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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
66/77

⑫「忍び寄る黒い影①」

皆、忘れてるかもしれないので、ランクの基準をもう一度貼っておきますね。


SSSランク(世界全体にとっての脅威)

SSランク(複数の国が対応しなければいけない脅威)

Sランク (国が総力を上げてギリギリ倒せるレベル)

Aランク (軍団、師団単位で倒せる範囲)

Bランク (兵団規模でギリギリ倒せる範囲)

Cランク (旅団規模でギリギリ討伐出来るまでの範囲)

Dランク (複数人の平均的な強さの兵士が対応できるまでの範囲)

Eランク (平均的な強さの兵士が単独で対応出来る範囲)

Fランク(兵士の訓練を受けていない一般人でも対応出来る範囲)

Gランク(脅威ほとんどなし)


俺とロアは、急いで全員を叩き起こした。


「プリンが一つ。チョコケーキが2つ…ぐぅ~……」


おっと?


まだ一人で完全に目が覚めてないやつがいたが…


エルザはロイドの剣の柄で突かれて、ガバっと起き上がった。


それと同時にハキハキとした様子でダンが全員に命令を出していく。


「よし、全員起きたな?やつらとのまだ距離はあるが、かなりの数だ。だいたい三十体以上はいるだろう。1人あたり、5体以上になる。エルサ。探知魔法。」


「分かった。」


エルザは再び呪文を唱える。


「ボスは…複数。気配が大きいゴブリンと2体と、魔力が多いゴブリンが1体混じってる。他にといるかもしれない。」


皆の顔がかなり真剣な表情に変わる。


気配が大きい2体のゴブリンは多分ホブゴブリンだ。

 人間の半分くらいの大きさのだったゴブリンが、人間とほぼ同じ体格まで進化したゴブリンだ。

 その力はとても強く。金属をへこませるくらいには怪力だ。


 魔力が多いゴブリンはマジックゴブリンだ。

 こいつは身体は普通のゴブリンと同じだが、賢く、人間とほぼ同じ知能を持ち、魔法や罠を仕掛けてくるかなり厄介なゴブリンだ。


水路にあった罠を仕掛けていたのは自分たちの縄張りに入った侵入者を排除するためだったらしいな。


だから、異様に初歩的なだが、マジックトラップが所々に配置されていたのか。


 一般的にゴブリンの群れは、規模によるが、だいたいE〜Dレベルにあたる。

しかし、ボスが混じっているとなると、話は別だ。

 それも、ボスが複数体混じっているとなると、かなり危険な集団だ。一つの村なら簡単に滅ぼしてしまうだろう。


 ランクはcランクの手前まで一気に引き上がる。まだCランクパーティーになった「黒き刃」にとって十分な脅威と言えるだろう。


 もし、少々狭い空間で遭遇したならば、大剣持ちの俺はあまり大きな動きは出来なかった。

 予備のタガーを振り回すか、初期魔法で援護をするしかないだろう。


 襲撃された場所が、広い空間でよかった。これならば、ロア一人なら守ることが出来そうだ。


だんだんと足音が大きくなってくる。


 ロイドとダンが前に出て、シルフィとエルザが後衛の位置につく。俺は、ロアの護衛なので、今回は後衛だ。


「エルザ。出会い頭にお得意の氷魔法で、アイツラの出鼻を砕いてやれ!!」


「分かったわ。」


「シルフィは、バフを全員に。」


「イエスサー。」


シルフィは全員に向けて、ステッキを向けて次々とバフをかけていく。


「我に力の加護があらんことをパワーアップ(筋力上昇)


「我々を守り給えプロテクション(防御魔法)


「我々を魔から守り給えマジックプロテクション」


「オーガ野郎は、依頼者の護衛及び、漏れが出た場合の対処を。シルフィもその時はエルザを守りながらオーガ野郎を手伝え。俺とロイドは前衛で暴れるぞ。1体も捕り逃すな!!」


