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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
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⑩「黒き刃」


 俺は、ロアに連れられて、冒険者ギルドの入り口に入っていった。

 

 入り口から前に進み、ギルド中央の広場を歩いていると、いくつもの冒険者達の俺達に対する目線があることに気がついた。


「おいっ!!あいつがAランクの?」

「そうらしいぞ。意外と人間の見た目なんだな。」


「俺、てっきり竜人だと思ってた。」

「私は半神かと…。」


「バカッ!?下手にあいつと目を合わせるな。噂じゃあ、あいつオーガの血が混じってるってぇ話だぜ?」


どうやら良からぬ噂を建てている奴がいるらしい。


俺は列記とした人間だ。

だんだんと腹が立ってきたぞ?


(オレ、ソノウワサヲ、ナガシタヤツ。シメテヤル。)


まあ、冗談はここまでにして、冒険者達に絡まれない内にさっさと俺はロアに連れられて2回のロッジに続く階段を登っていくことにする。


「こちらです。」


 ロアがあるテーブルを手のひらで示すと、そこには男女2名ずつの計四人の全体的に黒の装飾を模した冒険者パーティーがいた。


う〜ん?どこかで見たような気がするな…。


俺は、その机に近づいていった。


 そうして、だんだんと近づいていく。

 ある程度の距離まで近づくと、その男は近づく俺の気配に気が付いたのか、黒い槍を背中から取り出しながら振り返る。


 そして勢いよく座っていた椅子を引いて立ち上がった。


そして、目を大きく見開いた男は俺を指さす。


「やっ!?てめぇは!!」


 目の前には、俺が一人で冒険者ギルドに入ってきたとき、喧嘩を売ってきた黒い槍と黒い鎧を着た冒険者だった。


 そのテーブルの他の席には、そのパーティーメンバーもいた。


「お、お前はっ!?………、誰だぁ?」


(((ズコー!)))


「いや、忘れてたのかよ!1本取られたよ!!」


 パーティーメンバーの中の眼鏡をかけた剣士が突っ込む。その傍らで、魔術師の女のメンバーが呆れ顔で頷いた。


「しょうがないわ。私達、四十話ぶりの登場だもの。

きっと、読者の殆ども覚えてない。後であの作者を私達の出番を増やすようにとっちめなくちゃ…」


「ああ〜!?待て待て。ストップ。メタすぎる話は辞めろ!!そういう話じゃないだろ?

ようは、この問題は、俺たちがこの目の前の男に忘れられてるということだ!!」


ダンがパーティーメンバーに振り向いて俺を指してくる。


「確かにそうね。」

「同意見だ。」「あいつ処すの?」


そう言って、ダン以外のパーティーメンバーがそれぞれの武器を構え始めた。


いや、待て!?喧嘩はロッジでするな!!


訓練場でやろうぜ?


「えぇ~と、話を始めてよろしいでしょうか?」


ロアが困り顔で、口を挟んだ。


皆がロアの方を向いた。


「あ、ああ…そうだな。」


「そ、そうね。取り敢えず座りましょう。」


ロア、ナイス!!


危うく、ツッコミ不在の地獄が始まるところだった。




俺は、黒き刃のパーティーに睨まれながら先に座ったロアの隣に腰掛けた。


「でっ?その依頼の内容を聞こうか?ちなみに、ギルドを通さずに依頼する理由も。」


ダンが、ジョッキの先を口に含みながらロアに訪ねた。


「貴方達には、これからオーランド山脈内のある村まで護衛してもらいます。」


ロアは、静かに丁寧に答える。


「ほう…俺たちにギルド規定を破れってことだな?

 それも秘密裏に。知ってるよな?嬢ちゃん。つい最近ここらをBランクの魔物がうじゃうじゃうろついてるんだぜ?今冒険者ギルドは冒険者に対して、エディソン在住を命令している。

 もし、バレずにやったとしても、自殺行為だな。最近Cランクに昇格した俺達『黒き刃』にとって、Bランクの魔物はちと危険が過ぎる。」


「そのために、この方がいらっしゃいます。もし、貴方達がこの依頼を受けなくても、彼と私だけで行きます。あくまで貴方達は間に合わせです。」


そう言って、ロアは俺を手のひらで示した。


「そりゃあ、良いけどよ…」


ダンは、少し焦っているようだ。


 今回の依頼を受けられるようなランクの冒険者は、この街に中々いない。

 だから、依頼料をふっかけて巻き上げようとでも思ったのだろう。

 冒険者ギルドを通さないならば可能だ。

そのままいけば、優位な位置を維持できただろうが、俺の登場で、完全に黒き刃の優位性がなくなってしまった。


完全にロアが優位になっていた。


あの爺さん。コレを見越して俺を雇ったな?


