロアを庇おうと駆け寄った時に肩に矢を受けてしまったんだった。


 すぐさま左肩を、確認すると応急処置だが肩に刺さっていた矢が抜けて布が被せられていた。

 それに、治療のためか、上半身が脱がされてシート代わりになっていた。

 周りには革鎧が転がっていて、まだ火を灯されたばっかなのか、灰があまり積っていない焚き火に照らされて軽く銀色に光っている。


 この様子だと、ロアは俺の介抱に付きっきりだったんだようだ。


そういえば、バスターソードはどこ言ったんだ?


俺は、もう一度確認するために周りを見渡す。

 やはり無い。どうやら、アンを庇う時に落としてしまったようだ。

 今俺が持っている武器は、予備のダガーナイフ二本と、マジックバックに入っている聖剣だ。まあ…現状武器が全くないことはないので良かったが、「黒き刃」と逸れてしまったことが痛い。


俺の考えを遮るように静かにロアが話しかけてきた。


「私、一人では貴方を持ち上げられません。貴方に起きて貰って、手伝ってもらうしかなかったんです。」


 だから、俺を起こそうとしていたのか…。そして、その時に俺がいきなり飛び起きて、こうなったわけだな。


「結構、俺…寝てたか?」


「いいえ、数時間ちょっとです。」


「そうか…、済まねえな。俺の生々しい傷跡を見せちまって…。」


 俺の身体にはいくつもの醜い傷が散りばめられている。それも、刺し傷だ。

 まあ、俺としては男の勲章なので、気にしていないが非戦闘員のロアが見るには生々し過ぎる。


 しかし、俺の予想に反して、ロアはそこまで気にしていないようだった。


 ただ、「大丈夫です。見慣れています。」と言われただけだった。


う~ん…俺とロアはどういう関係だったんだ?


 思い出そうとしても代わりに頭痛が返ってくるだけで、上手く思い出せない。ムズムズするぜ……


「そういえば、ここはどこなんだ?」


 俺は、回復ポーションをかけ終わった俺の肩に包帯を巻き付けているロアに話しかけた。


「分かりません。ただ、元の場所とは別の場所のようです。空間自体は先程の場所とはつながっているみたいです。」


「何故、それを?」


「空間探知のスクロールを使いました。」


「そ、そんな高価なモノを…!?」


 スクロールとは、魔法を込められた術式が記されているアイテムだ。魔術を極めた魔法使いしか作ることができない。

 それ故市場に中々出回ることはないので買うとしたならオークションで高値で買うことができるくらいだ。1枚500万ジーニはくだらない。

 これは、Bランクの魔物の素材四、五体分の値段になる。かなり貴重な代物だ。


なのに、この少女はキョトンとした顔をして自覚を持っていなかった。


「えっと…師匠から、遭難した時に使えって渡されたものです。」


 爺さん…そんな高価な物そんなお小遣い感覚で渡すとは…あの爺さん何者なんだ?


というか、価値感の教育はしとけよ!!