緊迫した状況の中、ダンは冷静に仲間に指示を出して、時には鼓舞を忘れない。


 なるほど、このパーティーがCランクに上がることが出来た訳だ。

 こういうリーダーこそ、チームには必要だ。


リーダーの掛け声に応えるように、「黒き刃」は声を張り上げた。


「はいっ!!」「分かった。」「オーケーリーダー。」


しばらくすると、大群が通るとき特有の地響きが床を伝って聞こえてくる。


洞窟内の空気が張り詰めるのを感じる。


「ギィギャア!!」

「ギャギャッ!!」


ついに現れた。


先頭のゴブリン集団がこちらを確認すると、一目散にこっち目掛けて突っ込んでくる。


先頭にホブゴブリン。一気に前衛を突破して、俺達を轢き殺そうっていう戦法らしい。


「させねえよ!!」


それを感情とったダンが、前に駆け出す。


「ガァーー!!ガッ!?」


 ダンが素早い一突きを食らわしてホブゴブリンの頭を消し飛ばした。

 ホブゴブリンの頭が吹っ飛ぶ。


その間にも他のゴブリンたちが距離を詰めてくる。

 先頭のリーダーがやられたのに、お構い無しのようだった。


 それを待ち受けていたかのように、呪文を唱えていたエルザが魔法を発動した。


「[氷の投擲(アイスジャベリンズ)]!」


その魔法と共に、三、四個の、鋭い氷の槍がゴブリンの群れを襲った。


「グギャァ!!」


 一気に五、六体は倒した。怯んだゴブリン達の何体かの首を、ロイドが通り抜けざまに一太刀で跳ねていく。

 だが、油断は出来ない。まだ二十体もホブゴブリンとゴブリンマジックが残っているのだ。


「ガギィ!!」


 群れの奥から姿を現したゴブリンマジックがお返しだと言わんばかりに、複数の風の刃をエルサ目掛けて飛ばしてきた。

 かなりの速度だ。素早く、準備していたシルフィがスロットを構える。


「我らを守り給え。[聖なる障壁(ホーリーバリア)]」


光の壁に弾かれた風の刃は、天井に当たり分散した。


 風の刃があたった場所はきれいに切られた跡が出来ている。


 もう一体のホブゴブリンと共に残ったゴブリンが一斉に襲ってきた。


「させるか!!」


 ダンが叫びながらホブゴブリンと対峙するが、今回は、ホブゴブリンも油断していないのか、ダンを引き留めるかのように長く撃ち合っている。


「クソッ!?」


ダンが足止めされてしまったせいで、残りの二十体のゴブリン達が展開しながら襲いかかってきた。


マジックゴブリンめ…してやられた。


「黒き刃」の壁役かつ、リーダーのダンが足止めされてしまったことで「黒き刃」の戦力を削られた。今、パーティー内には指示役が存在しない。


俺が指示役に変わっても良いが、俺はこのパーティーにとって余所者だ。


すぐさま俺の指示に従えるとは思えない。


これは、相手側の流れになってきたな。


「ギャギャ!」


ここぞとばかりに、ゴブリン達が迫ってくる。

 ロイドがダンが孤立しないようにカバーに入っているが、今度はこちらの前衛がいなくなってしまった。


 広い空間が仇となってしまった。少人数の防衛には不向きだったのだ。


エルザは次のゴブリンマジックの攻撃に備えなければ行けないので他のゴブリンに構ってはいられない。


シルフィに関しては、魔力切れなのかタガーを2本持ってエルサを守る構えだ。


どうするか?シルフィ一人で俺達をカバー出来るとは思えない。


やはり、俺が出なければいけない流れか?