「心配いりません。依頼料は前金と依頼達成後で半分ずつ払わせてもらいます。こちらは前金です。」


そう言って、ロアは少し小さな袋を小さなバックから持ち出した。


ダンは、静かにその袋を受け取って、中身を覗いた。


「少ないな。」


「いいえ。今回あなた達の護衛はあくまで間に合せでしかありません。その金額なら妥当どころか、多すぎるくらいです。」


ダンがロアに圧力をかけるように眉を潜めてアンを睨みつけた。


「おいおい。俺たちは『黒き刃』だぜ?お前の所のドワーフ爺さんには色々やられたけどな、コレでもこのエディソンでトップクラスの冒険者パーティーだ。

 なめてもらっちゃあ困る。この金額じゃあ全然足りねぇくらいだ。まだ、正規のCランクの依頼書のほうがいくらか高いぜ?」


「そうですか?こちらは別に依頼を取り下げてもいいんですよ?」


対して、ロアはクールな姿勢を解く様子もない。


両者は、お互いに交渉という戦いを繰り広げている。


互いに睨み合いが続いていた。


こりゃあ、置物になっていた俺が出なきゃいけないパターンか?


俺が口を出そうとしたその時、半分呆れで魔術師の女のパーティーメンバーが口を開いた。


「私達を裕福にしようとしてくれるのはありがたいけど、実際この依頼料、前金だけで普通のCランク依頼の4,5倍はあるわよ?このデザート良いわね。コレくだーさい。」


「ちょっ!?おいっ!!お前ら!?」


「そうですよ。リーダー。いつも僕達のことを気にかけてくれるのはありがたいですけど、コレでも僕達は満足しているんですよ?」


眼鏡をかけた剣士が肉を頬張らせながら言った。


「そうでもな。お前らを食わせるためだろうが…」


「リーダーは心配性。私達は公開ショウ。ィェーィ。あと、コレください。」


そう言って、僧侶らしき猫耳の女の子がメニューのおかわりを店員に頼んでいた。


「ちっ、この馬鹿どもが…。」


ダンは項垂れてて頭を軽くかいた。

目は真剣さを保とうと目は細めていたが、口は僅かに笑っていた。


「コレは、交渉成立ですね。」


ロアは、少しだけ表情を崩して手を差し出した。


対して、ダンは苦笑いで手を握り返した。


「ああ…そのようだな。よろしく頼む。」


「良い所済まないが、俺の他に2人追加でこの依頼に参加するかもしれねえがいいか?」


ロアとダンが俺を見る。


リリアとサンソンも受けるかもしれねぇ。

一応こちらも交渉の座に立っているしな。コレくらい言わせてもらってもいいだろう。


「俺は構わねぇがそっちは?依頼者さん?」


「ロアです。隣にいる彼はアンセム。追加で出す準備もあるので大丈夫です。」


「俺はダンだ。紹介が遅れたが、黒き刃のメンバーを紹介するぜ。まず、魔術師のエルザ氷属性の魔法が得意だ。眼鏡をかけた剣士がロイド斥候と前衛を兼ねている。地味に器用だ。そして、猫の獣人で僧侶の少女がシルフィだ。属性モリモリの獣人ははこのパーティーのボケ役だ。」