「まあいいさ。有効活用したってことだからな。それよりも、早く「黒き刃」の奴らと合流しないとな…」


突然、大きな気配が現れた。それもすぐ近くに。

 まるで、今まで存在を消していたかのように突然気配を現した。


その体は長くうねっているが、その太さは大木よりも太い。

 頭部には蛇の頭がくっついているが、一つ異変があるとするならば、蛇には無い沢山の目が顔についているということだった。


その姿は、伝聞で聞いたことがある蛇の化け物、


まさに『バジリスク』の姿そのままだった…。


―――――                ―――――


「オイッ!?褐色エルフ!!あの2人を何処にやった?」


 ダンが黒い槍の矛先を向けて指差すようにながら、精一杯の怒鳴り声を上げる。


対して、カイルはくだらないものを見るような目で嘲笑の笑みを浮かばせながら答えた。


「どこって?ああ、可愛いバジリスクの巣までお送りしたのさ。今頃、鬼人とあのガキは仲良く蛇の胃の中だろう。」


パーティーの皆の顔が青ざめる。

流石のシルフィでも怖いものは怖い。


バジリスクとは、かなりやばい魔物だ。Bランクの魔物なんて比じゃない。あのS ランクは余裕で超えるあの化け物だ。


 いくら、あのオーガのような冒険者?がAランクの資格を持ったとしても、あの少女を庇いながら戦うことは不可能だろう。


 「く、外道が…」


ダンがゴミを見るような目つきでカイルを見る。


「外道?、それは我々にとって褒め言葉のようなものだ。我々は自ら進んで世界の理から外れようているからな。まあ、そんなこと下等生物の人間ごときに教えたとしても意味がない。

 それに、やることも山積みだからな。お前らに困っている暇はない。」


 暗い洞窟の中、たいまつの光に照らされた目がギラギラと輝いている。神秘的な容姿と相まって、異常な不気味さを醸し出していた。


パーティーメンバーの殆どが震え上がっている。

勿論私も。だが、流石うちのリーダー。こういうとき、いつもダンは冷静だった。


「俺達が、お前を逃がすとでも?」


「やれるものならやってみろ」


カイルが挑発するように言ったその瞬間、目の前にいたダークエルフの集団は影が消えるように音もなく忽然と姿を消した。


「何処に言ったんだ?」


比較的暗視の得意なロイドが急いで周りを確認するが、残念ながらダークエルフらしき集団の様子は見当たらなかった。

 まるで、今までここにいなかったのようだった。


「と、取り敢えず逸れた2人を探しましょう?」


エルザが空気を変えるためにパンと手を叩く。


「けど、匂いも途切れて嗅ぎ取れない。どうやって探すの?」


「し、シルフィが始めてまともなことを言った〜!?」


エルザが驚愕の声を漏らす。


なんだその顔は。私だって緊急事態のときは真面目な話はする。


よし、後でエルザの枕の裏に虫を仕込んでおこう。

きっと、エルザは泣いて喜ぶ筈だ。


「冗談を言い合っている暇はないぞ?さっさとエルザは探知魔法を再開させろ。途切れてるぞ?この間に魔物の襲来があったらどうするんだ?たちまち俺達は全滅するぞ?」


ダンが叱るように言うと、指摘されたエルザが慌てて探知魔法をするために目を瞑った。


「ロイドとシルフィはお得意の暗視と嗅覚で周囲を探索、俺とエルサの周りを周回しながら10分毎に俺達のパーティーに合流して、状況報告をしろ。」


やっぱりこのリーダーについて行って正解だった。

 緊迫した状況で、冷静に判断ができるし、人族の癖に戦闘力は獣人の私とまあまあ釣り合っている。


 初対面の人に喧嘩を仕掛ける癖はあるが、私の鼻は腐っていないようで安心した。


「分かった。」「オッケー。」


その時、急に私達の前に影が立ち上がった。


(((!?)))


全員が急いで展開して武器を構える。けど、魔物やダークエルフではなかった。


とても摩訶不思議な光景があった。


 なんと、あのオーガのような匂いをプンプン匂わせていたオーガ人間が持っていた大剣が洞窟の中、宙を浮いていたのだ。


地面に落ちていた二つのたいまつにの光に反射して、神々しい光を発している。


 確か数日前、この大剣は魔剣とかなんとか噂で聞いたが、本当だったらしい。


その大剣は特定の光を発しながら洞窟の暗闇へと進んでいった。


「こ、これは?主人のいる方向に向かって…進んで言っている?」


ロイドが不思議なものをみたかのような困惑した声を出した。


 皆も困惑している。


 なんせ、魔剣が効力を発揮しているのを見るのは始めてだからだ。

こんなドタバタがあった後なんだ当たり前である。


 だとしたらチャンスだ。オーガ人間は依頼主の少々と一緒にいる筈だ。


絶対にコレを逃す手はない。


「付いていきましょう。」


「だな…、よし行くぞ!」


「黒き刃」はその不思議な剣に導かれて、暗い洞窟の中を突き進んでいった…。



次回は、来週の土曜日0:00です。


お楽しみに!!

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