その時、ロアがマジックバックから瓶を取り出して、ゴブリンの群れに投げた。


―パンッ―


その瓶が地面に当たって砕けた瞬間、耳がすんざく音と共に爆発して五体のゴブリンを倒した。


「昨日、夜通し作っていた魔法瓶です。あと十数本あります。」


だから、あんなに疲れている様子だったのか。

まあ…そこはいい。、流石、ロアだ。ただ守られるだけの存在ではない。


「私は、大丈夫です。早く援護に回って上げてください。」


俺はその声に振り向くと、ロアと目が合った。


「大丈夫なんだな?」


「ハイ。」


俺はその声と共にバスターソードを抜きながら群れのに突っ込んでいった。


「どけぇ!!エルザ、シルフィ、!!」


「キャア!?」

「うわっ!!」


ゴブリンの群れの前に来た俺はバスターソードを横に回転させながら突っ込み、一瞬で周りにいたゴブリンの群れを薙ぎ払った。


「ギャア!?」


ゴブリン達の悲鳴が響く。


一瞬、ぼぉーとしてしまっていた三人がゴブリンの生き残りのトドメを刺していく。


残りは、数体のゴブリンの取り巻きと、ゴブリンマジックとホブゴブリンだけだ。


「ギィギャア!!ギャア!!」


 一瞬でゴブリンの群れを倒した俺に恐れをなしたのか、ゴブリンマジックは援軍を呼んだ。


援軍に現れたのは、一体のホブゴブリンを先頭に十体のゴブリンの群れだ。


気配を消して、隠れさせていたのか?


全く、油断も隙もねえな!!


ゴブリンの援軍が間に入っている間に、ゴブリンマジックが魔法を唱え始めた。


俺は、それを合図にエルザに向かって声を張り上げる。


「今だ!!エルザ!!」


「風の精霊よ。我らに力を与え給え。[風の刃(ウインドスラッシュ)]」


「が、ガア…。」


―バタンッ―


 エルザによって放たれた魔法に、後れを取ったマジックゴブリンの身体が血を噴き出して上下に分かれ、倒れた。

 

 ちょうど、ホブゴブリンに足止めされていたダンがそのホブゴブリンを倒し終わったらしく、援軍に現れたホブゴブリンに目掛けて、技を放った。


黒の流星群(ブラックメテオ)!」


 ホブゴブリンをゴブリンの群れごと貫く黒い槍が、流星群のように降り注いで全てのゴブリンを貫く。


「ゴアァァアァァ!!」


ゴブリンの残党は次々と倒れて、ゴブリンの群れで、動いているものはいなくなった。


ふう、これで、なんとか全滅させた。


俺と、ロア以外の全員が息を荒げている。


「なんとか、終わったな。」


ダンが、周りを警戒しながら息絶え絶えに言う。


「多すぎよ。一旦休憩にしましょう。」


 エルザが膝から崩れ落ちそうになりながら杖を使って、なんとか立っている。


「一番疲れてない俺が警戒する。「黒き刃」のメンバーは休んでてくれ。」


 俺が、気を使って黒き刃に言うと、黒き刃のメンバーは全員地べたに座り込んだ。


「面目ねぇ…。」


ダンが、地面に槍を置きながら言う。


「私も手伝います。」


 さっきまで戦闘だったのに対して、そこまでくたびれた様子もないロアが、ゴブリンの魔石を取り出していた。


おお…意外と手慣れているな。


「意外と、こういうのは平気なのか?」


「ッ!? …………、何度か経験はあります。」


なんだか含みのある言い方だな?


それは、そうなのか?