「よろしくね。」

「よろしく。」

「ブイ。」


「さて、話は纏まったし、宴としようじゃねえか!」


「勿論リーダーが奢りで。」

「流石リーダー、太っ腹ぁ〜!!」

「私、コレ頼みたい!!」


「仕方ねえな。この際二人も奢ってやらぁ。持ってけ泥棒!!ジャンジャン頼め!!」


「やったぁ〜!」「ヒュ〜ヒュ〜!」


騒がしい奴らだ。ロアなんて、自分に起きた出来事の理解が追いつかず、唖然としてしまっている。


なんだか、昔を思い出すな。


よく、宴を開いて騒いだものだ。


まだ、記憶の穴が多い。まだまだ沢山のことを思い出せてないが、こういう奴らを見るとアイツラを思い出す。


 オリビアとギークと一緒にジョッキをぶつけ合って、肩を合わせて踊り、それを咎めるようにソフィアが説教を言う。


 そして、いつもの姫様の問題児っぷりを嘆いて泣き上戸になっているアークと、それに付き合ってあげているグルセナ。


 踊っている俺達を面白がって笑っているドゥークとドーラ。そして、二人の子守が一般化となったプルセナ。


なんだか、とても楽しそうな風景だった。


「どうしましたか?アンセムさん。なんだか寂しそうですよ。」


ロアが、チビチビとジョッキを傾けながら横目で聞いてきた。


「俺、そんな悲しそうな顔をしてたか?」


ロアは静かに頷いた。


「なんだか、幸せそうで哀しそうな表情でした。」


「そうか…」


「楽しみましょう?」


 昔の俺を知っているからか、ロアは何かを察して俺を元気づけてくれる。

 ほっぺたにケチャップをベッタリ付けていなければ、素直に受け取れるんだがな…。


「ああ、楽しもう。」


―――――                ―――――



「ええっ!!この時期に護衛依頼を受けた!?」


リリアが驚愕の表情で大きな声を上げた。


「それって…非正規依頼だよね?」


サンソンが、パンケーキをフォークで突き刺しながら聞いてくる。


「ああ、そうだ。だが、依頼主は信頼の置ける奴だ。受ける気はないか?」


今、俺達はヒューズとヒューズ父親が営んでいる飲食店でパーティー会議を開いていた。


俺の提案にリリアは、迷っている様子だ。対して、サンソンは少し顔を顰めていた。


少しして、サンソンが口を開いた。


「残念だけど、僕は反対だ。」


「何故だ?」


リリアはサンソンの言葉に驚いて目を丸くしている。


「霧の森での戦いと騎士団の合同訓練で、僕達はまだまだ実力不足だった。そして、圧倒的に経験が足りない。Bランクの魔物がうろつく危険地帯に僕達がホイホイついて行っても、足手まといにしかならない。残念だけど、死ぬ危険が、かなりある。」


リリアは憤慨するかのように、テーブルをバンッと、叩いて立ち上がる。


「兄さん? 私達コレまで何度も危険な目にあってきたじゃない?今更、そんなこと言ってどうするのよ?」


 近くを通っていたヒューズが驚いて、危うく持っていたお盆を落としそうになる。


 騎士団との合同訓練の後、拘束を解かれた俺達はヒューズと合流した。その時、ヒューズとリリアがお互いの顔に指差して、「あっ!?あの時の!?」と再会の喜びのような声を出していた。

 抱きしめ合う二人に話を聞くと、ヒューズとリリアは不思議なことに知り合いだったようだ。ヒューズはリリアに対して恩義があるようだった。

 なんだか、柄の悪い冒険者に絡まれていた所を助けて貰ったらしい。意外と世間は狭いのかもしれない。


「これまでは、僕達だけで対処できていたけど、霧の森の戦い以降、僕達は連敗続きだ。分かるだろう?僕達には、修行が足りない。」


「でも…」


リリアは何も言い返せなかった。静かに腰を下ろすのみだった。


「取り敢えず、今回の依頼は断るよ。まだまだ僕たちには高ランクの依頼は速すぎる。」


「良いのか?冬をまたいでの依頼だ。長期間共に行動できなるかもしれないが?」


「はっきり言うが、僕たちとアンセムの実力は釣り合っていない。僕達とアンセムには大きな実力差があるんだ。だから、一旦距離をとってその間にアンセムとの実力差を埋められるようにしたい。」


「リリアも、賛成か?」


「凄く不満だけど、兄さんの言っていることは、正しい。賛成よ。」


「ごめんよ。」


サンソンの険しい顔が急に申し訳なさそうな顔になっていた。


「分かってるさ。」


「少しでも、早く追いつくからさ。少しだけ待っててくれよ。」


ああ…なんだか、寂しくなるな。

この二人とは、たった1週間とそこらの関係なのにな。


空気を読んてくれたのかリリアが元気な声で立ち上がり、指を差しながら宣言をし始めた。


「タラタラしてると、すぐ追い越してやるから!待ってなさいよ!!」


 まるで"誰かさん"と似たような捨て台詞を吐いていることに気がついて懐かしさについ、笑顔になってしまっていた。


「ああ、楽しみにしてるよ。」


「再会を願って!」


サンソンがティーカップを上に持ち上げた。

俺もリリアもティーカップを持ち上げた。


「「再会を願って!!」」


 少し、脅されているので、黒き刃の皆さんには沢山出てもらいます。


ヒエッ!?


ちょっと、急に筆を凍らせないでください、エルザさん。どこかお腹が痛いんですか?

 分かりました。かっこよく描きますからその耳元に氷のブレスを吹きかけるのは辞めてください!!

アヒャヒャヒャ!!

 次回は来週の土曜日0:00です。お楽しみに!!

ヒャハハハ!

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