 爺さんが言うには、俺とロアは既知の仲らしい。彼女は俺との記憶を持っているが、俺は彼女との記憶を全くと言っていいほど持っていない。


 ロアにとって辛い出来事であるのは、ある意味当然なのかもしれない。

 かと言って、記憶がない俺には何も出来ない。気まずいのは当たり前だ。時間が解決するまで待つしかないだろう。


「おい、お前ら。小さな女の子に汚い仕事を任せて、自分らはお座りか?さっさと片付けるぞ。」


「リーダー、ちょっと待ってくださいよぉ。」


「そうだぞ。リーダー横暴だぁ〜!!」


「ポーションもまだ飲んでないのに。」


パーティーメンバーの抗議の声を遮るように、ダンがズバリと言った。


「いや、待たん。今日一つも魔石を取り出さなかった奴は、飯半分にするからな?」


「「「喜んでやらせていただきます!!」」」


流石、リーダーだ。こういう所はしっかりしている。


「俺とオーガ野郎が死体焼いとくから、お前らはタガーでもなんでもいいから魔石をくり抜いとけよぉ〜。」


「あ~い。」「分かったよ。」


「そういえば、洞窟の中なのに、焚き火燃やしても大丈夫なのか?」


俺の疑問に、ダンは「何だ、そんなことも知らねえのか?」と、でも言う顔をして、ゴブリンの死体を3つまとめて肩に乗せながら答える。


「ここらへんは、地上まで繋がってる出口が多いんだよ。だから通気性もいいし、それで死ぬことはねえ。」


へぇ。この地図を作った奴はかなりここらを調べていたようだ。


「リーダー。地図のメモ書きに書いてあったこと。自分の知識みたいに言っちゃダメよ?」


積み上がったゴブリンの死体を死んだ目で火を付けて燃やし始めているエルザの声が遠くから聞こえた。


「おい!?、そこは俺の知識だったことにしとけ。格好がつかないだろうが!!」


「リーダーは嘘つき。汗っかき。イェ~。」


シルフィがラップで煽る。


「やかましい!!」


皆が笑い出す。俺も笑いながらロアを見ると、ロアがクスッと笑っていた。


何だ。意外と笑えるじゃねぇか…。


――――― ―――――


 数刻後、休みを終えた俺達は、休憩スポットを後にして、残り後半の道のりを進んでいった。


先程の戦闘したにも関わらず、皆元気そうだ。


「よし、このままいけば、次の日の昼までには、着きそうだな…エルザ?近くに魔物はいるか?」


「今のところ、見つからないわ。罠も見つからない。」


エルザが目をつぶりながら言う。


なんというか、見ていて転びそう何だが?

 実際には、空間探知で見えてることは知っているがただでさえ、歩きにくい地面なのに目をつぶって歩いているエルザの姿は見ていてヒヤヒヤするな。


そうして、見ていると、エルザがこちらに視線を向けた。


俺は、ギョッとして見て見ぬふりをする。


 怖ぇ〜よ急にこっちを見られたら。心臓が今のでバクバクしたわ!?


エルザのいる方向からクスクスいう音が聞こえてくる。


アチャ〜。こりゃあ、遊ばれてるな…。


「エルザ。ダンという男がいるのに他の男に手を出すのは駄目。」


「き、急になに言い出すの!?この子猫もどきは?」


「シルフィ!?お、俺達はそんな関係じゃねぇからな?」


おお……ものの見事に顔が赤いなっている。


「そ、そうよ!?絶対ないわ。」


「「ひゅーひゅー」」


「「お熱いことでぇ!!」」


先頭にいるロイドとシルフィが茶化し出した。


「ッ!?クッ………。」


ダンとエルサが何か言い返そうとしても、どもりまくってしまい、何も言い返せていない。


まるで緊張感がまったくないパーティーだな…。

ほ、本当に大丈夫なのかこのパーティーは?


そんな団らんな雰囲気の中、顔を赤くしていたエルザが何かを検知したのか、顔を強張らせる。


「何か来る!?それも、もの凄い速さよ!!」


エルザの警告と、共に俺達は戦闘用のポジションに切り替えた。


 そんなことをしていても、探知魔法を継続させていたとは、凄い集中力だ。


 思わず感心してしまっていた俺は、無理やり脳を切り替えて剣を構える。


風の音?いったいなんだろうか?


その風の音は段々と近づいてくると、俺達の前で止まった。


そして、数人の影と共に数本の矢が物凄い軌道を描いて飛んできた。


「我らを守り給え。[聖なる障壁(ホーリーバリア)]」


シルフィが反射するように魔法を放つ。


どうやら、その矢には風属性の魔法が付属していたようだ。


風属性の矢?


「エルフか…。」


「嘘!?なんでエルフが?エルフは温厚だって、聞いたわよ?」


そんな高レベルの技術はエルフ意外いない。


複数の影が超スピードで俺の首目掛けて一直線に、突っ込んでくる。


たいまつの光の反射で、一瞬の隙だか、複数の影は長剣を握りしめていたのが分かった。


どうやら、マスターの言っていた俺に()()()()()()()のようだ。


俺はバスターソードで跳ね抜けて流す。


複数の影は、俺達の前で立ち止まり、喋りだした。


「久しいな。鬼人よ。その憎々しい顔を拝めるとは思えなかったぞ?」


たいまつの光に照らされて、見えたのは褐色のエルフだった。



次回は、来週の土曜日です。お楽しみに〜!!

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